第772話 今度は海水浴
☆亜美視点☆
翌朝です。 今日のお昼には有馬を発つという事で、午前中は自由な時間となっています。 実は深夜にも温泉に浸かっていた私だけど、朝風呂もちゃっかり堪能しました。
現在は奈々ちゃん、希望ちゃん、そして私に抱かれたマロンを連れて有馬の街を散歩中。 私達は初日にゆっくり見たけど、マロンは普段見ない景色に少し興奮気味です。 どちらかと言うと匂いに反応しているのかもしれないけど。
「キョロキョロしてるわね」
「いつも見てる景色と全然違うからね」
「みゃ」
「何かに反応してるよぅ?」
周りを見るとなるほど。 この辺は饅頭屋さんの近くだ。 美味しそうな匂いに反応したらしい。
「ダメだよマロン。 あれは猫には食べられないよ」
「みゃう……」
残念ながらペット用の饅頭は無いのである。 可哀想だけど我慢してもらおう。
「にしても賢いわね。 猫版亜美みたい」
「何それ……」
頭が良くて何でも出来るからという事らしいけど、マロンはマロンである。
一通り散歩を終えて帰って来るとマロンには朝ご飯とお水をあげる。
「マロンは可愛いわねー。 ハムスターも襲わないし」
現在部屋の中をボールに入って縦横無尽に駆け回るハムスター達には目もくれずに食事をするマロンに、紗希ちゃんが近付く。
「これから帰るけど、帰りは空から帰るー?」
「みゃ?!」
紗希ちゃんの意地悪を理解しているのか、体をビクッとさせて固まるマロンと、それを見て爆笑する皆。
もちろん帰りも一緒に新幹線だ。
◆◇◆◇◆◇
お昼ご飯を有馬でいただき、お昼過ぎには新幹線に乗り込む。 来る時同様に大きな荷物は空輸で奈央ちゃんの家まで送ってもらい、軽い荷物だけ。
ここから東京まで2時間である。 この間に、奈央ちゃんから次の旅行である海水浴の説明が行われる。
「こほん!」
と、奈央ちゃんがわざとらしく咳払いして私達の視線を自分に向けさせる。
「えー、有馬温泉旅行は楽しんでもらえたかしら?」
「楽しかったよー!」
「文句のつけようも無いわよー」
もちろん私も楽しかった。 今回の旅行も大成功というわけである。
「ふふ、楽しんでもらえて良かったわ。 さて、有馬温泉旅行が終わってまだ帰途ですが、来る8月23日に予定している海水浴の説明をさせてもらいますわよ!」
「やったー」
「海には少し遅いかもしれませんけどね」
まだまだ暑いし大丈夫だろう。 楽しみである。
「今回は我が西條家の海辺の別荘へとご招待させていただきます」
「西條先輩、別荘いくつ持ってはるんですか?」
「把握してないですわね」
と、あっさりとそう答える奈央ちゃん。 恐れ入るよまったく。
「ただ、他の人達もいる可能性もありますし、ビーチはプライベートではないのあしからず」
「十分だろ」
「だなあ」
「別荘はペットも大丈夫だからマロンやハムちゃんもご自由に」
「マロン良かったね。 海が見られるよ?」
「うみゃ?」
「うみゃじゃなくて海だよ」
といってもマロンにはわからないだろうね。 早く見せてあげたいねぇ。
「夜には近くで夏祭りもあるみたいだからそっちもお楽しみにってね」
「良いですね」
「早くも23日が楽しみやね」
ワクワクドキドキである。
◆◇◆◇◆◇
新幹線を降り、東京から我が街へと帰ってきた私達は、奈央ちゃんの家に届いた荷物を引き上げて各自解散となりました。
つい数時間前まで硫黄の匂いが漂う温泉街にいたのがまるで嘘のように普通の街だねぇ。
「この辺のどっかに温泉湧き出ないかしらね?」
と、奈々ちゃんが突飛な事を言い出した。 絶対に無いとは言い切れないけど、まあまず間違いなく無いだろうね。
「何をバカな事言ってんだお前は」
「はあ? 宏太にバカって言われるのは何か腹立つわね」
「なははは!」
「まあまあ、落ち着こぅよぅ」
「相変わらず賑やかな奴らだなぁ……」
そんな賑やかな3人ともいつもの十字路で解散。 残るのは私、夕ちゃん、希望ちゃんの3人とペット達だけである。
「寂しいねぇ、皆いなくなると」
「うん」
「そうだな」
早く23日にならないかなぁと思う私であった。
◆◇◆◇◆◇
翌日21日の夜。
「夕ちゃん! 海水浴の準備出来た!?」
「まだだが?」
「早くしないと後で慌てることになるよ?」
「わかったわかった」
まったく夕ちゃんはのんびり屋さんだねぇ。
「着替えだよー♪ 常備薬だよー♪」
「亜美ちゃん、相変わらず旅行前は浮かれるね」
「当たり前だよ! 皆と旅行だよ? 楽しみ過ぎて浮かれちゃうよ! 日焼け止めだよー♪」
着々と準備を済ませていくのであった。
「水着は奈央ちゃんがー準備してくれてるんだよー♪」
「さっきから何だよその変な歌は……」
「『旅行の準備だよ~海水浴バージョン~』だよ。 即興だよ」
「亜美ちゃんの即興の歌っていつも同じリズムだよね? 実は才能無いんじゃ?」
「うっ?!」
希望ちゃんに痛い所を突かれてしまい、たじろいでしまうのであった。
◆◇◆◇◆◇
一通り準備を終えた私は、リビングでテレビを視ています。 天気予報で23日、24日の天気をチェックである。 なんと、両日ともにこれまた快晴。 日頃の行いが良すぎるんだね。
「んん?」
ニュースが終わると画面が切り替わり、野球が始まったよ。 そうか、まだ夏の甲子園やってるんだねぇ。
「私も小説書き進めないとね」
女子野球を題材にした作品を書いている私は、そのまま引き続き甲子園を観戦するのだった。
野球のルールは小説を書き始める際に一通り頭に叩きんだよ。
「何見てるの亜美ちゃん?」
自室からリビングへとやって来た希望ちゃんが、首を傾げながらソファーに座る。
「甲子園だよ甲子園。 今9回裏ワンナウト一三塁。 バッター4番だよ。 ホームランが出たら逆転サヨナラだよ」
「……あ、暗号みたいだね」
「熱い場面だよ」
カキーン!
「おお?」
4番が打った打球は高く上がり、浜風に流されてレフトスタンドへ飛び込んだ。 逆転サヨナラホームランである。
「おー! ドラマみたいだよ!」
「よ、よくわからないけど凄いね」
希望ちゃんは野球を知らないのでイマイチ何が凄いのかはわかっていなさそうだけど、一応凄いと言って話を合わせてくれるのであった。
◆◇◆◇◆◇
そしてやって来たよ23日! 海水浴旅行だよ!
「夕ちゃん朝だよー!」
「だから起きてるって」
「私まだ眠いよぅ…」
「バスの中で寝れば大丈夫だよ! さあ、朝ご飯食べるよ!」
「まだ胃が寝てるよぅ」
「食べたら起きるよ!」
数日前にも似たようなやりとりをした覚えがあるね。
まだ眠たそうな2人に朝食を無理矢理食べさせてお皿を洗って準備万端。 マロンもバッグに入れて出かける準備をする。
「さあ、奈央ちゃんの家へ行くよ!」
「ふぁーい」
「おう……」
2人ともダメダメである。 まあバスの中で寝るだろうからお昼にはシャキッとしてるでしょ。
半分寝ぼけている2人を連れて奈央ちゃんの家へ向かう私であった。
水着楽しみだねぇ。
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