第753話 進捗

 ☆紗希視点☆


 代表合宿を終えた私は、夏休暇を実家で過ごす為に千葉へと戻ってきたわ。

 亜美ちゃんと希望ちゃんは東京のご両親の家へ行くという事で東京で別れた。

 というわけで、私は奈々美と一緒に今井君のお世話をする為に今井家へと向かう。 時間も時間だし今日は奈々美と2人で今井家に泊まろうかと話ていると、今井家に到着した。

 

 奈々美がインターホンを鳴らすと、今井君がドアを開けて中から顔を出す。


「こんばんは」

「紗希ちゃんが来てあげたわよん」

「なんか不安になるコンビだな」


 と、少し失礼な事を言う今井君。 一体何が不安だというのかしらね? 私、そんなに今井君に警戒されるような事あるかしら? 何だかんだ友人として上手く付き合えてると思うんだけどなぁ?


「今井君、とりあえず再会のチューしましょー!」

「うわ、来た!」

「そういうとこが不安だって言われてんのよ……」

「ん? そっか!」


 納得するものの、やっぱり失礼じゃないかと思う。 私ぐらい超絶可愛くて巨乳な女に甘えられたら、男は嬉しいもんじゃないの?

 まあ今日は亜美ちゃんとの約束もあるからこの辺でやめておきましょうか。


 というわけで今井家に上げてもらう。 各部屋を見て回るとそれなりに片付いているみたい。 亜美ちゃんが家の事は北上君にお願いしてあるって言ってたし、しっかりと役目を果たしていたみたいね。

 出来る男ね北上君。 裕樹もある程度は出来るみたいだけど、たまに私が見に行ってやらないとめちゃくちゃになっていることもある。 一人暮らしの間に出来るようになってほしいわね。


「夕也、どうせご飯まだでしょ?」

「おう。 2人が来てくれるって聞いたから待ってたんだよ」

「じゃ、今からサクッと作っちゃいましょ」

「りょ!」


 今井家へ来る前にスーパーに寄り買い出しは済ませてある。 今日は冷しゃぶよ。


「しゃぶしゃぶ用のお肉をさっと湯通しして、サラダ作ったら完成だからちょっと待っててねん」

「おう」


 あぁん! 今井君の奥さんになったみたいでなんかゾクゾクするわ。


「はぁ……あんた彼氏君の事本当に好きなわけ?」

「もちろんよ。 好きじゃなきゃ別れるわよ」

「夕也の事は?」

「んー、好きだけど? でもお付き合いとかしたいわけじゃなくて、なんて言うかな? 火遊びしたい相手みたいな? あんたもそうでしょ?」

「わ、私は別に」

「またまた。 前科ある癖に」

「ぐっ……」

「きゃははは! ささ、早くしましょ! 今井君待ってるわよん」

「そうね」


 

 ◆◇◆◇◆◇



 3人で夕食を囲みながら軽く雑談。


「なんて言うか、いつもと違う人とこうやって飯食うのは新鮮だな」

「まあ、いつもはここに亜美と希望が座ってるんだろうしね」

「きゃはは。 はぅっ、美味しいよぅ」

「似てる似てる」


 普段、今井家での食卓ではどんな会話が交わされてるのかしらね? 私や麻美がいれば勝手に賑やかになるんだけど、今井君に亜美ちゃんと希望ちゃんだけだと結構静かになるんじゃないかしら?


「ところで紗希? 例の進捗の方はどうなってるのよ?」


 隣に座る奈々美が何やら問いかけてきた。 やっぱりあのデザイン案には奈々美も一枚噛んでいたのね。

 まあ今井君1人で考えたにしては早かったし、そうだろうなとは思ったわ。


「まあ、その話は後々ね。 とりあえず今は夕食終えてお風呂済ませてからって事で」

「まあそれもそうね」


 例の進捗……そう、今井君に依頼された指輪のデザインの話。 亜美ちゃんが東京に行っている今、その話をするには絶好の機会。 お風呂から上がった後にゆっくり今井君、奈々美と話を詰めていくわよ。



 ◆◇◆◇◆◇



 ちゃぽーん……


「ふー。 にしても今井君って性欲枯れてるのかしらね?」

「急に何を言い出すのかと思ったら……」


 あまり広いお風呂ではないけど奈々美と2人で入浴。


「だって私と奈々美が近くにいるのに襲ってこないのよ? おかしいわよ?」

「別に良いでしょ……普段から亜美、希望が一緒にいるし耐性出来ちゃってるんじゃないの?」

「それはそうだけど、でも仲間内でもセクシー度No.1とNo.2よ?」

「それはどうか知らないけど……」

「私、まだまだ女としての魅力が足りないのかしら……」


 うーむ。 もっと女を磨かなければ!


「はぁ……。 あんたは変わらないわね」

「そうかしら?」


 奈々美は「えぇ」と疲れたように頷き先に湯船から出てしまうのだった。


「ふーむ。 奈々美は今井君に襲われたい願望はないわけ?」

「無いわよー。 馬鹿言ってないでさっさっと上がるわよ」

「へーい」


 今井君も待ってるしその方が良いか。


 私達が上がった後は今井君が入浴。 上がって来るのを待ち今井君の部屋に集合。 ようやく指輪の話が進む。


「で! 今井君から依頼された指輪のデザインだけど、デザイン案を元にいくつかデザイン画を作って見たわ」


 というわけで記憶媒体にコピーして持ってきたデザインデータを開いて見せていく。


「おお!」

「へぇ」


 私のデザインした色々な指輪の絵を見て感嘆の声をあげる2人。


「どうよー?」

「いや、すげーよ! さすがだな紗希ちゃん!」

「きゃはは。 褒美は今井君とのえっちで良いわよん!」

「いや、それは勘弁してくれんか?」

「むー仕方なし」

「はぁ……もう亜美との約束どうでもよくなってるわね……にしても中々本格的ね。 結構な数あるみたいだし順番に見ていきましょう」

「だな」


 順番にファイルを開いていく。 日付の古い物は最初の方にデザインした物である。 その辺の物はあまり納得のいく物ではない。

 日付が最近の物になるにつれて方向性が決まっていき、少しずつ自分の納得がいくデザインに仕上がりつつある。


「色々あるな」

「この辺が私のオススメよ。 素麺からヒントを得たのよ」

「そ、素麺?」

「あー、たまに色の違う麺が入ってたりするわよね?」

「そうそう」


 それから得たヒントを元にデザインをした物が私のオススメ。


「これは奈々美があんを出したクロスリングを元に、素麺ヒントを混ぜ込んだ中々に力作のデザインよ」


 シルバーのリングをクロスさせたものだが、中央にもう1本リングが通してある。 その1本は左右でクロスしているリングとは違う色のシルバー。 ピンクシルバーというもので出来た物だ。


「なるほど、素麺がヒントね。 いいんじゃないのこれ?」


 奈々美には好評なようだ。 亜美ちゃんには少し地味さが足りない気もするけど、少しくらいは目立つデザインでも良いと思う。


「今井君的にはどう?」

「凄いな! 文句無しだ。 やっぱり紗希ちゃんや奈々美に相談して良かったよ。 感謝感謝だ」

「私は何もしてないわよ。 ちょっと一緒に考えただけ」


 と、奈々美が謙遜するが、奈々美が話に噛んでなきゃまだこの話は全然進んでいなかっただろう。


「これでいきたい。 奈央ちゃんにこのデザインで話を進めてもらえるように頼もう」

「りょ! じゃあ明日早速奈央に話を持っていきましょ!」

「ああ、ありがとう! この礼は必ず!」

「きゃはは! 何が欲しいか考えとく」


 結構順調に話が進む今井君のプロポーズ用の指輪作り。 完成が楽しみね。

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