第709話 絶好調の奈々美
☆亜美視点☆
ついに始まった白山大学と七星大学の試合。出だしは互角であったが、奈々ちゃんのサーブが回ってきたところでサービスエースを2本取られてしまいました。
奈々ちゃんのサーブは強烈だからこういう事はあると思っていたけど、それにしても厳しい。
特に2本目はアウトコースだと思ったのにギリギリライン上。 このラッキーサーブは流れを持っていかれかねないものである。
「ここ集中して切りましょう」
「はいっ!」
奈々ちゃんのサーブを止めるのは私でも中々難しい。 でもなんとかしないと。
パァンッ!
「オーライ!」
奈々ちゃんのサーブが飛んできた。 私はボールに向かってダイブする。
こうでもして無理矢理に拾わないといつまでも奈々ちゃんのサーブが終わらないという最悪のケースもあり得る。
パァンッ!
何とかボールは上がったけど、ダイブした私は攻撃に参加できそうにない。
先輩にお任せしよう。
「先輩っ!」
奈央ちゃんが上げたトスを先輩がスパイク。 何とか決めてくれました。
何とか軽傷で済んだといったところであるが、スコアを5ー4にされてしまい追いかける展開となってしまったよ。
ここから反撃、といきたいけど中々上手くはいかないものであっさりと取り返されてしまいました。
「むぅ、奈々ちゃんのスパイクが止まらないねぇ」
「かと言って、ブロック3枚常時つくわけにもいきませんわよ」
それもそうなのである。 ブロックに3人いれば奈々ちゃんのスパイクコースを遮る事が出来るので拾える確率は多少上がる。
だけど、その分他の選手のクイックなんかが素通しになってしまうので、かなりリスクもある。
「奈々美ちゃん1人いるだけでめちゃくちゃ強い……」
「わかりきっていた事ですわよ。 あれを止められない限りいつまで経っても差が縮まりませんわ」
と言われても、あれを止めるのは至難の業。
奈々ちゃんがやったようにサーブで奈々ちゃんを崩して打たせないようにしなきゃならないかな?
奈々ちゃんはレシーブはそんなに得意じゃない選手だけど、それでも並のレベルではある。
果たして簡単にサーブで崩せるかどうか。
その後も追いかける展開で8ー6となりテクニカルタイムアウトへ。
「いやいや、何あのスパイク! ブロックした手がまだジンジンするんだけど?」
ブロックに跳んでいた先輩が大声で言う。
あのレベルのパワースパイクを受けた経験なんてないだろうからねぇ。
「とはいえあれを止めないとどうしようもない。 何とか止めてください」
コーチもアドバイスといったアドバイスは出来ないらしい。 私が何とかしないとね。
「とにかく食らい付いてチャンスを待つわよ!」
「おー!」
「清水さん頼りになっちゃうけど、お願いね」
「はい!」
さてサーブは七星からだよ。
パァンッ!
「任せて!」
ここはセッターの奈央ちゃんに拾わされてしまう。
この場合、トスを上げるのはキャプテンになる。
高校時代は私の役目だったけど、この大学だと攻撃力が一番あるのは私になっちゃうからねぇ。
「清水さんお願い!」
「らじゃです!」
トスに合わせて高く跳び、ブロックの上の高さからボールをスパイク。 コートの隅っこラインギリギリを突く。
ピッ!
「おっけ!」
「またえげつないコースに入れてくるんだから」
「私の持ち味だよ」
「そうだったわね」
8ー7まだまだチャンスはある。
サーブはアウトサイドヒッターの先輩……だったけどここで痛恨のサーブミス。
9ー7と点差が開いてしまい、ピンチになってしまう。
「ごめん! 力んだ!」
「どんまいどんまい! まだ序盤!」
とはいえ厳しくなった。 ここまでサービスエース2回とこっちのサーブミスでの1回。
サービスエースの方は仕方ないにしても、ミスはあまりしたくないね。
何も出来ないままサーブは七星大学へ移る。
パァンッ!
このサーブは先輩がしっかりレシーブ。 奈央ちゃんのトスから私のスパイクと決めて9ー8。
お互いまったく止められないこの展開は、先程のようなミスが致命的になることもある。
向こうのミスを祈るか、何とかして奈々ちゃんを止めるか。
「先輩! 藍沢さん狙いでサーブお願いできますか?」
「レシーブはあまり得意じゃないんだったっけ? やってみる」
先輩は奈々ちゃんの前に落とすようなサーブを打つ。
しかし、置きにいったようなサーブになってしまい、あまり効果は無い。
「ごめん弱かった!」
「大丈夫です!」
仕方ない。 何とかブロックで!
遥ちゃんがやってたように奈々ちゃんの視線を見てコースを読む!
「とぅ!」
クロスだ!
「甘いっ!」
だけど奈々ちゃんは私の読みを外してストレートへ打ってきた。
よそ見スパイクだ。
「読み読みだっての」
「むぅ。 一枚上を行かれたかぁ」
残念ながらここでも止められず。
10ー8となる。 そしてここでまたビッグサーバーの奈々ちゃんの番である。
白山サイドに緊張が走る。
これ以上離されたらこのセットは厳しいという事がわかっているからだ。
「はっ!」
パァンッ!
奈々ちゃんの矢のようなスパイクが白山コートを襲う。 リベロが反応して飛びついた……が、僅かに届かず。
奈々ちゃん本日3本目のサービスエースとなり、ここで白山のコーチがたまらずタイムアウトを取る。
◆◇◆◇◆◇
☆希望視点☆
決勝戦の観戦中です。 あ、遥ちゃんも一緒にいます。
「奈々美の奴、今日はかなり調子良いみたいだなぁ」
「うん。 サーブがバシバシ決まるね」
逆に亜美ちゃんと奈央ちゃんの白山大学はサーブミスなんかもあり少し流れが悪いみたい。
流れを切るために白山ベンチが動き、タイムアウトを取っている。
◆◇◆◇◆◇
☆亜美視点☆
「サーブミスはごめん!」
「いやいや。 サーブミスしない選手なんていないんだから」
「それよりも、藍沢さんの勢い止まらないのが問題だわ」
「奈々ちゃん、今日は絶好調みたいです。 ああいう時は本当に手を付けられないです」
「参りましたわねぇ。 エース3本は痛いですわ」
「とにかくこの流れを早く切らないと取り返しが付かないから、次でしっかり止める事。 以上!」
「はいっ!」
タイムアウトが明けてコートへ戻る。
サーバーはまだ奈々ちゃん。 ノリノリ状態の奈々ちゃんのサーブを拾うのは中々難しい。
特に先輩達。 あのレベルのビッグサーバーは中々お目に掛かれるものじゃないからねぇ。
経験値の差がもろに出ている。
パァンッ!
ラッキー! 私の真正面だ。 これなら何とか上げられるよ。
「オーライ!」
腰を落として慎重に軌道を見極める。
パァンッ!
「ナイス!」
上手くレシーブ出来たよ。 体勢も崩されていないからこのまま攻撃に参加だよ。
すぐさま助走準備に入る。
それを見た相手ブロックは2枚。
「亜美ちゃんゴー!」
「らじゃじゃ!」
ブロックが例え10枚でも私には無意味だよ。
「てややっ!」
パァンッ!
これもライン上に落としていく。
攻撃は決まっている。 サービスエースとサーブミスが無ければ互角なんだけど。
この先、追いつくチャンスはあるだろうか?
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