第676話 合宿終了
☆亜美視点☆
代表が決まった後も2日程練習日が設けられている。
代表落ちした人も最終日までは一緒に合宿するようです。
「はっ!」
パァンッ!
特に初めて連携する人とは念入りに練習している。
「飯村さん、トスもうちょっと高くても大丈夫です」
「了解。 修正していく」
こういう注文は臆せずしっかりとしていくのが大事である。
打ちやすいトスを上げてもらえるようにしないとね。
「にしても、貴女達凄いわよね。 ちょっと前まで高校生だったとは思えない」
「中には現役高校生もおりまっせ」
「そうよね。 黄金世代なんて呼ばれるわけだ」
「あはは……」
そう呼ばれるのは慣れないなぁ。
「世間では清水世代なんて呼ばれてるらしいわよー」
「あぅ」
恥ずかしいなぁ。 弥生ちゃんか宮下さんにお譲りしたいところである。
「なははは! ウェーイ!」
パァンッ!
「また読まれたぁ?!」
「わははは! どうですかー!」
別のコートからは麻美ちゃんの笑い声が聞こえて来る。 何て元気な。
どうやら黛姉さんのスパイクをブロックで止めているようだ。
「あれも相当やばい性能しとるなぁ……」
「麻美も天才の類だぜー?」
と、遥ちゃん。 たしかに麻美ちゃんも天才っぽいところがあるよね。 臭いでわかるとか意味がわからないもん。
「本当、どんなやばいチームよ……」
宮下さんも少し呆れたような表情を見せるのでした。
◆◇◆◇◆◇
こうして今回の合宿は幕を閉じた。
日本代表に選ばれた私達が次に合宿で会うのは8月の中旬。 そこで他国代表との親善試合も組まれているということです。
私達はそれぞれの街へ戻っていくことに。
「紗希ちゃぁん……」
「亜美ちゃんってばぁ。 今度は夏に会えるでしょー。 夏季休講始まったらすぐ千葉に戻るから」
「うん」
「元気でね、紗希ちゃん」
「どうせ毎日電話したりするんだし、私は何も言わないわよー」
「きゃははは。 りょ!」
まずお別れするのは地元大阪の黛姉妹と、京都在住の紗希ちゃんである。
どちらも電車一本で帰れる距離という事なので、新大阪駅で新幹線組の私達とはお別れなのである。
夏までの我慢だよぉ……。
新幹線で関東へ向かうグループはそのまま新幹線へ乗り込む。 東京までは弥生ちゃん、宮下さん、新田さんが一緒である。
「せやけどええ練習出来たな。 やっぱ代表クラスが集まる練習は得られる経験値がちゃうわ」
「そうねー。 かなりレベルアップした気がするわ」
「2人はVリーグの試合っていつからなの?」
「ん? シーズンは終わってもうてるからなぁ。 10月に今シーズン開幕やからそれまでは調整やら練習試合やらしかあらへんで」
「10月からなんだ」
「えっ! そうだったの! 公式戦試合まだまだなの?!」
何故か驚きの声を上げるのは、弥生ちゃんと同じチームに所属している宮下さんである。
どうして宮下さんがそんな驚くのだろうか。
「あんさん、ちゃんと話聞いとらんかったんかいな……ウチがおらんかったらあんさん全然あかんやろ」
「美智香姉は昔っからそうですよ。 難しい話は全然聞いてないんです」
「まあまあ、今までそれで生きてこられてるし」
「もうちょい人の話聞いてや……」
「あ、あはは」
宮下さんは私が思っていた以上に問題児さんの様だよ。
「そういう大学バレーはどないなってんの?」
「大学はもう春季リーグが始まってるわよ。 私達も今月から試合に参加するわ。 腕が鳴るわ」
「あははは。 奈々ちゃんや希望ちゃん、遥ちゃんとの対戦が楽しみだよ」
大学バレーは4月~5月にかけての春季リーグ、6月に開かれる東日本インカレ、9月~10月に行われる秋季リーグに年末の全日本インカレがある。
現在は春季リーグが開催中。 残り試合数はそんなに多くは無いけれど、次の試合からは私もスタメン出場の予定です。
6月の関東インカレとは、全日本大学バレーボール連盟が主催する、関東地区の各大学連盟に所属していればどの大学でも参加可能。
「へぇ、全日本の日程もあるしお互い大変よね」
「まあ、さすがにワールドカップバレー優先やけどね」
「大会の規模が違いますわね」
「そだね」
この通り、大学生になったらなったで何だかんだ忙しい私達。 私や奈央ちゃんはそうでもないけれど、奈々ちゃんや希望ちゃんはアルバイトも始めるという事なので更に大変だと思う。
体調を崩さなければいいんだけど。
「弥生ちゃんや宮下さんはオフシーズン中に遊べればいいねぇ」
「そやな。 また連絡するで」
「おー、東京で遊べるとこまたチョイスしとくー」
これは楽しみである。
◆◇◆◇◆◇
東京駅に到着した新幹線から降りて、東京組の3人とお別れする。
ここまで来るともう千葉組しか残っていない。 さっきまであんなに賑やかだったのに、凄く寂しくなっちゃったね。
「帰ってきたねぇ」
「そうね」
「なはははー、帰りに緑風行くー?」
「お、いいねぇ!」
「本当に好きね」
「良いじゃんー」
私は緑風のパフェならいくらでも食べられるよ。
「亜美ちゃん。 大学の帰りにもしょっちゅう寄ってますわよね」
「うぐ」
そうなんだよねぇ。 実は大学の帰りにはほぼ必ずと言っていいほど緑風へ寄る。
帰り道の途中にあるんだもん。 今日は我慢するぞって思っても、お店の前にやって来ると意志が揺らいでついつい入店しちゃうんだよね。
緑風の魔力には抗えないのである。
そんなわけで、今日も今日とて緑風へとやってまいりました。 でもでも今日は皆も一緒である。
いつも奈央ちゃんを誘っているんだけど、半分ぐらいは断られるんだよね。
まぁ、忙しいみたいだし仕方ないけど。
今回は奈央ちゃんも一緒です。
「フルーツパフェー」
「私はコーヒーで良いわ」
「メロンソーダ」
「なははー、私もー」
と、皆好き好きに注文する。 そういえば夕ちゃんは緑風のバイトの面接いつ受けるんだろう。
奈々ちゃんも一緒に受けるって話だけど。
「ん? バイトの面接。 明後日よ。 私はね。 夕也はもう面接終わってるはずだけど」
「え? そうなの? 夕ちゃん何も教えてくれないんだもん」
「どうなったんだろぅね」
帰ったら聞いてみようっと。
その前にフルーツパフェー。
「んむんむー。 んー美味しい」
「なははは、亜美姉幸せそうだねー」
「この子はパフェ食べてたら大体いつも幸せなのよ」
「あはは。 私の幸せは安いねぇ」
「夕也と一緒にいるのとどっちが幸せなのよ」
奈々ちゃんにそんなことを問われるも、最初から答えなんて決まってるんだよねぇ。
「そりゃもちろん、夕ちゃんといる時だよ?」
「え?! そうなの?!」
「パフェ食べてる時じゃないのね……」
「当たり前じゃん……それ比較してどうするのよ」
「いや、亜美なら案外パフェを選ぶかと思って」
「そんなわけないじゃん」
「パフェに負けたら今井君が可哀想ですわ」
「そうですよね」
「あはははー」
全く、私をなんだと思ってるんだろうねぇ。
帰ったら夕ちゃんにちょっと甘えて幸せ養分補給してやるんだから。
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