第672話 練習開始

 ☆亜美視点☆


 代表選考合宿が始まった翌日。 いよいよ本格的な練習が始まる。

 練習には近くにある体育館を使用する。 その為、ホテルからはバスを使って10分程移動する必要がある。

 今回の合宿には35人ほど召集されている。 バスもほぼほぼ満員である。

 この中から24人の選手が日本代表になるのかぁ。


 

 ◆◇◆◇◆◇



 さてさて、今回練習に使う体育館へとやって来ました。

 早速皆着替えてウォームアップを始める。 ユニフォームは高校時代に使っていた物を使う事にした。

 やっぱこれが落ち着くよ。


「よーし、まずポジション別に分かれて練習してもらうぞー。 こっちに0Hアウトサイドヒッターセッター組、そっちにMBミドルブロッカーリベロ組に分かれて並べー」


 私はOHなのでこっちだね。

 適当な場所に並んで待機する。


「いいかーSがボールを上げてOHがスパイクする。 MBは2枚ついてブロックに入れ。 2人入ってブロックを抜けてきたボールをディグで拾えー。 毎回ローテーションしながら30分続けるぞー」


 月ノ木学園でもやっている基本的な練習だ。 まずは全員の動きを見ようって事だね。

 よし、他の人の動きも要チェックしながらしっかりアピールするよ。


 パァンッ!


 パァンッ!


 さすがに元代表やベテランプレーヤー。 基本的な動作でもレベルが高い。

 でも、私達新人組が劣っているとも思えない。 インターハイで戦ってきた皆だって負けないぐらいレベルが高いと思う。

 皆だって代表入り狙えるよこれは。


「次は私だね」


 出番が回ってきたのでコートに入って、セッターさんのトスを待つ。

 何だか周りの視線が私に集中しているのがわかる。 私が世界記録を持っていることは皆御存じのようです。

 高いトスが上がったので、タイミング良く助走を開始する。

 勢い良く踏み切って……跳ぶ!


「はっ!」


 パァンッ!


 ブロック2枚の上から叩きつけ、リベロさん2人の中央を狙い打ちお見合いにさせる。


 体育館の中がざわつく。


「ありゃ凄いわ……世界一の高さってさすがだね」

「あれで何cmぐらいなのよ」


 うんうん、どうやらベテラン組さんを驚かすことは出来たみたいである。

 その後も新人組のプレーをどんどん見せつけていく。 弥生ちゃんや宮下さん、新田さん、黛姉妹も最後に対戦した時よりもさらにレベルアップしてるし、皆凄い。


 30分間ローテーションを続けているうちに、小林監督が近付いて来て声を掛けてきた。


「清水。 最近ジャンプの高さ測ったかー? 何か以前より飛んでる気がするんだが」

「最後に測った時は347cmでした」

「さ、さ、さ、347cmだぁ?!」


 監督が大きな声を上げて驚く。

 一昨年、私自身が出した公式世界記録が344cmであったんだけど、それを非公式とはい3cm更新していたので無理もない。

 その声を聞いた周りの人達もざわめきだした。


「す、すまん30分経ったな、 休憩!」


 冷静を装うように休憩を告げる監督。 皆もコートから出て休憩を開始するが、まだざわついているみたいである。


「何やの亜美ちゃん。 347cmて一昨年あんさんが出した世界記録より高いやん」

「記録更新したって事?」

「非公式だけどね」

「高くなってる思ってたんやけど、そんな記録出してたんやね……清水さん半端ないやん」


 黛姉妹も寄って来て話に入ってくる。

 更には元日本代表の田中さんもやって来て……。


「皆凄いね。 今日は驚かされてばかりだわ。 貴女達の世代が日本バレーボール界の黄金世代って呼ばれてる理由がよく分かった」

「そんな呼ばれ方してたんか?」

「知らないですわよー」

「ははは、世界選手権の時から注目はしてたけど、凄いのが集まったものね。 でも、私達も負けるつもりはないから」

「はい!」


 それだけ言って田中さんは戻っていった。


「なははは、何言われるのかビクビクしてたけど良い人だったー」

「そやな」

「だけど、自信つくわね。 元代表だとかプロで活躍してるベテランだとか、正直通用するか心配だったけど」

「ええ。 そこまで差があるとは思えませんわね」

「皆で代表入りも夢じゃないわねー、きゃはは」


 皆もやる気が出たようだし、ルーキーチーム皆で頑張ろう。

 


 ◆◇◆◇◆◇



 今日の練習は夕方まで続いた。 私達も監督にアピールできたと思うよ。

 とはいえまだ初日だし、これからの数日間しっかりやって日本代表を勝ち取るよ。

 さてさて、お部屋に戻ってきた私達は、夕食までの間ゆっくりすることにした。

 今日の夕食は外で食べようと約束している。 黛姉妹が美味しいお好み焼き屋さんを調べてくれているので、今夜はお好み焼きです。


「ん-、疲れたよぅ」

「あははは、たしかに久しぶりにガッツリ練習したもんねぇ」


 受験中は運動もそれなりにはしてたけど、やっぱり鈍ってはいるみたいだね。

 大学でもここまで身の入った練習はしてなかったし。


「監督、近いうちに試合形式の練習やるって言ってたねぇ」

「うん。 そこでアピール出来れば代表も見えてくるよね」

「うんうん」


 明日の練習も頑張るぞー。


 夕食を食べるためにホテルを出て街に出る。

 眞鍋先輩はホテルで食べるって事で、それ以外のルーキーは全員お好み焼き屋さんへ行くよ。

 かなり大人数だけど大丈夫なのか訊いてみたら大丈夫との事。

 ただ、1つの鉄板を囲めるのは8人までとのことなので別れるしかない。

 6人、7人で別れて座ることにしたよ。


「ここや。 お好み焼き『葵』」

「よっしゃ入るでぇ」


 関西人が喋ると誰が誰だかわかんないけど、最初に喋ったのが黛姉さんで後から喋ったのが弥生ちゃんである。

 微妙に大阪と京都でイントネーションが違うような気もする。 面白いねぇ。

 とりあえずお店に入ると店内は中々賑わっていた。

 半々で別れて席に座るよ。

 このお店も自分たちの席にある鉄板で自分たちで焼くスタイルのお店のようです。

 鉄板の広さも団体さん向けで非常に大きな鉄板が備え付けられている。

 それぞれメニューから食べたいものを選択して注文すると、対応した具とお好み焼きの種がが運ばれてくる。


 ジュー……


「関東の皆はお好み焼き焼けるん?」


 念のためこちらに座ってくれている黛の妹さんに聞かれる。


「一応。 前大阪で大会があった時に同じようなお店で焼いたことがあるよ」

「おお、そうなんや! ほんだら自分らで好きに焼いて食うか」


 と、それぞれ自分達で好きにお好み焼きを焼いていく。


「ん-、いいねぇこの感じ」

「ねえ、黛さんも今年からVリーグでしょ? どう?」


 奈々ちゃんはVリーグに興味があるようで、宮下さんや弥生ちゃん、更には眞鍋先輩にまで聞いていた。


「どうって言われても、そんな変わらんで? たしかに練習設備とかは充実してるけどやな」

「やっぱ設備がいいのね」


 企業がスポンサーについてるからね。 もし奈央ちゃんがVリーグチームを立ち上げたら凄い投資しそうだよ。

 奈々ちゃんは大学を出た後にVリーグになるつもりでいるみたいだし、色々情報収集しているみたいだね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る