第625話 西條ファーム

 ☆夕也視点☆


 札幌観光もそろそろ折り返し地点。

 俺達は白い恋人パークという場所へやって来た。

 奈央ちゃんが言うには、北海道土産の定番である白い恋人の製造工程を見学したり、お菓子作りの体験、更にはお菓子を食べられるコーナーもあるのだという。

 北海道に来てからというもの、甘い物ばかり食べている女子達。

 口には出さないようにしているが、帰った時に体重計に乗ってびっくりしないと良いが。


「という事で、ここが白い恋人パークよ」

「ほー」

「では参りますわよー! プレミアムコースですわよー」


 プレミアムコースというのはよくわからないが白い恋人パークへと入っていくことにした。



 ◆◇◆◇◆◇



 プレミアムファクトリーコースというコースに申し込んだ俺達は、他の観光客の人達と一緒にパーク内ツアーを回ることになるようだ。

 時間まで少しの間、チョコトピアハウスのウェイティングルームとやらで待機することに。


「何か見た事ある絵が一杯飾ってあるな」

「ん-? でもなんかちょっと違うよ?」


 と、亜美は首を傾げて言う。 奈央ちゃん曰く、有名な絵画のオマージュばかりの様だ。

 元々絵に詳しくない俺にはよくわからん。

 しばらく待っているとツアーが始まるようで案内が始まった。

 まずはホビーズルームという所へとやって来た。


「ここでは、チョコレートの歴史や豆知識、クイズなどを映像で楽しんでもらいます」


 という事らしい。

 女子達はノリノリであった。 男子3人もそれなりに楽しんではいるが、女子のノリにはついていけない感じだ。


 時間にして約30分程でホビーズルームを後にし、次はタイムトラベルルームとやらにやって来たわけだが、ここでは博士と妖精とやらが案内してくれる。

 チョコレートの4大革命と呼ばれるものをプロジェクションマッピング、つまり立体映像を使って紹介してくれている。

 迫力のある映像に引き込まれながら、また一つチョコレートについて賢くなったのである。


「チョコチョコチョコチョコチョコレート♪」


 麻美ちゃんが楽しそうに歌いながら、次の部屋へと移動する。

 次の部屋はコレクションルームという部屋だ。

 説明によると中世ヨーロッパで使われていた言われているチョコレートのカップ等、珍しい物を見ることが出来た。

 

 そこを抜けると、今度はチョコトピアファクトリーという場所へ移動してきた。


「おー! ここが製造工場ー!」

「凄いね!」

「こんな風に大量生産されてるのね」


 目の前には巨大な製造ラインによって大量に高速で製造されていく白い恋人。

 なるほど、たしかにこれは凄いな。

 

 製造工程を順番に見せて貰いながら先へ進んだ後は、チョコレート作りを体験。

 白い恋人パークをすっかり堪能し終える頃には15時になっていた。



 ◆◇◆◇◆◇



「さあ、急いで次の目的地、札幌西條ファームへ向かいますわよ」

「名前はそのままなんだね」

「名前は私が付けたわけじゃないもの知らないわよ。 ここからバスで20分程よー」

「はいはーい! 西條先輩ー!」

「はい? どうしたの麻美?」

「牧場には馬しかいないのー?」

「一応牛と羊もいるけど、メインは昼にも言った競走馬の生産をやってるわ」

「ほー」

「この時期は出産ラッシュもあって牧場スタッフも忙しいみたいよ」

「じゃ、産まれたばかりの仔馬も見れるかもって事?」

「えぇ、今年はすでに6頭産まれてるみたい」

「楽しみね」


 競馬とか見たりはしないが、サラブレッドとか初めて見るし楽しみだな。

 亜美達も仔馬が見れると聞いて少しワクワクしているようだ。


「宏太、馬についての蘊蓄は?」

「馬かー? 今更説明もいらんだろうし。 牧場のスタッフの人に聞けば良いだろう」

「あーまーそれもそうね」


 宏太が蘊蓄を披露することもなく、バスは牧場の方へとやって来た。


「着きましたわよ」

「おー、広い牧場だよ」


 牧場の敷地内に入ると、中は一面の緑。

 人が通る為に一応道はあるものの舗装もされていないあぜ道のような感じになっていて、その両脇には柵を隔ててすぐ横に、馬たちが放牧されている姿が見られる。


「おお、いるいる」

「可愛いー。 のんびりしてんのねー」

「ねね、あれ大きい馬に寄り添ってるの仔馬?」


 たしかに小さいのが大きい馬の近くで突っ立っているのが見える。


「ですわねー」

「おお、お嬢様ー! ようこそいらっしゃいました!」

「こんにちわ」


 柵内の馬を見ていると、牧場の人がやって来た。


「ここの牧場長をやってます、渡辺と申します」

「今日はよろしくお願いします!」


 と、皆で牧場長さんに挨拶をして、牧場を案内させてもらう。

 ここは、競走馬生産をメインに据えながらも、乳牛や羊なんかもいるとの事。 更には観光事業もやっているらしく、馬とのふれあいや乗馬体験なんかもさせてもらえるようだ。

 貴重な体験が出来そうだな。


「では案内していきます。 こちら側、繁殖用の牝馬を放牧している区画になります。 あそこにいるお腹の大きい馬は今年出産を控えている馬ですね」

「おお、本当にお腹大きいー!」

「凄いわね。 仔馬って結構大きいし、それが入ってるんだものね」

「仔馬は小さくても30kgから大きいものは50kgを越えるものもいますからね」

「うわわ、凄い。 重たいんだろうねぇ」

「人間で言うとお腹に4kgとかの重りくっつけてるみたいなもんでしょ? きつっ?!」


 女子達は口を揃えて「それは無理だわー」と漏らしている。

 ここにいる女子も大半はいずれ子供を持つだろうに……。


「こっちの区画は出産を終えた母馬と仔馬を放牧しておく場所ですね」

「ちっちゃくて可愛いー」

「あんな小さくてももう立派に走るんだな」


 仔馬は、母親がのんびりと牧草を食べているのを尻目に、ぴょんこぴょんこと跳ねるように走り回っている。 元気な仔馬にようだ。

 他にも、母馬や種馬を引退して余生をゆっくり過ごしている馬なんかを放牧している区画なんかも案内してもらった。


「次は馬舎の方見に行きましょうか」

「お願いしますわ」


 牧場長さんについていくと、馬達を収容しておく馬房というものがたくさん並んでいる建物へと案内してもらう。

 そこには、先程のような仔馬と母馬が入った馬房や空の馬房があった。


「おお、近いなー!」

「そうですね。 こうやって見るとつぶらな目をしてますね」

「仔馬こっち来たわよー!」

「ブルルル」

「きゃー可愛いー」


 どうやら人懐っこい仔馬のようで、こちらへ近づいて来て口をもひもひさせている。


「撫でても大丈夫ですよ」


 そう言われて、順番に仔馬を撫でていく俺達。 可愛い奴だなこいつ。

 10人に大人しく撫でられる仔馬と、それをボケーッと見つめている母馬。

 のんびり親子の様だ。


「誰か代表してニンジン上げてみますか? 母馬の方に上げてください」

「はいはーい!」

「はーい!」


 こういう時元気に手を上げるのは大体麻美ちゃんと紗希ちゃんの2人だ。

 結局2人でニンジンを持って母馬にニンジンを差し出す。

 母馬は2人の手からニンジンを貰い、ムシャムシャと咀嚼し始める。

 可愛い奴め。


「可愛い」


 あんまりこうやって馬をゆっくり眺める事ってないから、結構新鮮な感じだな。

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