第600話 祖父母

 ☆希望視点☆


 大学入試が終わり、合格発表を待っているこの期間。

 皆は受験勉強疲れを発散する為に遊びに行ったりして、のんびりとした時間を過ごしている。

 私も例に漏れずのんびりと過ごしています。

 今日も散歩がてら、亜美ちゃん、奈々美ちゃん、夕也くん、宏太くんの仲良し5人組で街を散策していた。


「いつも駅直行だったから、お屋敷周辺の街ってあんまり見てなかったわね」

「そだねぇ」

「買い出しに行くスーパーぐらいだもんな」

「だな」

「駅前の辺りは全然見れてないよぅ」


 というわけで、私達はお屋敷から最寄りの駅周辺を散策する事になった。



 ◆◇◆◇◆◇



 私達は、駅前で見つけたオシャレな喫茶店に入って休憩タイム中。

 そんな中、私のスマホが急に鳴り出した。

 私のスマホに電話をかけてくるのは、亜美ちゃんやお母さんか、お爺ちゃんお婆ちゃん、あとは紗希ちゃんや麻美ちゃんなんかもたまにある。

 今日は。


「お爺ちゃんだよぅ」

「あ、お爺さんなんだ」


 お爺ちゃんからは中々珍しい。


「もしもし? お爺ちゃんどうしたの?」

「のんちゃんや。 大学の方はどうなっておるんかの?」


 あ、そういえば近況の報告を何もしてなかったよぅ。


「うん。 入試自体は無事に終わったよ。 後は合格発表待ち。 合否が出たら連絡するよぅ」

「おおぅ、待っておるぞ。 と、今日はもう1つ用事があったんじゃ」

「用事?」

「以前こっちへ来た時に話しておった、美雪と定道君のお墓の移動と、ワシらの引っ越しの件なのじゃが、そろそろ話を進めても良い頃じゃろうと思うてな」


 そうだそうだ。

 お墓参りするにはあまりにも遠いのでお墓のお引越しと、年老いた祖父母が心配なので近くへ引っ越して来て欲しいという話を以前にしたのだった。


「そうだね。 入試も終わって落ち着いてる時期だし。 春休み中にまたそっちへ行くよ」

「その事なんじゃが、今度はワシらがそちらへ赴こうと思うとるんじゃ」

「はぅ? で、でもお爺ちゃんもお婆ちゃんも歳だし、遠出は辛いんじゃ?」

「何、ワシらはまだまだ元気じゃて」

「はぅ……わかったよぅ。 いつぐらいに来るの? 私達、卒業式からしばらく卒業旅行で居なくなるから月末の方が良いんだけど」

「そうさのー、28日くらいにおじゃましようかの」

「わかったよぅ。 亜美ちゃんにも伝えておくね?」

「うむ。 それじゃあこれで切るよ。 合格の報告楽しみにしとるよ」

「あはは、ありがとう。 それじゃあね」


 という事で電話を切る。


「お爺さん達こっちに来るの?」

「ぅん。 28日に。 例のお墓の話と引っ越しの話をする為に」

「ん? 爺さんと婆さんこっちに呼ぶのか?」

「うん。 2人とももう歳だし、近くにいてほしくてね。 この前秋田行った時にその話をしたんだよぅ」

「なるほどな」

「あのお爺さん、優しそうよね? 面識は無いけど、1回だけ見た事あるわ」

「お葬式の時だよね」

「そうね」


 それにしても、これから忙しくなりそうだ。

 お爺ちゃん達の住む場所とかも一緒に探さなきゃいけないし、霊園も探さなきゃいけない。

 亜美ちゃんも色々協力してくれると言ってくれている。


「困った時の西條頼みって手もあるぞ」


 というのは宏太くんの案。

 あまり迷惑をかけたくはないけど、一応相談してみようかな?

 色々と手広くやっている奈央ちゃんだし、何かしら協力してもらえるかもしれない。



 ◆◇◆◇◆◇



 という事で、屋敷に帰ってきた私は、早速奈央ちゃんに話をしてみた。


「ご両親のお墓の引っ越し先と、お爺様達の住む家?」

「そんな都合良く良い所なんてないよね?」


 いくら奈央ちゃんとはいえさすがに……。


「ちょっと待ってね。 調べてみる」


 パソコンをカタカタと操作する奈央ちゃん。

 凄い早さで何かをしているみたいだけど、私にはさっぱりわからない。


 カタカタカタカタカタカタ……


「ふむ。 霊園に関しては、私達の街から3駅隣にある霊園が西條グループ傘下ですわね」

「あるんだね」


 恐るべし西條グループ。

 

「おほほほ、我が西條グループにご相談して下されば、見つからないものはありませんわ。 お爺様達がいらっしゃるのは28日でしたわね。 私の名前で相談の予約を取っておきますわね? 移設にかかる金額も最大限勉強させるように連絡しておきます」

「は、はぅ。 ありがとう奈央ちゃん」

「後はお爺様達の住む家ね。 それは当日にでも貴女のお爺様達と一緒に、私も不動産屋に赴きます」

「え? そ、そこまでしなくても」

「私が行った方が色々とスムーズに済みますわよー」

「う、じゃあお言葉に甘えて」


 奈央ちゃんに相談すれば、大抵のことはあっさりと解決してしまうのだ。

 お世話になりっぱなしだよぅ。


「私は皆の為ならどんな事にでも力を貸しますわよ。 友達ですもの」

「奈央ちゃん、ありがとう」



 ◆◇◆◇◆◇



「もしもしお爺ちゃん」

「のんちゃんかえ? どうかしたのかの?」

「うん。28日の件なんだけど、お友達が良い霊園と不動産屋を紹介してくれてね」

「ほう、それはありがたいの」

「28日はその子も一緒に行動する事になるからよろしくね」

「あいわかった」


 それだけお爺ちゃん達に伝えて電話を切る。

 

「奈央ちゃんに相談して正解だったねぇ」

「うん。 本当に助かる」

「28日は私も一緒に行くよ」

「お爺ちゃんも喜ぶよ」


 お爺ちゃんは亜美ちゃんを凄く気に入ってるからね。

 孫の私より可愛がっている可能性もある。


「お爺さん達は今井家に泊まってもらう?」

「うん」


 話は着々と進んでいく。

 順調だよぅ。


「色々とご馳走しないとね。 あとは奈々ちゃんとか宏ちゃんとか紹介しよう!」

「あはは、大事な友達だからね。 本人達が良いって言えばだけど」


 

 ◆◇◆◇◆◇



「お爺さんに私達を紹介?」

「うん。 嫌じゃなきゃだけど」

「私は別に良いわよ? 宏太は?」

「俺も構わないけどな」

「ありがとぅ! お爺ちゃんにこんな素敵な友達がいるんだって紹介できるよぅ」

「ふふ、麻美も良いかしら?」

「うん」


 ちょっと賑やかなぐらいの方が、お爺ちゃん達も喜ぶだろう。 麻美ちゃんも大歓迎だ。


 もうすぐ心配事の1つであったお爺ちゃん達の問題が解決しそうで良かった。

 本当にずっと心配だったからね。


「私のお爺ちゃんとお婆ちゃんはもう居ないから、希望ちゃんが羨ましいよ」


 と、亜美ちゃん。

 亜美ちゃんのお爺さんとお婆さんは、亜美ちゃんが小さな頃に亡くなっている。

 奈々美ちゃんや夕也くんのお爺さんは亡くなっており、お婆さんはご存命だ。

 麻美ちゃんや奈々美ちゃんはたまーに遊びに行くようだけど、夕也くんのお婆さんはおじさん達に付いて、アメリカへ行っているのでかなりご無沙汰みたい。

 

「また今度お婆ちゃんの顔でも見に行こうかしら。 大学合格してたらそれも伝えたいし」


 と、奈々美ちゃん。 

 私も早くお爺ちゃん達に会いたいよ。


「さて、そろそろ夕飯作りに行かなきゃ」


 亜美ちゃんはそう言って、立ち上がる。

 今日は私もお手伝いしようかな。

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