第596話 亜美の居ぬ間に
☆希望視点☆
今日はお昼から亜美ちゃんと奈々美ちゃんが2人でお出かけして居なくなった。
よく2人でショッピングや映画なんかを見に行ってるけど、本当に仲良しだよ。
私と亜美ちゃんみたいな関係とはちょっと違う、本当の親友って感じだね。
それにしても……。
「退屈だよぅ」
受験勉強をしなくて良くなり、とても時間を持て余すようになった私達。
昼間は特に暇なのです。
「こんな事なら、私も2人について行けば良かったよ」
一応声は掛けてもらったんだけど、2人に気を遣ってついて行かなかったんだよね。
「はぅ」
コンコン……
ベッドに寝転んでいると、ドアをノックする音が聞こえてきた。
「希望ちゃんいるかーい?」
紗希ちゃんの声だ。
「いるよぅー」
そう返事をすると、紗希ちゃんが部屋の中へ入ってきた。
「出かけよー希望ちゃん!」
「お出かけ?」
「うむ。 何かね、ちょっと電車で行ったとこにボケねこショップがあるらしいのよ」
「行こぅ!」
私は即答していた。
ボケねこさんに会えるなら当然だ。
「よし決まり! 裕樹も連れて行くけど良い?」
「うんうん。 私も夕也くん誘ってみようかな?」
「それ良いじゃーん!」
多分暇してるだろうし、もしかしたら一緒に来てくれるかもしれない。
そしたらダブルデートだ。
「よぅし!」
そうと決まればすぐに夕也くんを誘いに行くよ。
私は急いで起き上がり、紗希ちゃんを連れて夕也くんの部屋へ向かう。
◆◇◆◇◆◇
「出かける?」
夕也くんに一緒にお出かけしないか誘ってみたところ。
「良いぜ。 紗希ちゃんと柏原君も一緒なんだろ?」
「うん」
「きゃはは、ダブルデートじゃーん」
「それはどうか知らんが……」
とにかく、夕也くんも一緒にお出かけする事になったのだった。
紗希ちゃん達が一緒とはいえ、亜美ちゃんがいない間に夕也くんとお出かけするのはとても久しぶりであり楽しみだ。
「で、何処行くんだ?」
「ボケねこショップ」
「あぁ……またあれ関連か……」
何故か夕也くんは疲れたような顔をするのだった。
◆◇◆◇◆◇
4人揃ったところで、私達はボケねこショップを目指してお屋敷を出る。
紗希ちゃん情報によると、4駅先にボケねこの波動を感じるらしい。
ボケねこセンサービンビンだね。
「なあ、あのキャラクターの何がそんなに良いんだ?」
「可愛いとこ」
「あの人をバカにしたような顔が良いんだよ」
夕也くんはそれを聞いて「左様ですか」と、呆れたように言う。 どうやら夕也くんはボケねこの良さが未だにわかっていないみたいだよぅ。
「柏原君はどう思うよ?」
「僕達にはわからない世界だと思う」
「何がわかんないのよー! いつもボケねこの良いとこ教えてあげてるじゃない」
「いやいや……教えてもらっても理解できないものは理解できないんだって」
「柏原君も大変だなぁ」
「はぅ! 夕也くんにもボケねこの良さを1から100まで教え込んであげる!」
「頼むから勘弁してくれ……」
どうしてそんなにボケねこの事を邪険にするんだろう? あんなに可愛いのに。
「にしても、ダブルデート楽しみねー」
「うん。 私と夕也くんは恋人同士ってわけじゃないけど……」
私と夕也くんには
亜美ちゃんに負けて、恋人の座を奪われてしまってから久しい。
「ま、今日ぐらいは良いぞ? 恋人同士っぽく振る舞っても」
「はぅ?」
「良かったじゃん希望ちゃん! 今井君もナイスだね!」
「そういえば2人は付き合ってた事があったんだっけね」
「うん。 あ、じゃあ久しぶりに腕組んで歩いても良い?」
「おー、良いぞ」
何だかわからないけど今日はラッキーです。
久しぶりに夕也くんと恋人っぽく出来るよ。
「えへへー」
「ま、亜美には内緒だぞ?」
「はぁい」
お安い御用だよ。 でも亜美ちゃんってそういうとこ鋭いからなぁ。
バレたらバレた時だよね。
◆◇◆◇◆◇
電車に乗って移動する私達。
4駅行った先で下車すると、そこは少し変わった街並みが目に飛び込んできた。
「な、何だここは……」
「何か凄い所だね」
男子2人も唖然としている。
こんな中でもいつも通りなのは紗希ちゃんぐらいである。
「きゃはは。 良いとこじゃん」
さて、私達が降りた場所がどんな所かと言うと、色んなキャラクターショップが並ぶ凄い所だ。
有名なゲームやアニメのキャラクターグッズ専門店が一杯並んでいる。
「こ、こんな所あるんだね」
「あるとこにはあるわねー。 さ、とりあえずボケねこショップ行きましょー」
「おー」
「ボケねこよりこの辺のアニメショップの方が良くないか?」
「僕もそう思う」
「そんなの後々! 何はともあれまずはボケねこよ」
「だよぅ」
夕也くんも柏原君もわかってないね。 何においてもボケねこは優先されるんだよ。
「波動はこっちから感じるよぅ!」
「進めー」
「はぁ……」
「付き合うしかないみたいだね……」
2人も観念して私達の後についてくるのであった。
通りを直進すると、見えて来ましたボケねこショップ。
相変わらず可愛い顔をしたキャラクター達が入り口前の看板に描かれている。
あー、この人をバカにした様な表情はいつ見ても癒されるよぅ。
「やっぱりダメだ。 この顔見てると無性に怒りが込み上げて来やがる」
「ははは……」
「夕也くんは仕方がないなぁ。 さあ入るよぅ」
夕也くんの手を取り店内へと入っていく。
夕也くんは文句ばかりで困るよぅ。
店内には所狭しとボケねこのグッズが並んでいた。
様々なサイズのぬいぐるみに目覚まし時計、マグカップなどの食器にカーペットやカーテン。
その他にも色々売っていて目移りしてしまう。
「はぅ! はぅ!」
紗希ちゃんも目を輝かせてぬいぐるみを見つめている。
「裕樹、これ買ってちょ!」
「えぇ……」
「買ってちょー!」
「わ、わかったよ! 買うから」
「やりぃ!」
おお、紗希ちゃんはねだり倒して買わせる事に成功してるよぅ。
私もちょっとねだってみようかな?
「夕也くぅん」
「な、何だ甘ったるい声で……」
「私もこれ欲しいなぁ」
目をウルウルさせてお願いすれば、夕也くんのことだから簡単に……。
「ちょっと高い」
「はぅ」
ちょっと渋る夕也くん。 意外と甘くなかったよぅ。
仕方がない、自腹を切るしかないね。
私はぬいぐるみをカゴに入れて、気になったカーペットやカーテン、マグカップもカゴに入れていく。
結構な金額になりそうだよぅ。
「あー、しゃあないな。 半分出すよ」
「良いの?!」
「あぁ。 久しぶりだしな。 まさかそんなに買い込むとは思わなかったしよ」
「やった! やっぱり夕也くん優しくて好きだよぅ」
「そうかい。 買うもん決めて会計行こうぜ」
私はもう買う物は無いので、夕也くんと一緒に会計へ向かう。
紗希ちゃんはまだ彼氏くんを連れ回して、ボケねこグッズを買い込んでいた。
さ、さすがに可哀想だよ。
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