第595話 お揃い

 ☆奈々美視点☆


 3月1日。

 とても天気が良いから今日は久々に亜美と2人でショッピングへ行く事にしたわ。 まあ、希望も誘ったんだけど断られたのよ。

 たまには2人で出かけるのも悪くはないものよね。



 ◆◇◆◇◆◇



「奈々ちゃーん、まだー?」

「今行くわー」


 出かける支度に時間のかかっている私を、亜美が急かしてくる。

 他の皆はというと、広間でマロンと遊んだり、自分の部屋で寛いだりしている。

 

「お待たせ。 行きましょ」

「うん」


 支度を終えた私は、待たせていた亜美と合流して屋敷を出る。

 

「3月に入ったけどまだまだ寒いね」

「そうね。 はぁ一年中春とか秋なら快適なのに」

「あはは、そだけど作物とか作るのに適さないよ」

「それも困るわね。 季節の旬の物が食べられないのは嫌だわ」


 中々上手くはいかないらしいわ。


「とりあえず駅だよね」

「そうね。 隣駅行きましょ」


 今日の外出は特に予定を決めてはいないので行き当たりばったりになりそうだわ。

 何事も計画を立てて、バシッとスケジュールも作る亜美にしては珍しい。


「隣駅は凄く大きいもんねぇ。 まだ見てない所とかも一杯あるだろうし、色々見て回ろうね」


 亜美の言う通り隣駅は滅茶苦茶に大きい。

 楽しみだわ。


「そういえばさ、紗希の奴のんびりしてるけど京都の方は住む所とか大丈夫なのかしら?」

「大丈夫みたいだよ」


 と、亜美が何食わぬ顔で答える。 どうやら亜美も気になって本人に聞いたらしい。


「試験終わった後に不動産屋に行って下見は済ませてあるみたい。 説明も聞いてて後は契約手続きだけみたいだけど、そこは合否がわからないとね」

「へぇ。 あの子意外としっかりしてんのね」

「なんかね、知り合いの子とルームシェアするんだって。 2人とも受かってたら良いんだけど」


 そういえば、こっちの知り合いが同じ大学を受験するって前言ってたわね。

 2人とも受かってたらルームシェアか。 そういうの良いわね。

 この1ヶ月、皆と暮らしてみてそう思うわ。


「あれ? 彼氏君は?」

「彼氏君は学校が近い場所探してたみたいだよ。 一緒には暮らさないみたい」

「あら、そうなのね」


 紗希の事だから彼氏君と一緒に暮らす方向に持って行くのかと思ったけど、意外とそうでもなかったみたい。


 2人で雑談しながら駅に到着。

 到着した電車に乗り込み隣駅へ。

 電車に揺られる事約3分で到着する。


「いやー、あっという間だね」

「本当にね。 さ、どっちから攻める?」

「今日は北口行ってみよ?」

「北口ね。 了解」


 東西南北に出口がある。 一応何処から出ても各出口の方へ行けるようにはなっているけど遠回りになる。

 私は亜美と並んで歩き、北口の方へ向かう。


「北口の方には何があるかな?」

「楽しみね」


 まだ行った事のない場所だし、どんなお店があるのかはわからないけど、そういうのがまた楽しいのよね。

 北口から出ると、広いバスターミナルが姿を現した。

 バスをご利用の方は北口へってね。


「あ、何だか早速可愛いお店あるよ!」

「本当。 入ってみる?」

「うん」


 という事で、早速見つけたお店に入ってみる事にしたわけ。

 亜美は鼻歌なんか歌ってご機嫌だ。


 店内に入ると、女性向けの小物やバッグ等、衣服等様々な物が売っているレディースショップになっていた。

 これはいきなり当たりを引いたんじゃないかしら?


「これは良さげなお店を見つけたね」

「そうね。 これは中々楽しめるわよ」


 財布からお金が出ていきそうだわ。


「とりあえず春服見に行こー」

「良いわよ」


 2人して洋服コーナーを見に行く。

 まだ肌寒いけれど、店内には今春流行りそうな洋服が既に売り出されている。


「一杯あるねぇ」

「目移りしちゃうわね」

「これなんか奈々ちゃんに似合うんじゃない?」

「どれどれ?」


 亜美が手に持った服をマジマジと見つめる。

 白いブラウスとベージュのロングスカート。

 私に似合うかしらね? こういう色合いは亜美の方が似合うと思うんだけど。


「あんたの方が似合うんじゃない?」

「そっかな? んー、じゃあ一緒に試着してみよ?」

「そうね。 そうしましょ」


 てなわけで、2人して同じ服を手に持ち試着室に入り着替える。

 着替え終えた私達はせーので試着室から出る。


「やっぱり似合うよ!」

「亜美だって」


 と、結局どっちも似合うという結論に至った結果──。


「結局お揃いで買っちゃったねぇ」

「そうね。 でも最近はお揃いの服着なくなったわよね」

「たしかに。 小さな頃はよくお揃い買ってもらって一緒に着てたよね」


 小学生の頃なんかは大体そうだった。 どちらかが可愛い服を着ていたら何処で買ったのかを聞き出して、数日後にはお揃いになっていた。


「何か嬉しいなー」

「ふふ、そうね。 それに何だか懐かしいわ」


 お店で買った服をそのまま着用して、お揃いの姿で街を歩く。


「さてさて、次はどんなお店があるかなー?」

「ね、私靴も見たいんだけど」

「靴だね。 じゃあ靴屋さんを見つけたら入る事にしよう」

「亜美は何か見たい物とかない?」

「んー。 特には無いかなー? マロンの物もまだ必要無いし」

「そう? じゃあ靴屋探しましょう」

「うん」

「入りたい店があったら言いなさいよ?」

「らじゃだよ」


 亜美は私に遠慮したりするような子じゃないから、見たい店が無いって言うなら無いんでしょ。

 ただ歩いてる内に興味を引く店があれば、言ってくれるはずだ。


「そうだ。 最近夕也とはどうなの? 受験勉強でまともにデートとかしてなかったでしょ?」

「うん? 見ての通り仲良しだよ。 デートに関しては向こうに戻ったらする予定だね」

「そうなの?」

「うん。 あ、そうだ! ダブルデートしようよ!」

「ダブルデートねー。 良いわねそれ」

「じゃあその方向で!」


 亜美の提案で、今度のデートはダブルデートをする事になった。

 夕也や宏太には何も決定権がないあたりが私達らしい。


「あ、靴屋さんあったよ」

「お、じゃあ入りましょ」


 見つけた靴屋に入っていく。 今履いているスニーカーもだいぶへたって来たし、大学行くようになったらちょっと良い靴履きたいしね。


「んー」

「奈々ちゃんはハイヒールとか似合うと思うよ」

「歩きにくいわよ。 バレーやるのに足は大事だし普通のスニーカーかブーツとかで良いわ」

「私も買っておこうかなぁ」


 と、亜美も靴を物色しはじめる。 


「靴も揃える?」

「おー、それ良いねぇ」


 私と亜美は結局同じブーツを買い、服に加えて靴もお揃いにする。


「何だか姉妹みたいだねぇ」

「そうね。 希望が嫉妬するんじゃない?」

「あはは、あの子はそんな事で嫉妬したりしないよ」


 まあそういうタイプじゃないものね。 お揃いコーデの私達を見て「はぅ、似合ってるよぅ」ぐらいの反応で終わりそうだし。


「さあ、次は何処行こうかしらね」

「私、口が寂しくなってきたから喫茶店入りたいかな」


 と、亜美。

 またパフェ食べたいのかしらね?


「じゃあ、喫茶店入りますか」


 次は亜美に付き合う事にしましょう。

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