第594話 打ち上げパーティー
☆亜美視点☆
入試の全日程が終了した翌日のお昼過ぎ。
紗希ちゃんが京都から千葉へと戻ってきたよ。
「ただいまぁ……いやー疲れたわー」
「おじゃまします」
一緒に柏原君も連れてきたみたいだよ。
受験が終わったという事でご両親からの許しが出たようである。
「おかえりだよー。 疲れたでしょ? ゆっくり休んでて良いよ」
「サンキュー」
紗希ちゃんはドカッとソファーに座り「はあ、ようやく解放されたー」と、昨日の私達と同じ様な事を言ってダラーッとダラけてしまった。
まあまあ、今日はゆっくりしてもらおう。
「今日は打ち上げパーティーだから楽しみにしててね」
「おー、楽しみねー。 私は手伝わなくても良いのー?」
「うん。 他の皆でやるから紗希ちゃんはゆっくりしてて」
「恩に着るわー」
京都から帰って来るのでかなりお疲れ様のようだよ。
「柏原君はしばらくこの屋敷に?」
「そうだね。 卒業式前まではお世話になろうかなと」
「そかそか。 奈央ちゃんに言っておくね」
「ありがとう」
3人で駄弁っていると、奈々ちゃんと宏ちゃんが広間へとやって来た。
奈々ちゃんは、ダラけている紗希ちゃんを見て声を掛けた。
「おかえり。 ダレてるわね」
「疲れたのよー。 朝早起きして京都から帰って来たのよ?」
「情けないわねぇ。 部活辞めてから体鈍ってるんじゃないの?」
「ちゃんとランニングと筋トレは続けてるわよー」
紗希ちゃんは勉強タイムが終わった後は毎回「ランニングして来るー」と言って屋敷を出てたもんね。
奈々ちゃんも早朝はランニングしてるみたいだし、皆ちゃんとしてるねぇ。
「奈々ちゃんと宏ちゃん、ちょっと良い?」
「ん? 何だ?」
「これから打ち上げパーティーの為の買い出しに行くんだけどさ、ついて来て欲しいなって」
多分荷物が多くなるからね。 人数がいた方が良いと思う。
既に夕ちゃんと春くんにもお願いしてある。
こういう時、男の子は頼りになるのである。
「おー、俺は良いぞ」
「私も構わないわよ」
ということでお手伝い2人確保だよ。
「夕ちゃんと春くん呼ぶから待っててね」
「あいよ」
2人には待ってもらい、夕ちゃんと春くんを放送で広間へと呼ぶ。
とても便利だねぇ。
しばらく待っていると、夕ちゃんと春くんが広間へとやって来る。
「まさか放送で呼ばれるとは思わなかったぞ」
「ですね」
「あはは、探すの面倒だもん。 呼べば来てくれる放送の方が楽だよ。 さ、買い出し行くよ」
「おう。 お? 紗希ちゃんと柏原君帰って来てたか。 おかえり」
「あぁ〜ん、今井君ただいまぁ」
「何でそんな艶めかしい声出してるんだよ……」
紗希ちゃんは彼氏の前でもお構い無しに夕ちゃんを誘惑している。 相変わらずだよ。
「はぁ、紗希。 今井君が困ってるだろう?」
「良いじゃーん」
そんな紗希ちゃんをとりあえずは置いて、私達は買い出しへと出かけるのであった。
◆◇◆◇◆◇
私達は近場のスーパーでパーティー用の買い出しを済ませて、更に近場の喫茶店で少し休む事にした。
「チョコレートパフェー」
「この子またパフェ食べてるわ」
「私の原動力だからね。 これを食べないと私は活動を停止してしまうのである」
「亜美さんはやっぱりロボットなんですね」
「人間だよ」
「いい加減人間離れしてる事に気付いてよね」
「ちょっと普通の人達よりは凄いなぁって自覚はあるよ? ちょっとだけど」
「何がちょっとだけだよ……世界レベルでヤバイっての」
「うわわーん! 奈々ちゃんがいじめるー!」
「な、ちょっと? 泣かなくても良いじゃない?」
私が泣き出すと慌てた様子で顔を覗き込んで来る。 当然私は嘘泣きなんだけどね。
「嘘だよー。 あはは、奈々ちゃん引っかかっちゃってー」
「ぐぐっ! ていっ!」
ポカリッ!
「痛っ?! 何で俺が殴られてるんだよ?!」
何故か私じゃなくて宏ちゃんが殴られて涙目になっている。
それを見た夕ちゃんは大爆笑。 春くんもクスクスと小さく笑っていた。
「バカ。 私が亜美を強く殴れるわけないじゃない? ストレス発散にサンドバッグ殴ったりするでしょ? ちょうどそこに良いのがあったから殴っただけじゃない」
「俺はまだサンドバッグ扱いされてんのか?! くそぅ……こいつなんか無視してゆりりん選べば良かったぜ」
涙を流しながら奈々ちゃんを選んだ事を後悔している宏ちゃんであった。
本当にこの2人って付き合ってるのかなぁ? ちょっと疑問に思うのであった。
◆◇◆◇◆◇
さてさて、夜になり私達は広間に集まり、打ち上げパーティーを開始した。
「では今日は私が始めの音頭を取らせてもらいますわね。 こほん。 えーと、まだ合格発表待ちの状態ではありますが、一先ず大学入試終了という事で皆お疲れ様。 という事で、長かった勉強地獄の終了を祝しましてー! 乾杯!」
「かんぱーい!」
奈央ちゃんの乾杯で始まる打ち上げパーティー。
「ぷはー! ジュースが美味い!」
紗希ちゃんがコップに入ったジュースを一気に飲み干して、酒飲みおじさんみたいな事を言っている。
勉強から解放されて浮かれているという事が窺い知れるねぇ。
「でもよ。 こんなパーティーやっといて誰かが落ちてたらどうすんだ?」
と、宏ちゃんが空気の読めない発言をすると、隣に座っている奈々ちゃんに頭を叩かれていた。
これはさすがに宏ちゃんが悪いね。
「そういう事言わないの! 今は勉強から解放された事を喜ぶのよ!」
「へ、へい」
「きゃははは! そう言えば皆は合格発表いつ? 私のとこは3月12日だけど。 私はネットで確認するから楽だけど」
「白山は13日よ」
私達は一緒に発表を見に行く予定である。
「私の所は12だよぅ。 亜美ちゃんついて来てよぅ」
「うん、らじゃだよ」
1人で見に行くのは心細いという希望ちゃんについて行く約束をする。
「七星も12だ」
「皆大体その辺みたいね。 遥のとこは?」
「13日だぜ」
私達より1週間早く入試があった遥ちゃんも、合格発表は私達と同じらしい。
「で、18日が卒業式だねぇ」
「そうだな」
そう。 卒業ももう目の前に迫っているのである。
私達もいよいよ大人の仲間入りをするんだね。
「卒業式の2日前にはこの屋敷を出て、私達の街に戻りますわよ」
「そうだな。 1日は家でゆっくりしたいからな」
夕ちゃんの言う通り、向こうで1日はゆっくりしたいというのを考慮しての2日前帰宅である。
そして……。
「卒業式が終わった後の20日からは卒業旅行へ行きますわよ! 今回は北海道! 季節的にはちょっと半端だけど、楽しみましょう!」
「おー!」
卒業旅行は北海道。 3月とは言え北海道は寒いので、防寒はしっかりしないとね。
「北海道3泊4日! 遊び尽くしてやるわよ!」
「3泊4日?!」
これはこれはまたまた凄い旅行を企画したものである。
卒業旅行は皆での久しぶりの旅行になるし、目一杯楽しみたいね。
「傷心旅行にならないようにな!」
「だからそういうこと言わない!」
宏ちゃんはまたいらない事を言って頭を叩かれていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます