第593話 解放
☆夕也視点☆
大学入試2日目も無難に乗り切り、俺達はようやく長かった受験勉強地獄から解放された。
まあ、合格していなければまた地獄行きなわけだが。
俺はキャンパス内で待ち合わせしていた奈々美と合流する。
「来た来た。 お疲れぇ。 手応えどうだったのよ?」
「まあ、何とかなってるとは思うぞ。 そっちは?」
「ま、似たようなもんよ」
と、お互い手応えはそれなりだったといった感じだ。
「さ、寄り道して帰りましょ! 何かこう、重りが全部外れたみたいに体が軽いわ」
「だよなぁ。 一気に軽くなったよな」
「ふふ、とりあえず何か食べにいきましょ? お腹空いたわ」
「おう」
昼飯がまだなので、軽く何か食べて帰ろうという事になった。
ピロン……
「っと、メッセージだ……亜美からか」
「あっちも終わったのね」
「手応えがどうだったかを聞いてきているが?」
「それなりって応えといて」
「あいよ」
奈々美に言われた通りに返信しておく。
ピロン……
すぐに返信して来やがる。
何々?
「とりあえずお疲れ様だよ。 提案だけど紗希ちゃんが戻って来たら打ち上げしよう」
ふむ、まだ合格発表が残ってはいるが、たしかにそれぐらいは羽目を外しても良いかもしれんな。
「良いじゃん? やりましょ」
奈々美もノリノリだ。 俺は「了解」とだけ返信してスマホをポケットに入れる。
「今から私とデートするって言わないの?」
「飯食うだけだろが」
「あら、解放された勢いでホテル行っても良いのよ?」
「行くわけねーだろうがよ」
「何? 外でしたいって? わたしは亜美じゃないんだから外は嫌よ?」
「黒歴史掘り返すなバカ野郎」
「ふふ、あ、ここ入りましょ」
「って、昼から寿司かよ」
「回転寿司ならお金大丈夫でしょ?」
「まあ……」
「よーし食べるわよ」
「程々になぁ」
◆◇◆◇◆◇
「んむ。 んまー」
「寿司とか久しぶりに食うからな」
「そうね。 でも奈央に頼んだら超高級寿司屋とか連れて行ってくれそうよ?」
「奈央ちゃんを利用するなよ……」
「あっははは、しないわよ」
本当だろうか。
「紗希や希望は手応えどうだったのかしらね?」
「そういえば聞いてないな」
「ま、帰ってからゆっくり聞けば良いか」
「んだな」
「昨日の時点では皆も良い感じだって言ってたし大丈夫よ」
「そうだよな」
特に希望と紗希ちゃんは自分の夢がかかってるんだ。
全力を振り絞ったに違いない。
「とりあえず、合格発表の日まで遊び倒してやるわよー!」
「何だかんだ言って、結構遊んだりしてたじゃないか」
受験地獄とは言っても、俺達のグループは比較的緩く遊んでいた方だと思うが。
「あんなの足りないわよ。 もっと遊びまくるわけよ」
「そうか」
まあしかし、勉強もしばらくはしなくて良いし好きに遊べば良いだろう。 誰も止めたりはしないだろうしな。
「夕也、何処行きたい?」
「何で俺も行く事になってんだよ?」
「当たり前じゃない! 亜美も希望も宏太も、ついでに麻美も一緒よ」
「実の妹をついでかよ……」
「あの子は私達が勉強してる間も遊んでたじゃない? 一緒に遊んでもらえるだけありがたいと思ってほしいわけよ」
麻美ちゃんだって遊んでばかりいたわけじゃないだろうに、可哀想な妹だ。
「ふぅ、ごちそうさま。 もうお腹一杯だわ」
「よし、んじゃ帰るか」
「そうね」
腹も膨れたところで、回転寿司屋を後にして屋敷の方へと戻るのだった。
◆◇◆◇◆◇
「ただいま」
「あらおかえりなさい」
屋敷へと戻ってくると、白山大学受験組の3人が既に帰って来ていた。
どうやら奈央ちゃんが車を呼んで乗って帰って来たらしい。
「夕ちゃん奈々ちゃんおかえり。 お疲れ様だよ」
「おー、今井に奈々美はどうだったよ?」
「それなりよそれなり」
「後は発表待つだけだ」
「そうかそうか。 私もそんなとこだぜ」
遥ちゃんは先週既に大学入試を終わらせていて、俺達と同じく合格発表待ちだ。
「まだ帰って来てねーのは希望だけかー?」
「そうですね。 神崎さんは明日帰って来るとの事ですし」
そうか、希望はまだなのか。
20分程待つと希望も屋敷へと戻って来た。
「ただいまぁ」
「希望ちゃんおかえりー」
帰って来た希望の元へ走り寄っていく亜美。
「どうだった?」
「ばっちりだよぅ! 自信あり!」
「おー、さすがは希望ちゃんだな」
亜美や奈央ちゃんの影に隠れがちではあるが、希望も本当に優等生なのだ。
亜美達が居なければもっとトップ争いに食い込めるはずなんだが、残念な事にツートップが目立ち過ぎてその下は影が薄いのだ。
「皆、良い結果が期待できそうですわね。 紗希もかなりやれたって連絡が来たわ」
「おー」
皆、勉強合宿の成果が出せたという事だな。
「よーし! じゃあ、明日は紗希ちゃんも京都から戻って来るし、打ち上げパーティーだよ!」
「いぇーい!」
皆、勉強地獄から解放されて羽目を外したくて仕方がないようだ。
奈々美だけじゃないんだな。
「明日から遊びまくるわよ!」
「おー!」
奈々美の言葉に皆ノリノリで応える。
「そうそう。 卒業旅行だけど北海道へ行こうと思うわ」
「北海道? あ、そういえば去年のクリスマスパーティーで旅行券貰ったよぅ!」
そういえば希望がビンゴで当ててたな。
それを聞いた奈央ちゃんが頷く。
「そう。 その旅館へ行こうと思います!」
「おー! 皆で北海道旅行!」
亜美は嬉しそうに飛び跳ねている。 皆で旅行も久しぶりな気がするしな。
去年のゴールデンウィークで沖縄へ行って以来か?
「北海道はでっかいどー」
亜美は嬉し過ぎて浮かれている。
まだ合格が決まったわけではないのだが、よほど勉強地獄が堪えていたらしい。
まあ俺もそうであるが。
「さて、晩御飯を作ろうかな! 誰か手伝ってー」
「私が手伝うわよ」
亜美と奈々美が夕飯を作る為にキッチンへと消えていった。
「夕也。 大学受かったら部活とかやんのか? バスケとかよ?」
「やるにしても部活でがっつりはやる気はないさ。 サークルでやりたい時にゆるーくやるぐらいだ」
「全国制覇したプレーヤーがそれはもったいないんじゃないですの?」
「奈央ちゃんが言っちゃダメだよぅ」
「それもそうですわね」
「多分バイトとかもしながらになるだろうからな」
大学入ったらバイトぐらいはしなきゃならんだろう。
両親の仕送りにばかり頼っているわけにはいかない。
「私もアルバイトしなきゃね。 亜美ちゃんの本の収入があるとは言っても」
と、希望もアルバイトをするつもりでいるようだ。
まだまだ完全に人見知りを克服したわけじゃないだろうに頑張るな。
しかし、そういう経験を積めば案外人見知り克服に繋がるかもしれないな。
「皆、先のことをもう考えてんだなぁ。 私もバイト探した方が良いかぁ」
奈央ちゃんは家の事が大変忙しくなるのでアルバイトはしないとの事。 というか、しなくても学費やらなんやらに何も問題が無いからな。
同じ理由で春人も学業や奈央ちゃんの補佐に集中するとの事。
亜美や奈々美はどうするんだろうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます