第496話 西條邸ご案内
☆亜美視点☆
現在は奈央ちゃんの家でお昼ご飯中だ。
やはりというか、とても豪勢なランチとなっている。
「なんやこれは……」
「こんな料理見たことないんだけど……」
西條家のお食事を初めて見た弥生ちゃんと宮下さんは、当然驚きの表情を見せる。
逆に私達はもう慣れてしまったようで、特にこの豪勢な料理達に驚かなくなっていた。 慣れって怖い。
「西條さん、いつもこんな料理食べてるの?」
宮下さんの質問に「そうよー」と答える奈央ちゃん。 それを聞いた弥生ちゃんがこんな事を言う。
「ええもん食ってても育たんもんなんや……」
「そこ! だまらっしゃいー!」
半べそをかきながら弥生ちゃんに怒ると、隣に座る紗希ちゃんに抱きついて「およよよー」と鳴きまねを見せる奈央ちゃん。
「あーつい口に出てもうた……堪忍やで」
歯に衣着せぬというかなんというか。 それでも奈央ちゃんは急にケロッとして「構わないわよ」と許すのであった。
「では、いただきましょうか」
「いただきますー」
皆で手を合わせてお昼ご飯に手を付ける。
「んむんむ」
「おーうめぇ!」
「遥はもうちょっと優雅に食べられませんの?」
「そいつには無理よー。 んむんむ」
「これ上手いな……なんの肉や?」
「羊よー」
「ほぇー……初めて食べたわよ」
「あら、そう?」
奈央ちゃんはもう飽きるほど食べているらしく、私達一般庶民がそんなに口にすることが無い事は知らなかったらしい。
こういうところはお嬢様である。
「美味いわ。 おおきにやで西條さん」
「お姉ちゃんももうちょっと優雅に食えへんの?」
「ええやんか」
「なははーもぐもぐ」
「麻美も」
こつん……
麻美ちゃんも優雅とは程遠い食べっぷりを見せており、隣の麻美ちゃんの頭をゲンコツで軽く小突く。
「いたーい……たんこぶ出来ちゃうー」
「出来るわけないでしょう? 軽くよ?」
「お姉ちゃんは自分のゴリラパワー理解してないんだよー……あいたたた」
「なんですってぇー?」
あ、奈々ちゃんが怒ったよ。
奈々ちゃんはゴリラって言われると怒るからねぇ。 私は絶対に口に出しては言わないよ。
「はぁ……貴女達静かにできませんの?」
さすがの奈央ちゃんも少々呆れているようである。
ただ、賑やかな食事は楽しいらしく「まあ、いいですけど」と、にこにこと笑いながら言うのであった。
「普段は1人なの?」
「ええ。 お父様もお母様も忙しい方だからね。 と言っても、そんなにいつも1人ってわけじゃないわよ。 休みの日はちゃんと3人揃って食べたりするもの」
「そかそか。 1人は寂しいもんねー」
「そうね」
「はぅ……寂しい食事は嫌だよぅ」
私には夕ちゃんや希望ちゃんがいるから、今のところ寂しい思いはしていない。 ありがたいことだよ。
賑やかな食事を終えて、散歩がてらに西條家の案内をしてくれるというので、奈央ちゃんについていくことにした。
そう、私達でさえまだこの屋敷の全貌を知らないのだ。
「ここが2階のロビーよ」
「1階はよく見るけど2階は初めてだねぇ」
「そうね。 VIPを招待する時に使う階層だからね」
見たこのない観葉植物や絵画、大きな水槽があり、中には綺麗な海水魚たちが遊泳している。
これが奈央ちゃんの家で飼っているという海水魚達のようだ。
さらに浴場や大広間などを見て回った後、庭の方へと移動することに。
お庭も全貌を見たことは無いねぇ。 何しろ広すぎるのだ。
この家に住んでいる人にしか全貌はわからないだろう。
「こっちよー」
庭に出ると、奈央ちゃんが先導するように案内をしてくれる。
庭に出て少し歩くと気になるものを見つけた。 表からは見えない位置に、倉庫のような佇まいの建物が建っている。
「これはなんや?」
「シェルターよ。 地下シェルター」
「ち、地下シェルター?!」
またとんでもないものがあったものである。 有事の際に避難して、長期間地下で暮らせるような設備となっているようだ。 凄すぎるよ西條邸。
「私、西條グループの事ナメてたわ……まさかこれほどとはね」
奈々ちゃんも変な汗をかきながら、小さな声でつぶやく。
私もだよ……。
「皆の家には無いの? 地下シェルター」
「あるわけないやん……」
奈央ちゃんは「そうなのね」と、これまた真顔で言う。
うーん、奈央ちゃんはどこか抜けているところもあるのである。
「残念だけど、中は見せてあげられないのよね」
「別に良いよー」
宮下さんは即返答した。
地下シェルターの中はどうなっているのか多少興味はあるが、宮下さんはそうでもないらしい。
残念だよ。
さて、まるで散歩コースの様になっている奈央ちゃんの家の庭。
舗装された道の上を歩いていくと、今度は大きな池が見えてきた。
「池ですか?」
「鯉ー?」
「そうよ」
おー、お金持ちの家には何故かある小さな池と、その中にいる鯉のセットだ。
その池の側には、人が寝そべり本を読んでいる姿が見える。
あれは……。
「春人君よ。 あそこでああやって読書するのが好きみたい」
「そういや、西條さんの家に住まわせてもろてる言うてたな」
「絵になるわ」
「でしょ? さすが私の彼氏」
自慢気に踏ん反り言う奈央ちゃん。
そんな私達に気が付いたのか、こちらを振り向いて微笑み、軽く会釈してくる春くん。
うわわ、女子を落とすスマイルだよ。
「あれも無自覚にやるからタチ悪いわね」
と、奈々ちゃん。
奈央ちゃんも困ったように頷くのであった。
「この庭、どんだけ広いんや?」
「東京ドーム4個分」
「ごめん、さっぱり想像もつかないわ」
私も全く想像できないけど、めちゃくちゃ広いのだという事はわかった。
ちなみに何でそんな広いのか問うと、暖かい季節で天気が良い時には庭でパーティーなどを開くことがあるのでそのためだそうだ。
ちなみに春先から夏ぐらいは盛んなようである。
「スケールが半端ないな西條さんの家は……」
「ふふん、日本有数の大財閥の総帥令嬢ですもの。 おほほほ」
「無理にそんな笑い方しなくてもいいのにー」
「先輩ってお嬢様っぽくないですよね?」
「まあ、そういうのあんま好きじゃないのよね」
「大体、素でいる事が多いものね」
「楽だもの」
「親しみやすいもんなー。 ウチはそういうの好きやよ」
「奈央ちゃんがこういう性格だから、私達も一緒にいやすいところあるし」
希望ちゃんの言う通りである。 奈央ちゃんが超高慢な高飛車お嬢様だったら、こんな風に仲良くなれてたかどうか。
「私はどっちの奈央でも仲良くなってたわよー」
と、言うのは紗希ちゃん。
奈央ちゃんとの付き合いはこの中の誰よりも長い、奈央ちゃんにとっての一番の親友である。
「大体、昔のあんたは高慢で高飛車だったじゃん」
「なっ?! もう過去の事は良いでしょう?!」
そういえばそんなこと以前にも言ってたね。
それでも奈央ちゃんと仲良しに慣れた紗希ちゃんなら、多分どんな奈央ちゃんとでも親友になれただろう。
その後もドーム4個分と言われる広さの庭を案内してもらい、気が付けば時間は13時半となっていた。
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