第494話 西條邸へようこそ

 ☆亜美視点☆


 女子のお泊り会2日目の夜はまだまだ続く。 皆入浴を済ませてリビングのソファーなどを一旦どかし、布団を敷いていく。


「うーん、装飾で騙されてたけど、元はやっぱ私の家だねぇ」


 そう、そんなに広くないのである。 布団も敷けて3枚ほど。 3枚の布団に7人……。


「まあ、あれや。 なんとかなるやろ」

「そーそー」

「なははー」


 割と皆楽観的な性格で助かるよ。

 まあ最悪私と希望ちゃんは私達の元自室で寝ることも考えるしかない。 ただせっかく皆が止まりに来てるんだから、一緒に寝たいよね。


「今日は何の話するー?」


 宮下さんが布団の上に座りながら早速話題探し始める。


「そういえば宮下さん、夕也と踊った後でウチの学園の男子漁って多っぽいけど、イイ男いた?」

「あんさん、そんなことしとったんか?」

「うん。 結構何人かいたよ。 さすがに宏ちゃん君や夕ちゃん君ほどイケメンはいなかったけど」

「あの2人は学園のツ-トップだよー」


 麻美ちゃんが大袈裟に言うけど、実際そうだろうなぁとも思う。

 宮下さんはその中の1人と連絡先の交換をしたらしい。 な、何という行動力。

 これで今まで出逢いが無かったというのだから、本当に巡り合わせが悪かったんだろうね。


「うおーし、この人と仲良くなるぞぉ」

「て、うちのクラスの三山じゃん」

「それって、今日夕也兄ぃ達と一緒にライブしてた人ー?」

「そうなの! 実はライブやってる時から狙ってたのよねー」


 とのこと。 三山君、あれで彼女はまだいないという事らしい。 どうやら夕ちゃんや宏ちゃんに皆持っていかれて回ってこないとのこと。

 男子の勢力図はそんなことになっていたんだねぇ。


「東京住って事は伝えてるのぅ?」

「もち! まずは友達からって事で気にしないことにするってー」

「ほー、上手くいくと良いわね」

「だねー」


 何だかんだで宮下さんは三山君とこれから交際を始めていくことになるそうだ。

 たまに三山君から色々聞き出してやろうと思います。


「弥生っちは男漁りしなかったの?」

「せぇへんよ。 ウチは今んとこそういうのはいらんねん」


 弥生ちゃんは夕ちゃんに対して色々スキンシップ取ったりしているが恋愛感情は無く、ただ気に入ってるから遊んでるだけという事らしい。 本当に彼氏はいらないというスタンスみたい。

 まあ、私だって夕ちゃんや宏ちゃんがいなければ恋人いらないって思ってただろうね。


「まあ、三山は良い奴だと思うし上手くやんなさいよ」

「うむ!」

「にしても麻美、あんたもしぶといわね」

「何がー?」

「夕也の事よ。 あんたダンスの最後にキスしてたでしょ」

「うんー。 好きだもん」

「まあそうだけど……いや? 良いの?」

「大体ー、諦める諦めないは個人の自由だもんー」

「亜美は良いの?」

「良いよ別に。 麻美ちゃんの言う通り、個人の自由だと思うし」


 多分私が麻美ちゃんの立場でも同じだと思うから。


「ま、亜美ちゃんがええ言うんやからええやん。 な、渚?」

「え? あ、せやね……」

「仲良いよねー皆。 同じ男子を好きになったんならバチバチやり合うもんじゃないの?」

「無いわね? 最近は希望も大人しいし」

「うーん、今は受験勉強が忙しい時期だからだよぅ」


 と、希望ちゃんが最近大人しい理由はそういう事らしい。 受験が終わったらまたバチバチになるのだろうか?

 うーむ、まだまだ気が抜けないようだよ。 誰にも夕ちゃんは渡さないよ。

 その後も皆の過去の事や学校の事について話をすることに。


「へー、弥生ちゃんって小学生の頃は髪の毛伸ばしてたんだね」

「そやねん。 鬱陶しかったし、本格的にバレー始めるうえでもジャマやったから中学入ってすぐ切ったんやけど。 ほれ、これが写真や」


 と、スマホに残してあるというその頃の写真を見せてもらった。

 顔は今とほとんど変わらないけど、ちょっと幼さがあるかな?


「可愛いじゃない」

「まあなー」

「もう伸ばさないのぅ?」

「せやなぁ。 正直短い方が楽やしな」


 と、いうことである。 今の髪型も似合ってるもんね。


「そういえばさ、ずっと思ってたんだけど弥生っちと清水さんってよく似てるわよねー?」

「そうだよー」


 皆も「うんうん」と頷く。 それに対して私と弥生ちゃんは首を傾げる。

 奈々ちゃんに「ちょっと顔並べて見てよ」と言われたので、言われたとおりに顔をくっつけて並べてみる。


「一緒じゃんー!」

「瓜二つって正にこれのことよね」

「はぅー。 泣きぼくろ替えるだけで入れ替われるよぅ」


 そ、そんなに似てるだろうか? 実妹の渚ちゃんよりも似てるんじゃないのそれ?

 そのあと、メイクで私に泣きぼくろを付けて、弥生ちゃんの泣きぼくろを消し入れ替わってみると、皆本当にわからないと言ってくるのであった。



 ◆◇◆◇◆◇


 

 翌日──


 

 本日のお昼15時ごろに千葉を発つという弥生ちゃんと宮下さん。

 その時間までを西條邸で遊んで過ごそうということになったので、私達は朝早くから西條邸へと向かっていた。


「この辺は来たことあらへんなぁ」

「月学と清水さんの家しか行ってないもんねー」


 私の家とは方向も違う西條邸への道のり、当然弥生ちゃん達は知らない道である。

 駅前通りの交差点を挟んで我が家とは反対方向になるこちらは校区も違い、小学校は別になっている。 中学に上がると合流するようになっているよ。

 少し坂を上っていくと、この辺は高級住宅街になってくる。

 私達の住んでいる地域とは雰囲気まるで違う。


「ん、なんやでかい家一杯建っとるな……」

「西條先輩の家はこんなもんやないよお姉ちゃん」

「嘘やろ? この家かて実家の5倍はあるで……」

「はえー……」


 2人が周りの豪邸を見てすでに委縮気味である。

 これは奈央ちゃんの家を見た時の反応が実に楽しみである。


「あ、皆やっほーい」

「うーっす」


 途中で紗希ちゃん達と合流し、もうすぐで奈央ちゃんの家だ。

 3分ほど歩く、奈央ちゃんの家の塀の横に差し掛かる。 その塀を見ながら2分ほど歩くと正門が見えてくるのである。


「な、なんや……さっきから右手に見えてるんは家の塀やったんか?」

「え……だって結構な距離歩いたわよー?」

「ここだよ」


 正門前に立って2人に就いたことを教えてあげる。

 左右にはかなり遠くまで続く塀。 門の先には長く舗装された道があり、その先には信じられないくらい大きな屋敷と、併設されたガレージ、更に普通の家よりもはるかに大きい建物が建っている。


「どひぇー?!」

「な、何よこれ?! 周りの豪邸が普通に見えるレベルじゃん?!」

「だから言ったでしょ……」

「あ、あかん、腰抜けたわ」


 昨日あんなに余裕だったのにこの様である。 弥生ちゃんを起こしてインターホンを鳴らす。

 少しすると、奈央ちゃんが優雅に歩いて正門の方にやって来た。


「いらっしゃい皆。 どうぞ入ってください」


 お嬢様モード全開の奈央ちゃんに促されて正門をくぐる私達。 弥生ちゃんと宮下さんがキョロキョロと辺りを見ながら「すご……」などと声を漏らしている。

 そんな中で最初に案内されたのは、ジョセフとセリーヌ……トラさんのお家である。

 久しぶりに会うので楽しみだよ。

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