第493話 後夜祭の続き
☆亜美視点☆
夕ちゃんが皆と踊り終えて、ようやく私の番が回ってきたので夕ちゃんの元へと向かったのは良いけど……。
そのタイミングで後夜祭が終了してしまった。
◆◇◆◇◆◇
「しょぼーん……」
月ノ木祭は終わり、私達は家路につく。
結局夕ちゃんと踊れなかった私は、ご覧のようにかなり落ち込んでいます。
「あ、亜美ちゃん、なんかごめん」
「私も夕ちゃん君と踊るの辞めとけば良かったかなー……」
夕ちゃんと踊っていた中でも、紗希ちゃんと宮下さんが凄く申し訳なさそうにしている。
私は「ううん、気にしないで」と、なんとか強がる。
「しょぼぼーん……」
強がれないのであった。
そのまま、お泊まりの予定のある弥生ちゃん、宮下さん、渚ちゃん、奈々ちゃん、麻美ちゃんと共に、西條家別宅前へと帰ってきた。
皆を家に入れて私も入ろうとすると、夕ちゃんが私を呼び止めた。
「亜美、ちょっとこっち来い」
「んー……?」
「行って来なよ亜美ちゃん」
希望ちゃんが「皆の事は任せて」と言うので、私はお言葉に甘えて夕ちゃんと一緒に今井家の方へ向かった。
夕ちゃんの部屋についていくと、何やらパソコンをカタカタと触り始める。
しばらくの間、それを見ていると……。
チャララーン♪
「あ……」
音楽がパソコンから流れ始める。
この曲は、先程まで学園の後夜祭で流れていた曲と同じものだ。
夕ちゃんは、私の為に後夜祭の続きをしてくれるつもりのようである。
「狭いけど、これで良いか?」
「うん! あ、ちょっと待ってて!」
私は良い事を思い付き、自室へと戻る。
「えーっと、んしょ! てややー!」
ササッと用事を済ませてすぐに夕ちゃんの部屋に戻る。
「お待たせだよ!」
「おー、んじゃ……ってその格好はなんだ?」
戻って来た私の服装を見て、目を丸くする夕ちゃん。
わざわざ自室に戻ったのは着替えをする為だったのである。
そして、その着替えた服というのが。
「今日のライブで着てた衣装である!」
「である! って……」
「記念に持って帰ってきたんだよ。 どう? 可愛い?」
「か、可愛い……」
「えへへ、ありがとう。 さ、踊ろ?」
私は夕ちゃんの手を取りダンスのステップを踏み始める。
2人だけのダンスタイムだ。
「皆とはどんな話をしてたの?」
「何だ、聞いてないのか? まあ、他愛ない話ばかりだよ」
「麻美ちゃんと紗希ちゃんからはキスされてたみたいだけど?」
「……不意打ちだしどうしようもなかったんだよ」
「んー!」
「何だ?」
「私もー!」
夕ちゃんにキスをせがみ、とりあえずしてもらう。
んー、幸せだよ。
「そういや、月島さんがVリーグに来てほしいって言ってたぞ?」
「Vリーグかぁ……奈央ちゃんが将来的にはチーム作りたいって言ってるんだよ。 もしかしたらだけど、可能性はあるかも? まだわかんないけどね。 小説の兼ね合いもあるし」
「それは月島さんに言ってやれ」
「そだね。 夕ちゃんに言っても仕方ないか」
そのまま2人で一曲踊り終えて、少ーしイチャイチャした後に、皆が待つお隣の家に移動する。
◆◇◆◇◆◇
「あ、来た来た」
「夕也くんとは踊れたの?」
「あぅ? 何でわかるの?」
と、希望ちゃんに訊き返すと、一昨年の希望ちゃんがそうだったからという話である。
そういえばそうだったねぇ。
「夕ちゃんと踊れて、もう元気になっとるわ。 現金ならやっちゃなぁ」
弥生ちゃんは笑いながらそう言う。
「まあまあ、良いじゃないの」
「ところで奈々ちゃんと麻美ちゃんは?」
「今2人で風呂入ってんでぇ」
今日は人数が人数だけに、1人ずつ入っていては時間がかかるから、2人ずつ入浴する事になったらしい。
「私は余り物で1人だけどねー」
とは、宮下さんの言葉。
弥生ちゃんは渚ちゃんと入り、希望ちゃんは私と入るらしい。
「で?」
「?」
弥生ちゃんが、何かを聞きたそうな顔をしてこちらを見ている。
何だろう? と、首を傾げると。
「踊ってただけにしては長かったやん? ナニしとったんや?」
「弥生っち、おっさんみたい」
「はぅ……」
「お姉ちゃん……」
どうやら、私が夕ちゃんの部屋で何していたかを聞きたいらしい。
「うーん……まあ……弥生ちゃんの想像通りだと思うよ」
「ほれ見てみぃ! ウチの予想当たってたやないか」
「いやー本当だねー」
「はぅ」
「お姉ちゃん……」
どうやら宮下さんと賭けをしていたらしく、私と夕ちゃんが、アレしてるかしてないかに1000円賭けあっていたようだ。
ちなみにこの賭けは弥生ちゃんの勝ちということみたいだ。
「くぅーっ……さらば1000円」
「まいどー」
なんだかなぁ……。
「あ、せやせや。 さっき西條さんから電話あってな、明日は西條邸に遊びに来ぇへんか言われたんやわ。 ウチも宮下さんも、まだ余裕あるさかい、明日西條さんの家行くんやけど亜美ちゃんも来るやろ?」
「奈央ちゃんの家? 行く行く」
「ほな、決まりやな。 ウチらは明日の夕方の新幹線で帰るから、昼過ぎまでは遊べるわ」
「やったね!」
「西條先輩の家見たら、お姉ちゃん腰抜かすよ」
「そんなんで抜けるかいな」
と、ケラケラ笑いながら言う弥生ちゃん。
あのレベルの豪邸は見た事ないだろうし、どんな反応するか楽しみだね。
「上がったわよー」
「おー亜美姉ー! おかえりー! ん? おかえり?」
「もう私の家じゃないけどねぇ」
奈々ちゃん、麻美ちゃんの姉妹がお風呂から上がってきて、弥生ちゃんと渚ちゃんがお風呂へ向かう。
「良いねー姉妹って。 麻美ちゃん!」
「はい!」
急に元気よく麻美ちゃんの名前を呼ぶ宮下さん。 一体何事かと思えば。
「私の妹にならんかね?」
「おー? 宮下先輩の妹?」
「こいつの姉は大変よー?」
と、実姉の奈々ちゃんが、しみじみと言いながら麻美ちゃんの頭をぽんぽんと叩く。
まあ、大変なんだろうなぁというのは何となくわかる。
とにかく自由奔放で何やるかわかんないもんね。
でも、そういうとこも宮下さんに似てるかも?
「何が大変なのさー! こんな良い妹中々いないよー?」
頬を膨らませて奈々ちゃんに反論する麻美ちゃん。 その麻美ちゃんに対して「あんたバカだし放っておくと危ないし、姉として苦労してんのよ」と、本音を言う奈々ちゃん。
「宮下先輩! いえ、美智香姉! 私、今日から美智香姉の妹になる!」
「麻美っち!」
何故か鞍替えする麻美ちゃんなのであった。
何気にお互いの呼び方まで変わってるし。
「あら? じゃあもう私の妹やめるの?」
と、奈々ちゃんはあっけらかんとした態度で麻美ちゃんに訊く。
妹にやめるも始めるもないような気もするけど……。
と思ったけど、希望ちゃんは急に妹になったんだっけ?
「ぶー! お姉ちゃん意地悪だよー! やめるわけないじゃーん!」
「何よそれ」
奈々ちゃんは、優しく笑う。
何だかんだ好かれてるんだよねぇ。 奈々ちゃんもそれがわかったからこそのこの笑顔なのだろう。
「やっぱり良いねー。 姉妹は」
一人っ子の宮下さんは、とても羨ましそうに2人を見つめていた。
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