第487話 亜美VS弥生?

 ☆亜美視点☆


 夕ちゃん達と合流した私達は、午後にある私達女子グループのライブの時間まで月ノ木祭を回る。

 現在はバレー部伝統の焼きうどん屋さんの様子を見に来ているよ。

 

「やっほー」

「あ! 先輩!」

「やってるわね」

「はい!」


 現在屋台を切り盛りしているのは新キャプテンである小川ちゃん。

 それに黒川ちゃんである。


「麻美と渚も手伝いに来てくれないかしら……」

「2人はクラスの方が忙しいみたいだよぅ」


 2人はクラスでサバゲー屋さんをやっている。

 麻美ちゃんは経験者故、ルール説明役として店を離れる事は中々出来ないだろう。

 午後からどうするのかは聞いていないけど。


「バレー部はどう? 上手くやれてる?」

「あ、はい。 1年もレベルが高いですし、春高予選も問題ないですよ!」


 おー、それを聞けて安心だよ。

 私達の後輩達は実に優秀なようである。


「焼きうどん1つ」

「あ、はいー!」


 話をしていると、宏ちゃんが焼きうどんを1つ頼んでいた。


「あんさん、さっき焼きそばとたこ焼き食うてへんかった?」

「すんごい食欲ねー?」

「こいつはいつもこうよ?」


 弥生ちゃん、宮下さんの2人は「はぇー」と口をあんぐりさせながら、焼きうどんを啜る宏ちゃんを見ていた。


 焼きうどん屋さんを後にして、次は遊べそうなお店を探すとダーツ屋さんを見つけた。

 という事で、私達一同はダーツの得点で勝負する事に。

 私に勝つチャンスという事で、弥生ちゃんと宮下さんも燃えている。

 バレーボール以外でも良いんだね。

 ルールは5本投げて一番得点が高かった人が勝ち。 皆はダーツのボードの得点の見方知ってるのかな?

 ちなみに、本日の最高得点一位は260点の西條奈央という人らしい。

 うーん、パーフェクト狙いだったみたいだけど、一投外したみたいで外したみたいだね。

 奈央ちゃんらしい詰めの甘さである。

 ちなみにダーツっていうのは真ん中が最高得点というわけじゃない。

 赤と緑に色付けされたエリア、その中でも外から2つ目のラインはトリプルといって、その列の得点×3倍の得点が入る。

 つまり20点のトリプルに入れば60点だよ。

 ちなみに真ん中は50点だ。

 本日の最高得点260点を出した奈央ちゃんは300点狙いで20点のトリプルに4回入れたまでは良いけど一回だけトリプルを外して20のシングルに入れてしまったのだろう。


「んじゃ、スタート!」


 それぞれがダーツを開始する。

 私は当然300点を狙う。 トリプルのエリアはとても狭いんだけど。


 トンッ!


「よしよし」

「ぷぷぷ。 亜美ちゃん真ん中からめっちゃ外れてるやん」


 と、ダーツボードの得点計算をよく知らない弥生ちゃんが笑っている。 こればっかりはやらないとわかんないよねぇ。

 私はお父さんに連れられてダーツバーに行ったことがあるんだよねぇ。 これは有利です。


 そのまま続けていき……。


「よっ!」


 4投目もきっちり60点を確保。 これで240点 他の皆は投げ終えているが弥生ちゃんは真ん中ばかり狙った結果160点となったらしい。 他の皆も軒並み100点から150点である。

 弥生ちゃんが何だかんだで一番稼いだようだ。

 それでももう私の方が得点取ってるんだけどね。


「ほいっ!」


 トンッ!


「よし!」

「何がよしなんや。 全部真ん中から遠いやんか」

「ふふふ、違うんだよ弥生ちゃん」

「おおー、パーフェクトです。 300点は本日の最高得点ですよ!」

「いぇーい」


 と、喜ぶ私を見て「何でや? え?」とまだ理解していない弥生ちゃんにボードの見方を教えてあげると。


「そ、そんなん知らんやん……。 ずるいでぇ」

「あはは……」

「亜美はダーツも出来るのかよ……」

「この子は何でも出来るのよ」


 幼馴染達も呆れた様子で私を見つめていた。 これでまた奈央ちゃんに勝ってしまったよ。

 後で報告して悔しがらせちゃおう。


「よし、次行くよー」

「次も勝負や!」

「あはは……勝負できるようなものあるかなー……」


 と、パンブレットのお店リストを見てみると。


「野球部がやってるホームラン競争なんてどうだ?」

「野球かぁ。 それなら私もやったことは無いからいい勝負になるんじゃないかな?」

「よっしゃそれで勝負や!」

「弥生っちは打倒清水さんに燃えてるねー。 勝てれば何でも良いの?」

「せや! とりあえず勝ちたいんや」


 何だかなー。 まあいっか。


「じゃあホームラン競争行ってみよっか」


 というわけで今度は野球部のグラウンドへ向かう。 野球は知ってはいるけど実際にはやったことが無い。 ソフトボールならあるんだけどね。



 ◆◇◆◇◆◇



 というわけで野球部の練習グラウンドへやって来た。

 早速説明を聞いて順番にやってみる。

 尚、希望ちゃんは見学。


 ピッチングマシーンから飛んでくるボールを打つだけではあるんだけど。


「よっ!」


 カンッ!


 バットに当たるは当たるけど全然飛ばないねぇ。

 私にはパワーが無いのである。

 男子である夕ちゃんと宏ちゃんも、野球はあまり経験が無いとの事でお互い3本のホームランを打つに止まった。

 ちなみに私は0本だよ。


「よっしゃ。 1本打つだけでウチの勝ちやな」

「そうだね」


 とはいえ、女子の弥生ちゃんがそうそう打てるとも思えないけど。


「構えは様になってるねー」

「だねぇ」


 もしかしてちょっとやったことあるのかな?

 だとしたら打っちゃうかも?


「うおりゃ!」


 ブンッ!


 スカ……


「構えだけね」

「そだねぇ」


 構えは様になってるしスイングも悪くないけどタイミングが全然合っていない。

 当たれば飛びそうではあるけど。


「うぉぉ!」


 スカ……

 

 そのまま1本も打てないままラスト1球となった。


「ぐぬぬー。 一発でええんや! うおおおおりゃあああ!」


 カキーン!!


「おお?」


 弥生ちゃんがでたらめに振ったバットがボールにジャストミート。 凄い勢いでボールが飛んでいく。

 これは……。


「っしゃい!」


 ボールはホームランゾーンに飛んでいった。

 うう……。


「ははは! どや! ウチの勝ちやよ!」

「やるじゃーん」

「むうー、まぐれとはいえ負けは負けだよ」

「じつりきやじつりきー」

「まぐれだよ」

「どうでもいいでしょっ!」


 ブンッ!


 カキーン!


「……え?」

「よっ!」


 カキーン!


「な……」

「ひぇぇ……」


 低レベルな争いをしている私と弥生ちゃんを尻目に、特大ホームランを連発する女子が……。


「ふんっ!」


 カキーン!


「ほぇーすんごいわね」


 バッターボックスに入り快音を響かせまくっているのは、我が親友のパワー系女子の奈々ちゃん。

 んー、ゴリラさんだね。


「これで終わりっ!」


 カッキーン!


「……あかんわ。 これには絶対勝てへん」

「だねぇ」


 奈々ちゃんはバレーボールじゃなくて野球やってれば世界一のプレーヤーになれたんじゃなかろうか?

 しかし、バットコントロールもフォームもパワーも凄い。


「奈々ちゃん野球とかやったことあるの?」

「ないわよ? ただお父さんが良く野球中継観てるから小さいころとか真似とかしてたのよ」

「へぇ……」


 私にも知らないことがまだあったようである。

 ホームラン競争は奈々ちゃんが10本で優勝という事になった。

 さて、時間もよい時間なので、私達は体育館へ戻ることに。

 いよいよ私達のライブの時間だ。

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