第477話 亜美は猫好き
☆亜美視点☆
今日は宏ちゃんとデート中。
宏ちゃんが好きだろうと思い、最初に選んだスポットは昆虫博物館。
これが宏ちゃんにはどストライクだったらしく、子供の様に目をキラキラさせている。
昆虫があまり好きな方ではない私も楽しくなる程だ。
「お、亜美ちゃん。 あれ何かわかるか?」
「んん?」
と、宏ちゃんが指差した方向には、私の体の半分ぐらいのサイズの楕円形の物。
綺麗なマーブル模様をしたそれは、私もテレビで見た事がある。
私は「ふふん」と、胸を反らし得意げに言う。
「これは蜂の巣だよ。 私をバカにしないで欲しいねぇ」
「ほほー、よく知ってたな。 スズメバチの巣だなこりゃ」
「実物は初めて見るよ」
「だなぁ」
だからと言って、普段から近場で見たいかと言われればノーである。
こんな物騒な物、近くに無い方が良いに決まってるよ。
「でかいのはもっとでかいのもあるらしいぞ」
「これでも大きいと思うけど……」
にわかには信じがたい話である。 うーん、蜂さんって凄いんだねぇ。
と、感心しながら蜂の巣の展示場所から離れて次のコーナーへ向かう。 次は何があるかな?
「おお、蝶々だねぇ」
「だなー」
今度は蝶々エリアだ。 見たことのあるアゲハ蝶や、見たことも無いような蝶々までたくさんいる。
「んー、綺麗な翅だねぇ」
「モルフォだな。 綺麗だよなぁ」
青を基調とした綺麗な翅の蝶々に私はしばらく見惚れていたのであった。
その後も私は見たことも無い昆虫達を見ては宏ちゃんに色々教えてもらい、何だかんだ楽しい時間を過ごした。
「いやー、満足した。 やっぱ昆虫も良いなぁ!」
「あはは、楽しんでもらえて良かったよ。 何だかんだで私も楽しんじゃった」
「ははは、生き物はいいぞぉ」
「本当に好きなんだね。 私全然知らなかったよ……」
宏ちゃんが自分から語ってくれるまで、宏ちゃんがこういうのが好きだっていうことを全然知らなかった。 長年一緒に育ってきた幼馴染なのに、知らないことがあったことにショックを受けたものである。
宏ちゃん曰く、子供っぽくて恥ずかしかったから隠していたらしいんだけど。
「まあ、人の事なんて全部が全部わかるわけねぇよ。 ましてや隠されてりゃあな」
「うん。 そうだよね」
「さて、次どこ行くんだ?」
「うんと、早いけどお昼にしよっか」
「おう! 朝食ってなくて腹減ったからな」
「……朝食は食べなきゃだめだよ宏ちゃん」
と言っても、寝坊する宏ちゃんが悪いんだけどねぇ。
「じゃあ、どこか入ろっか」
「だな」
私達は昼食にする為に近くを歩きながら良さそうな店を探すことにした。
宏ちゃん、私とだと案外普通じゃない。 どうして奈々ちゃんと2人でデートすると悪ノリしちゃうんだろうね?
「何食べたい?」
「昼だしなー。 牛丼でも食いたい気分だぜ」
どういう基準かはわからないけど牛丼が食べたいらしい。 どこか近くに牛丼チェーン店でもないかな? という事でスマホで周辺を検索。
してみたものの、どうやら近くには無いらしい。 代わりに、美味しいカルビ丼が食べられるお店があるという発見をしたわけだけど。
「牛カルビ丼にしよう!」
「あはは、じゃあそこ行こう」
目的地をカルビ丼屋さんにして歩き出す。
5分ほど歩いた所でそのお店に到着した私達は、意気揚々と入店し絶品牛カルビ丼を注文した。
2人で雑談しながらその牛カルビ丼に舌鼓を打ち、満腹になったところで小休憩することに。
「ふぅ、美味しかったねぇ」
「だなぁ。 少食な亜美ちゃんもペロリだもんな。 太るぜー?」
「こらっ! 女の子にそういう事言わない!」
全く宏ちゃんは。 そんなんだから奈々ちゃんに殴られちゃうんだよ。 たまに空気を読めないんだよね宏ちゃんって。
「悪い悪い。 でも亜美ちゃんも奈々美も……つーか、皆全然太らんよな? あんだけ皆で集まって飲み食いしてんのに」
「そうだねぇ。 結構不思議だなぁとは私も思ってるよ」
今までは部活でずっと運動していたからだろうと、勝手に結論付けることにした。
「まあ、皆気にする様な体型じゃないか」
「いやいや。 女の子は常に体重と戦ってるんだよ」
人生において生涯最強の敵だよ。
「その割には甘いもの食べるのをやめないよな……」
「好きな物は好きだから仕方ないよ。 我慢は良くないんだよ」
この後、宏ちゃんに長々とダイエットとは何たるかを説くのであった。 デザートにパフェを追加注文しながら……。
◆◇◆◇◆◇
お店を出た私と宏ちゃんは、次の目的地を目指す。
「次は何処行くんだ?」
「さっきは宏ちゃんが好きそうな場所を選んだからね。 次は私の行きたい場所に付き合ってもらうよ」
「おう。 構わないぞ。 ところで、夕也とデートする時もこんな感じか?」
隣を歩きながらそう訊いてくる宏ちゃんに対して、私は「んー」と夕ちゃんとのデートを思い出しながら頷く。
「そうだね。 概ねこんな感じだよ」
「平和なんだな。 これがデートなんだな」
「そうだよ。 ちゃんと奈々ちゃんともこういうデートしなきゃダメだよ?」
「うーむ……難しい」
と、腕組みをしながら首を傾げ、本当に難しそうな表情でそう言うのであった。
一体何がそんなに難しいのよ……。
「なんつーかなぁ……奈々美とはどつき漫才やってる方がらしいっていうか、楽しいっていうか」
「……あ、そっか」
私は今理解したよ。
手をぽんっと叩き……。
「宏ちゃんMなんだね」
「違うわい! 多分だが!」
「奈々ちゃんはSっぽいよ?」
「違いねぇ」
「お似合いだねぇ」
相性抜群である。 うんうん、良き良き。
私は勝手に結論付けて満足するも、宏ちゃんは溜息をついて「何だかなぁ」と、呟くのであった。
そんなやり取りをしながら歩く事15分。
次なる目的地に到着。
「着いたよ」
「ここは……」
一見普通の喫茶店だが、看板の形や窓の模様を見ると普通ではない事がわかる。
看板の形は猫さんの顔型であり、窓には猫さんの手形の模様。
そうここは──
「猫カフェだよ」
「亜美ちゃんが来たかったのは猫カフェか」
「うん。 さあ入るよ。 ねこーねこー」
「なんか幼児化してないか……?」
私は多少テンションが上がりながら入店した。
カランカラン……
「いらっしゃいませー」
「にゃー」
お店に入ると早速店員さんと可愛い猫さんが出迎えてくれる。
「猫さん可愛いねぇ……」
私は早くもデレデレになり、猫さんの顎を指で撫でて遊び始める。
ひとしきり遊んだ後で奥へ移動し、ふれあいスペースで他のお客さんと共に、大量の猫さんに囲まれる。
「あ、亜美ちゃんがほわほわしてる……」
「幸せだよぉ……」
わたしは実は猫さんが大好きなのである。 夕ちゃんとのデートでもたまに猫カフェに入って猫さんと触れ合って遊んでいたりする。
本当は飼いたいのだが、世話が大変なので今はまだ叶っていない。
いずれは必ず… …。
「ほれほれ」
猫じゃらしを模したおもちゃで猫さんの興味を惹き、猫さんと遊ぶ。
「そんなに好きなのか。 おっとよしよし」
宏ちゃんが隣に座ると、すかさず猫さんが宏ちゃんの膝の上に座ってくつろぎ始めた。
人に慣れているようだ。
「本当は飼いたいんだけどねぇ」
「まあ、大変だからなぁ」
「そうなんだよね。 それに今は夕ちゃんの家の部屋を間借りさせてもらってる身だし」
「まあ、その事に関してはあいつ何も言わんだろうが」
「たしかにねぇ……おーよしよし」
気付けば大量の猫に囲まれており、ちょっとした楽園になっていた。
いつか猫さん飼いたいよぉ。
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