第478話 亜美と海水魚
☆亜美視点☆
現在、宏ちゃんとのデートで猫カフェを堪能しているところです。
可愛い猫さんに囲まれて私はもう幸せだよ。
「にゃー」
「あー、お持ち帰りしたいよぉ」
「亜美ちゃんがこんな風になるなんて猫恐るべしだぜ……」
猫に囲まれてキャラ崩壊している私を見て、宏ちゃんが少し引いているようだ。
でも悲しいかな、猫さんの魔力には敵わないのである。
◆◇◆◇◆◇
たっぷりと猫さんとふれあい満足した私達は、名残惜しいが店を後にする事にした。
「また来るからねー」
「にゃー」
はぁ、可愛い。 いつか絶対私も飼うよ!
「行くか」
「うん」
猫カフェから出て次はどうするか宏ちゃんが訊いてくる。
この次の予定は動物繋がりでペットショップでも覗こうかなと思っている事を宏ちゃんに伝えると「俺も来年からはペットショップで働くし、社会見学も悪くない」と、かっこいいセリフを口にしながら賛成してくれた。
今日動物三昧だよ。
「で、この辺ってペットショップあるのか?」
「あるよあるよー」
そこは下調べ済みである。 さすが私だ。
という事で、私達は真っ直ぐ目的地へ向かう。
「それにしても進行がスムーズだなぁ」
「それはそうだよ。 下調べしてプラン立ててるんだもん」
「ほーん……何つーか、亜美ちゃんってマメだよなぁ。 俺と奈々美のデートなんて大目標だけパッと決めて、その他は行き当たりばったりだぜ?」
「それはそれで楽しいと思うよ? 何があるかわからない楽しさがあるよね」
「まあ、当たりハズレあるけどなぁ」
「それもそうだねぇ……ね、もし……1年生ゴールデンウィークの時、私が宏ちゃんの告白を受け入れて私と宏ちゃんがお付き合いしていたら、何か変わってたのかな? 楽しい毎日だったかな?」
私と宏ちゃんが今みたいにデートするのが当たり前になっていたかもしれない世界。
宏ちゃんは「むーん」と唸った後、真剣な表情で話し始めた。
「どうだろうな? 付き合い始めはたしかに今みたいに楽しい時間を過ごしてたかもしれないが……」
「うん」
「でもな、多分最終的には今の形に収まってたんじゃないかって思う」
「今の形っていうのは、私は夕ちゃんと、宏ちゃんは奈々ちゃんと付き合うようになってだだろうって事?」
「だな」
つまり宏ちゃんは、仮に私と恋人同士になれていたとしても長くは続かなかっただろうと、そう思っているという事らしい。
「どうしてそう思うの? 私は宏ちゃんの事だって大好きだよ?」
「うーん……多分亜美ちゃんの中から夕也が消える事は無かったんじゃないかって思うんだよな」
「つまり私は、夕ちゃんの事を忘れられずに宏ちゃんと別れて、結局私は夕ちゃんの元へ行っていただろうって事?」
「多分な」
うーん、宏ちゃんなりに考えてそういう結論が出たらしい。
実際どうなっていたか、それはわからないのだけど。
「私は上手くいってたと思うなぁ」
「ほう、そりゃまた何故?」
「さっきも言ったけど私、本当に宏ちゃんの事も好きなんだよ。 だから、もし宏ちゃんとお付き合いしてたらもっと甘えていたと思うんだよね。 夕ちゃんは希望ちゃんとはきっと上手くやってただろうし、 あ、そうなると奈々ちゃんが寂しい思いするのか」
「そうだな」
「でも、私はそうなってたと思うなぁ」
「ふうむ」
「まあまあ、想像する事しかできないことだけどねぇ。 ごめんね変な事聞いて」
「いや、別に。 そういうの考えるのは面白いしな」
「だよねぇ。 そういう未来も見たかったよねぇ」
「そうだなぁ」
とりあえずこの話は一旦置いて、目的のペットショップに到着。
宏ちゃんが来年から働くことになるペットショップに比べれば幾分小規模だけど、これでも十分大型のペットショップである。
というか、西條グループ傘下のあのお店がおかしいのだと思う。
「入ろう」
「おう」
早速入り口から中に入ると、まずわんにゃんコーナーに一直線に向かう。
やっぱり猫さんだよ。 犬さんも可愛い。
「おー……寄ってきたよぉ」
「人懐っこい奴だな」
「うんうん」
私がケースの前へやって来ると、体をガラス窓に擦り付けてこっちに甘えてくる猫さん。
こういう子を飼いたいよねぇ。
「また癒されてやがる……」
「ほわわーん……」
この愛くるしい顔がたまらないんだよね。 子猫時代は可愛いけど成長して大人になったねこさんのあのふてぶてしい感じも好きだよ。
「飼うとしたらどんな猫が良いんだ?」
「うーん、私は毛並みが短い子が好きだよ」
「なるほどな」
「スコティッシュフォールドとかアメリカンショートヘアーとか定番だけど好きだよ」
「ちょうどそこにいるな」
「うん」
ちょっと先のガラスケースの中にスコティッシュフォールドちゃんが隅っこで眠っている。
寝ている猫さんも可愛いねぇ。
「ほわわーん……」
「犬猫とかは中々な……簡単に買ってやるって言えるもんじゃねぇし」
「わかってるよ。 ありがとね」
「そうだ。 俺がペットショップで働くことになったらサービスしてやるよ」
「おお、本当? って、宏ちゃんにそんな権限あるのかなぁ?」
「ま、まあ新人だとそこまでの権限はないかもだが……」
「ふふ、だよね。 でも、私も希望ちゃんも、ペットの事で何かあったら宏ちゃんの働くお店を贔屓にさせてもらうよ」
「おう、いつでも来い来い」
「もう店員さんになった気でいるよ」
「じきになるんだっつーの」
「うんうん、そうだねぇ」
「よし次は熱帯魚とか見に行くかー」
「うんうん。 綺麗だよね」
2人で今度は熱帯魚コーナーへと移動。 熱帯魚だけではなく海水魚も取り扱っているようだ。
「海水魚の飼育って難しいのかな?」
「んー、淡水魚に比べると海水をうまく調整してやらないといけない分、ちょっとだけ難しいな」
「むーん……」
実はちょっと海水魚って言うのにも興味があるんだよね。 部活引退して受験勉強以外は少し時間も空いたし、ちょっと海水魚の飼育に手を出してみたいなぁと思ってるのである。 でも難しいのか。
「宏ちゃんは詳しいの?」
「んーまあ、一時期俺も興味あって調べたりしたから多少は」
「そっか」
んー……飼育してみたい。 難しいとは思うけど、自分なりのアクアリウムを作ってみたい。
「何から準備したらいいかな?」
「ん? 飼うのか?」
「今猛烈に興味があるんだよね。 猫はちょっと無理だけど、海水魚ならなんとかならないかなーって」
「ふうむ……とりあえず夕也に相談してみたらどうだ?」
と、冷静にそう言われたので、まずは夕ちゃんに電話で連絡を入れてみる事に。
「もしもーし」
「どうしたよ? 宏太とデート中だろ?」
「うんとね、ちょっと相談があるの」
「相談?」
「海水魚買いたいんだけど飼育許可が欲しくて」
「……海水魚? 難しいんじゃないのかあれ?」
私は宏ちゃんが色々と教えてくれることや、自分がちゃんと世話をすること等必死に説明し──。
「わかったわかった。 許可する。 宏太にあんま迷惑かけるなよー?」
「ありがとう! 夕ちゃん大好き」
「ははは、今日買ってくるのか?」
「うーん? 今日は飼育セットだけかな?」
「わかった。 宏太後は頼んだ」
「おーう」
夕ちゃんから許可を得たので、海水魚飼育セットを購入することにしたのであった。
希望ちゃんのハムちゃん、ちょっと羨ましかったんだよね。
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