第474話 小道具の買い出し

 ☆亜美視点☆


 さてさて、ライブの練習は続いているよ。 相変わらず放課後に時間を使って皆で練習しているが、私はダンスの練習が出来ないので小道具の希望ちゃん葉山さんのお手伝いをすることに。

 ライトとかは演劇部から借りられそうという事で、私達は小型マイクを手に入れるために電化製品を見に来ている。

 踊りながらになるのでヘッドセットマイクが良いかなぁ? という事でその辺を探す。

 ちなみに予算は奈央ちゃんのポケットマネーから出ている。


「ポケットマネーねぇ……」

「はぅはぅ」


 希望ちゃんが預かった金額はポケットマネーと言うにはあまりにも高額な金額。

 葉山さんはその札の束を見て顔を青くしている。

 この金額をポンッと友人に預けちゃう当たり、奈央ちゃんの金銭感覚は危ういと思う。

 これは将来奈央ちゃんの第一秘書として西條グループの財布管理をしっかりしないとねぇ。


「さて、どれがいいんだろう?」

「んーせっかく予算が一杯あるわけだしちょっと奮発しちゃう?」


 葉山さんは奈央ちゃんのポケットマネーをふんだんに使っちゃおうという考えらしい。

 まぁ、奈央ちゃんとしてもそれでいいと思ってるだろうしねぇ。


「んーといっても高けりゃいいってものなのかな?」

「そりゃもうそうでしょ! 性能が良いからこそ高額なのよ!」

「は、葉山さん……」


 こんなキャラだったっけこの人。 でもまあ、ここは小道具の2人にお任せして口出しはしないようにしよう。

 2人はマイクをあれこれ見たり、ネットで調べたりしながらあーでもないこーでもないと選びに選び、とってもお高い物を購入していた。


「いやー、自分のお金じゃこんな買い物できないし気持ち良いよねー」

「あ、あははは……」

「全部で18万だよぅ……」


 マイクにこれだけかけちゃうなんて……。 凄い買い物をしたものである。

 せっかくなので、衣装用のアクセサリーなんかも見に行こうということになり小物屋さんも見に行くことに。

 これはもうただのショッピングになりつつあるよ。


「ちょっと喫茶店で何か飲んでいきましょうよー。 清水さんと雪村さんと、ちょっとゆっくりお話ししてみたかったのよねー」

「あ、あはは、さすがにそれは自費だよね?」

「そりゃまあ……さすがに西條さんのお金は使わないよ」

「だよね」


 それなら問題は無いかぁ、という事で3人で近くの喫茶店に入り小休憩を取ることに。

 松葉杖での移動は疲れるから、この休憩は正直ありがたい。 こんなことなら奈央ちゃんから車椅子借りれば良かったよ。


「アイスコーヒー2つとメロンソーダ1つ」


 それぞれの飲み物を注文して雑談タイムに入る。


「清水さん、その足間に合いそう?」

「うん、間に合わせるよ」


 明日病院に行く予定なので経過がどうかにもよるけど、ケガしてからもう1か月以上経過してるしだいぶ良くなってるはずである。


「でもその足だと結構生活大変でしょう?」

「うーん、まあ。 でも家事は希望ちゃんがやってくれるし、一時的に寝室も1階に移動したしそこまではって感じかな」

「ほう、そうなんだ。 今井君は?」

「うん? 色々手伝ってくれるよ? 高い所の物取ってくれたり」

「おーラブラブだね」

「いやーそうなんだよねぇ」

「むぅ。 私だって負けないもん!」

「上げないよ」


 バチバチ


 希望ちゃんが噛みついて来るも、私は余裕の態度で返す。 葉山さんは「姉妹で奪い合い。 これは事件の匂い」と盛り上がっている。

 女子は皆そういう話好きだよね。 私もだけど。


「葉山さんは彼氏とかいないの?」

「えー? いるにはいるけど……」

「おお、いるんだ? 誰誰? 知ってる人?」

「うーんと、大学の先輩だから多分知らないかな?」

「おおおお、年上彼氏! いいねぇ」

「いやいやー……まあ大人ではあるけど」

「かっこいい?」

「ま、まあ」

「写真とかないの?」

「あるよ」


 と、スマホで取ったツーショットを見せてくれる。

 おお、普通にかっこいい人だ。 それに大人っぽい。


「凄いー結構年上?」

「うん。 大学3年生」

「おおお……どういう馴れ初め?」

「近所のお兄ちゃんって感じだったのよ、おほほほほ」


 ちょっと恥ずかしそうに言い照れ隠しに笑うのであった。

 その後もちょっとした女子トークで盛り上がり、衣装用の小物を買い足した後で、練習が続いているであろう学校へと戻るのだった。

 学校では練習の合間の休憩中であった。


「皆頑張ってるね」

「おお、おっ帰りー」


 動きやすそうな半袖半パン姿で椅子に座ってお茶を飲んでいる紗希ちゃんが私達に気付いて手を振る。

 まだまだ元気そうだけど、遥ちゃんは逆に机に突っ伏してお疲れモードだ。


「遥ちゃん大丈夫?」

「んー、大丈夫ー……」

「何が大丈夫よ。 そろそろ足の運びとか移動覚えなさいよ」

「わかってるよー……ぐすん。 くじで当たってやりたくもない事やらされてるんだぞ私はー……」


 と、文句を言いながらも元気のない遥ちゃん、 やっぱりくじで当たってやらされてるのは可哀想である。


「が、頑張ろう遥ちゃん。 彼にも見に来てもらうんでしょ?」

「うん……」


 今年はついに出来た彼氏も月ノ木祭に招待するらしい。 それならやっぱり、自分の良い所見てもらわないとね。 ここで頑張ってダンスをマスターしてほしいところだ。


「マイクは買って来れたの?」


 汗を拭いながら近付いてきたのは奈央ちゃん。


「買ってきたきたわよ! 5個で18万!」

「18万?! どんなマイクよそれ……」


 奈々ちゃんも驚きの声を上げて近付いてきた。 葉山さんによるとプロがライブで使うようなヘッドセットマイクらしい。

 奈央ちゃんにお金を使いすぎてごめんと謝ったのだけど「え? 高いの? 100万くらいすると思ったのに?」と、やっぱり金銭感覚がおかしいところを見せてくれるのだった。



 ◆◇◆◇◆◇



 今日もお疲れで帰ってきた夕ちゃんと私達。 私は寝室でボーッとしていたんだけど、急にスマホが鳴りだしたのでそれに応答する。


「もしもーし」

「おーウチやー」

「私もいるよー」


 通話の相手は弥生ちゃんと宮下さんだ。


「招待状おおきにやで」

「当日必ず行くわねー。 皆のライブ超楽しみ」

「あはは、皆頑張って練習してるから期待しててね」

「清水さんは足大丈夫なの?」

「いやー、まだギプスついてるよ。 練習に参加できなくて困ってるんだよ」

「いや、亜美ちゃんやったら見ただけで完コピ余裕やろ。 問題あらへんって」

「……」


 弥生ちゃんまで皆と同じこと言うんだもんなぁ、 もうやだ。


「あははは、清水さんは本当に皆から化け物扱いだね」

「うん……もうなんだかツッコミ疲れちゃったよ」

「ははは、堪忍やで。 足、はよ治るとええな」

「うん、ありがと」

「ほな、来月会えるの楽しみにしとるでー」

「んじゃねぇ!」


 と、そう言って2人は通話を切った。 言いたいこと言うだけ言ってささっといなくなる。 嵐のような友人達である。

 でも、2人が楽しみだって言ってくれてるし、私達も頑張らないとね。


「よぉし、早く足を治すよぉ!!」


 と、気合を入れるのであった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る