第473話 ライブに向けて
☆亜美視点☆
さて、月ノ木祭でライブをやる事に決まった私達3ーA。
特にライブで舞台に立って歌うメンバーに選ばれた私、奈々ちゃん、紗希ちゃん、奈央ちゃん、遥ちゃんの5人は、放課後に残って猛特訓。
私は左足の剥離骨折が治っていない為、練習には参加できないけど見て覚える事は出来る。
「出来る事はやらないとね」
ダンスの振りを考えてくれるのは、クラスでその筋の勉強をしているという女子和田さん。
中々良いダンスになりそうだよ。
衣装デザインは紗希ちゃんと希望ちゃんが担当し、そのデザインを基に西條グループの企業が仕立ててくれる手はずになっている。
更に希望ちゃんは小道具の係にも就いている。 裏方として精一杯頑張ってくれている。
そうそう、男子の方は3人グループでライブを行うらしい。 宏ちゃん、夕ちゃん、三山君のイケメン3人組だそうだ。 こちらも楽しみだよ。
「蒼井さんー! そこステップが違うわよー」
「ム、ムズイんだよー」
運動神経抜群の遥ちゃんだけど、ダンスは専門外らしく上手く皆に合わせられないようである。
苦戦しそうだねぇ。
「こうよ遥」
奈々ちゃんが手本を見せているが、遥ちゃんは足が絡んで転んでいる。
大丈夫かなー?
「もう1回いくわよー」
「ほーい」
見てることしかできなのが歯がゆいねぇ。 私も参加したいんだけど、この足じゃねぇ。
「ふむふむ……」
足の運びはああやってこうやって……、手はああやって……あ、遥ちゃんまた間違えてる。
そして案の定和田さんに止められている。 これはまだまだ時間が掛かりそうだよ。
「こらー蒼井さんー!」
「すまなーい!」
あっちで凄く怒られていた。 後で1人で特訓させられるらしい。 とりあえず今は私以外の4人でダンスを合わせている。 遥ちゃんはとにかくめちゃくちゃだ。
さて、男子の方は……。
「OK!」
「完璧だな」
「3人なら合わせやすいな」
男子の方は良い感じのようだ。 それにしても夕ちゃんも宏ちゃんもかっこいいよぉ。 勿論三山君もかっこいい。 男子の方の完成形も楽しみだね。
その日は18時まで練習が続いた。
◆◇◆◇◆◇
家に帰ってくると夕ちゃんは疲れたらしく、ソファーで眠ってしまった。
「夕ちゃーん……」
「ぐー……」
これは相当疲れているようである。 希望ちゃんは夕飯の用意もしなければいけないという事で、今はキッチンで作業している。 大丈夫だろうか?
心配になったのでキッチンへ行く。
「希望ちゃーん、平気ー?」
「うんー。 大丈夫だよぅ。 私はダンスの練習しなくていいからね」
テキパキと夕飯の準備を進める希望ちゃんを見てとりあえず安心。 何か手伝えることはあるか訊いてみるも「亜美ちゃんはゆっくりしてて」と言われてしまい仕方なくリビングへ戻ってきた。
「ぐー……」
「……えぃ」
ツンツン
暇なので夕ちゃんの頬っぺたを突いて遊ぶことにした。 起きちゃうかなー?
「ツンツンー」
「……んぐ……ぐー」
うーん、よし、チューしてみよう。
「んちゅ……」
「んん……」
んー、これでも起きないのか。 このままご飯まで寝かせておいてあげた方が良さそうだねぇ。
仕方ない。私は英単語でも暗記しておこうかな。
◆◇◆◇◆◇
「んぐんぐ」
「夕ちゃん、がっつくねぇ」
「腹減ってるんだよ」
「練習大変そうだそうもんね」
「おう、バスケの練習よりキツイぞ」
と、夕ちゃんが言う。 遥ちゃんも帰りにそんなこと言ってたっけ? どんな筋トレよりしんどいって。 やっぱり慣れていないことをすると疲れちゃうものなんだろうね、
私も練習始めたらそうなるんだろうか?
「亜美ちゃんは振り付け覚えられた?」
「あれだけ見てたら嫌でも覚えるよ」
ずっと踊ってる皆を見たからね。 もうフリ自体は完璧に覚えてしまった。 曲に合わせて脳内で踊ってみたけど、何とかなりそうである。 後は足を本番までに治し、ちゃんとした練習をするだけである。
「んぐんぐ。 ところで衣装のデザインはどうなってるんだ希望よ?」
「うん? イラストはお昼休憩の時に紗希ちゃんと描き上げたよぅ。 ちょっと待ってね」
お箸を一旦置いてスマホを 出してくる。 どれどれ。
「これが女子の衣装だよぅ」
スマホを覗くとそこには可愛らしい衣装のイラストが映し出されている。
うーんと、あまりごてごてた衣装ではなさそうだが少し露出が多そうである。 何よりもスカートが短いよ……。
「これはスカートもう少しどうにかならないの?」
「短いな」
「大丈夫だよぅ。 下は見えても良いようにアンダースコートも用意するから」
「そ、それならまぁ……」
良いとは言わないけど、下着もろ見えだけは免れそうで一安心。
他の露出が多いのはまぁどうしようもないね……。 多分紗希ちゃんのアイデアだろう。
デザイナーがそう言うの好きな紗希ちゃんじゃあ改善は見込めないだろう。
「男子のはこっち」
「お、どれどれ」
夕ちゃんが覗き込んでくる。 男子の方は逆に普通っぽい衣装だ。 タキシードを改変したようなデザインだね。 一応動きやすいような素材を使って作るようだよ。
西條グループが仕立てるっていうんだから凄いのが出来そうではあるよね。
「ふむ、良いんじゃねぇか? さすがデザイナー志望の紗希ちゃんだな」
「私も関わってるよぅ」
「おう、そうだな」
希望ちゃんは「ふんす」と、口でわざわざ言いながらご飯をパクパクと食べている。
「小道具のお仕事はどうなるの?」
「衣装は奈央ちゃんが何とかしてくれるとして、飾りとかマイクやライトみたいなのを借りたりしないといけないんだよ」
「あぁ、なるほどね。 どうせ練習に参加できないし、私も手伝うよ」
「はぅ! ありがとう!」
「あはは、大袈裟だよ
「俺も手伝うぜ。 必要なものあったら言ってくれ。 色々当たってみてやるよ」
「頼りにしてるよぅ」
私も夕ちゃんも、希望ちゃんには甘々なのであった。
夕食後はちょっとでも受験勉強をしようと、3人でリビングに集まって参考書を開く。
この月ノ木祭までの期間、勉強もしつつライブの練習や準備もしないといけない。 大変な時期である。
「ぐー……ぐー……」
「うわわ、夕ちゃん本開いたまま寝ちゃってる」
「はぅ」
「ぐー……」
このまま寝続けちゃうと風邪ひいちゃうし、起こして寝室へ行くように言わなきゃねぇ。
希望ちゃんにお願いして夕ちゃんを起こすことに。
「夕也くん起きてー。 風邪ひいちゃうよぅ」
「んあ……おうふ。 わりぃ、もう寝るわ」
「うん。 お休み夕ちゃん」
「おう……」
フラフラと立ち上がり寝室へと向かうのを、希望ちゃんが心配そうに見つめる。 階段から落ちたりしそうだもんね。
「ついて行ってあげた方が良いかも?」
「だよね。 ちょっと行ってくるよぅ」
「お願いね」
この足じゃ話達しの方が足手まといになるもんね。
夕ちゃんを寝室まで見送って戻ってきた希望ちゃんと少し勉強した後、明日の為に早目に眠りにつくことにした。
最後の月ノ木祭、いいものにしたいね。
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