第472話 3年目の月ノ木祭何する?

 ☆亜美視点☆


 宏ちゃんの就職試験も終わったので私達も一安心……とはいかず、まだ内定かどうかはわからない。

 それに私達の受験勉強はまだ続くのである。


 しかーし、それは置いといて……。


「それではLHRを始めます。 今日は月ノ木祭の出し物を決めます」


 委員長が教壇に立ってLHR仕切っている。 そう、今日は来月に迫った月ノ木祭での出し物を決めるのだ。


「3-Aとしては何を出しましょうか? 何か案はありますか?」


 と、委員長が案を募る。 3年目、最後の月ノ木祭だ。 思い出になるものが良いねぇ。


「はい!」


 と、元気よく手を上げたのは紗希ちゃん。 どんな案が飛び出すのだろうか。


「やっぱうちのクラスは男女のレベル高いのでホスト&ホステスクラブを推します!」

「却下です」

「即却下?!」


 当たり前だよ紗希ちゃん……。 公序良俗に反する出し物は当然却下されるよ。


「紗希、貴女は黙ってなさい……」


 奈央ちゃんが呆れたように言いながら手を上げる。 どうやら何か案があるようだ。

 委員長が奈央ちゃんを当てる。


「カジノをやりますわよ!」

「却下です」

「即却下ですの?!」


 クラブと大して変わらないよ奈央ちゃん……。 お金賭ける分もっと悪いよそれ。

 うーん、しかし何が良いかなぁ? と、考えていると今度は奈々ちゃんが手を上げる。

 良い案が出れば良いけど。


「やっぱここは私のソロライブを」

「却下です」

「あ、やっぱり?」

「何でソロなのよー! だったら皆でライブすればよくない?」

「おーそれいいなー!」

「ライブに1票!」

「店番しなくて良いしな!」


 と、奈々ちゃんが出した案に対しては反対だが、皆でライブするのはアリだという意見が飛び交った。

 午前に男子、午後から女子という感じに分けて体育館を借りてやるのはどうだろうという意見が出たところで、委員長が黒板にライブと書き足す。


「ま、ソロじゃないのは残念だけどこれはこれで」


 と、奈々ちゃんもこれで納得するらしい。 もう皆はライブをする前提で話を進めている。

 他の案は出なさそうなのでこれで決まりそうである。

 ライブって練習時間とか結構要ると思うんだけど、皆受験勉強は良いんだろうか?


「亜美は足ケガしてて練習とかできないよな?」

「私は別に裏方でもいいけど」

「ダメでしょー。 清水さんがいないとー」

「えぇ……」


 ケガしてるから歌の練習は出来てもダンスの練習とかは出来ないんだけどなぁ……。

 下手をしたら当日でも完治してない可能性もある。

 どうしたものか。


「あんたなら私達の連取観てるだけでフリとか覚えるでしょ」

「また人を化け物扱いするー」

「してないしてない」


 まあどうでもいいけどさぁ……。


「清水さんの事は皆で何かいい方法を考えるとして、出し物はライブで良いですか?」

「OK!」

「楽しみねー!」


 と、3―Aとしての出し物はライブという事に決定した。 次に誰がどういう役割にするかという事を決めるわけだけど……。


「まずはセンターだけど……」

「はいー!」


 私は手を上げる。 勿論私が立候補する為ではない。


「ここはやっぱり歌が上手い奈々ちゃんがセンターで良いと思います!」


 奈々ちゃんを推薦する為である。 奈々ちゃんの歌唱力は、3年生の皆なら知っているはず。

 去年私と2人でやったライブで、綺麗な歌声を披露したもんね。 ダンスだって上手いし美人だしセンターにふさわしい人材だ。

 それには皆も賛成の様子で、反対意見は無かった。


「じゃあセンターは藍沢さんね。 男子は?」

「やっぱり佐々木君でしょー」

「俺かー?」


 高身長のイケメン男子である宏ちゃんに白羽の矢が立つ。 私としても宏ちゃんをオススメしたい。

 歌とかダンスはどうか知らないけど……。


「んじゃ、女子はセンター藍沢さん、男子は佐々木君で」


 と、あっさりと決まってしまった。 センターなんて奪い合いになると思ったんだけどねぇ。


「じゃあ次はメンバー決めね」


 という事で、女子は女子、男子は男子で集まってライブメンバー決めを開始。

 女子の2人目はすでに私に決まっているとの事。 逃げられないのね……。


「まずは何人ぐらいで舞台に立つかよね?」

「そんな広くないし5人ぐらいが妥当かしらねー」

「そうね。 じゃあ5人でいきましょ。 メンバーはどうする? やりたい人、もしくは推薦ある人?」

「はいはーい! 私舞台に立ちたいー!」


 と、ムードメーカーの紗希ちゃんが元気よく立候補する。 美人だし身長高いし、奈々ちゃん程じゃないにしろ歌も上手い。 他に立候補もいないしすんなり3人目が決まる。


「あと2人」

「奈央ー、あんたもやりなさいよー」

「うぇぇ? わ、私は裏方で良いですわよ?」

「奈央ちゃんもやろう!」


 私も紗希ちゃんに便乗して奈央ちゃんを道連れにする。 他に候補者もいないという事で奈央ちゃんも仕方なく受け入れることにしたらしく「わかりましたー」と言うのだった。

 あと1人かぁ……。


「希望なんてどう?」

「はぅぅっ?! 無理無理! 無理だよぅ!」


 奈々ちゃんが希望ちゃんに話を振ると、希望ちゃんは大きく首を横に振って拒否する。

 さすがに希望ちゃんにはハードルが高すぎると思う。

 ここは私からも勘弁してあげて欲しいと助け舟を出してあげる。

 希望ちゃんは裏方で頑張ってもらおう。


「んじゃあ、後は誰が良いかしら?」

「別に5人集まらないなら4人でも良いんじゃない?」

「いやー、バランスが悪いでしょー?」

「でも候補も出ないし……」

「じゃあ、くじで決めましょう」

「はぅっ! わ、私は省いて……」

「ダメです。 恨みっこなし」

「はぅ……」


 希望ちゃん、頑張れ。

 委員長がくじを人数分作って、その1つに〇印を付け箱に入れる。

 順番にくじを引き一斉にくじを開く。

 さてさて希望ちゃんは?


「ふぅ……」

「よかったねぇ」

「うぎゃー!」


 希望ちゃんがセーフだったのを確認した瞬間、大声を上げる人が。


「お、遥おめでとー」


 どうやら遥ちゃんが引き当ててしまったらしい。 これで女子のメンバーは奈々ちゃん、紗希ちゃん、奈央ちゃん、遥ちゃん、私となった。

 あれ? 結局いつものメンバーだね。


「よし、メンバー決まったし曲とか裏方決めていきましょう」


 その後もライブに向けて色々決めていき、今日の授業は終了した。



 ◆◇◆◇◆◇



 夕飯も食べ終えて現在お風呂に入っている。 足にはビニール袋を二重にして濡れないようにしている。

 風呂場はあまり広くないけど、何かあるといけないからということで希望ちゃんが毎日一緒に入ってくれている。


「ライブ頑張ってね」

「足ケガしてるのに皆無茶言う言うよねぇ……」

「あはは……変わって上げられれば良いんだけど私じゃあ無理だから」

「泡吹いて倒れちゃうよね」

「うん……足、早く治ると良いね」

「そだね。 ちょっとでもダンスの練習したいからね」


 やると決まったからには良いライブにしたいし、そのためには練習もしたい。

 何とかならないものだろうか。

 これは受験勉強は少しお預けになりそうかな?

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