第430話 ストレス発散
☆夕也視点☆
さてさて、俺達は日々の受験勉強による疲れやストレスを発散する為に、1日休みにして遊びに来ている。
カラオケで歌いまくり、昼飯を食べた俺達は次なる遊び場へと移動している。
次の遊び場所はゲームセンター。
市内にはそこそこ大きなゲームセンターがあるのだ。
「到着ー。 久しぶりだなー、ここ来るのー!」
と、ゲーム大好き女子の麻美ちゃんがはしゃぐ。
「んじゃ入りましょ」
9人でゾロゾロと入店していく。
色々なゲームの音が鳴り響く店内。 慣れない人間には少々うるさいかもしれない。
「んじゃ、自由行動にする?」
奈々美が提案するも、今日は皆で行動しようという事になった。
「よーし、私あのクレーンゲームに挑戦するー」
「カラオケでの失態を取り返しなさいよ?」
麻美ちゃんが挑戦しようとすると、奈々美が横から口を出す。
酷い歌唱力だったからな。
「夕也兄ぃは褒めてくれたし! ね?」
「お、おう」
と、甘いところを見せると、周りの皆が溜息をつくのだった。
「見ててねー!」
と、麻美ちゃんが自信満々にお金を投入してアームを操作する。
「ねぇ、ちょっとズレてない?」
紗希ちゃんの言う通り、アームは狙いの景品からズレているように見え、実際アームが降りていくと、見当違いな場所を掴んでいる。
当然、景品は持ち上がらないのだが。
「お?」
「何か良い感じに景品がズレたぞ?」
「でもシュートに引っかかってるわね」
「ふふふー! てい!」
麻美ちゃんは更にお金を投入し、先程ズラした景品を狙う。 しかし、今回もかなりズレた場所にアームが降りていく。
「おお?」
降りてきたアームが景品の頭を押し込み、シュート側へと傾けていく。
そして最後には、頭の重みとアームの押し込みにより、シュート内へと転がり落ちてしまった。
「凄ーい! 麻美やるじゃん!」
「狙ってやったのかしら?」
「もちろん! 掴んで運ぶだけが攻略法じゃないだよ」
と、自慢げに語る麻美ちゃん。
やはり、こういう事は得意らしい。
取った景品のぬいぐるみを抱きかかえながら、ゲームセンター内をうろつくのであった。
「あ、パンチングマシンだわ。 ちょっとやってみようかしら」
今度は奈々美がパンチングマシンをやるようだ。
「壊すなよ」
「か弱い女の子が殴ったぐらいで壊れるわけないじゃない」
宏太は「どうだかなぁ」とか言いながら、腕を組んで様子を見ている。
奈々美はグローブをはめて、何度か練習するかのように素振りを始める。
「何か凄そうなんですけど?」
「お、おう……」
とんでもないハンドスピードを見せる奈々美を見て、俺達は固唾を飲む。
「よし。 本日のトップスコア133、過去最高スコアが168ねぇ」
「高いのかよく分からないな」
遥ちゃんが言う。
奈々美は「やってみりゃわかるわよ」と言い、軽く腰を落とすと、大きくバックスイングを取り腰の動きや爪先の回転などを加えた右ストレートを振り抜いた。
バコォォン!
「ひぇっ?!」
「何かヤバい落としたわよ?」
「お姉ちゃん何点?」
「……これ壊れてるんじゃないの?」
スコアを見てみると888となっている。
「888はヤバいだろ」
「800もあるわけないでしょ?! 壊れてんのよ!」
と、揉めていると店員さんがやってくる。
「あー……お客様、この機械は255までしか測れないんですよ」
「じゃあ、この888は?」
奈央ちゃんが訊ねると店員さんは言った。
「……255以上のスコアを出すと888と表示されるんです。 つまり、255以上です」
「俺、奈々美怒らせるのやめよ」
宏太は真顔でそう言うのだった。
俺も声には出さなかったが、同じことを考えたのは言うまでもない。
奈々美は未だに機械がおかしいと言い張っているが、友人達は奈々美のパンチがおかしいのだと思うのであった。
パンチングマシンから離れた俺達は、次にエアホッケーをする事に。
紗希ちゃんが遥ちゃんと組み、麻美ちゃん、渚ちゃんペアと対戦。
俺達は観戦である。
「おりゃー!」
「このっ!」
試合は中々に白熱していたが、僅差で先輩チームである紗希ちゃん遥ちゃんペアが勝利。
見ていた俺達もやりたくなり、その後はトーナメント方式でエアホッケー大会を行うのであった。
◆◇◆◇◆◇
「いやー、なんだかんだ言って体動かすのが一番ストレス発散するなー」
とは、遥ちゃんの言葉。
体育会系女子らしい発言だ。
現在は、女子達がプリクラを撮って遊んでいる。
好きだなぁ、こういうの。
「ねーねー夕也兄ぃ! 私と一緒に撮ろー!」
と、麻美ちゃんが一目散に駆け寄って来た。
それを見た紗希ちゃんが「あ! ずるいぞ麻美ー!」と、これまた駆け寄って来る。
亜美がいたら、またジト目で睨まれていただろうな。
「順番だ順番」
「やったー!」
「さっすが今井君!」
2人は何故か大喜びする。 麻美ちゃんはまだわかるが、紗希ちゃんは一体何なんだ?
柏原君可哀想だぞ。
「あの、私もええですか?」
小さな声で横からそう訊いてくるのは渚ちゃん。
この子もよくわからないなぁ。
「おう、良いぞー」
「あ、ありがとうございます」
頭を下げて礼を言われる。 そんな大層な事ではないと思うのだが……。
という事で、順番にプリクラを撮る事になったわけだ。
最初は麻美ちゃんである。
「よーし! 撮るよー! 抱きつきー!」
「のわっ?!」
不意打ちで麻美ちゃんに抱きつかれた瞬間に、撮影される。
「やった! ありがとう夕也兄ぃ!」
何やらそれで満足したらしいので良しとするか。
さらに紗希ちゃんや渚ちゃんとも撮り、プリクラ機から離れる。
その後もあれこれと色々なゲームで遊び、気が付けばあっという間に時間は過ぎていた。
15時頃にはゲームセンターを出て、市内をショッピングしながらブラつく。
「遥、こういう服買いなさいよ」
「に、似合わないだろ?」
「彼氏に可愛いとこ見せたくないわけ?」
「いやいや! 神山さんはあんまりそういうオシャレとか気にしないし」
「あーわかる。 そんな感じする」
服を選びながら、遥ちゃんの彼氏さんの話題で盛り上がる女子達。
たしか大学生の彼氏が出来たんだったか?
「でもまあ、一回着てみなさいよ」
「ほらほら」
「おい! ちょっと!」
奈央ちゃんと紗希ちゃんに引き摺られて、試着室の方へと移動していく。
「蒼井先輩、普通に美人やのに勿体ないですね」
「そうよね。 あれでだいぶ改造したんだけど」
と、奈々美が言う。
急にイメチェンしたりしたもんなぁ。 本人も最近は慣れたらしいが、まだ可愛らしい服とかは抵抗があるようだ。
「さて、私も何か試着しようかしらね」
奈々美が「うーむ」と唸りながら服を選んでいる中、麻美ちゃんは麻美ちゃんで渚ちゃんと服を選び始める。
こうなると男性陣3人は暇を持て余す。
「女子はこうなると長いんだよな」
「まあ、仕方ないだろ」
「ですね」
結局30分近くは女性陣の着替えショーに付き合う事になるのだった。
時刻は16時。 早ければそろそろ亜美達が東北から帰って来る時間帯だが、連絡は今のところ無し。
東京に着いたら連絡してこいとメールを入れると、すぐさま「らじゃだよ」と返信があった。
「皆で亜美と希望を迎えに行きますか!」
奈々美がそう言うと「おー!」と皆が応える。
というわけで、本日ラストは亜美達と合流して、喫茶店でくつろぐというプランになった。
帰って来た亜美と希望は、集団の出迎えに驚いた様な表情を見せたが、すぐに笑顔を見せて「ただいま」と走り寄って来るのであった。
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