第414話 次は球技大会
☆亜美視点☆
6月のイベントは体育祭だけではない。
何と球技大会もあるのです。 今年はドッジボールとサッカーに決まった。
女子の大半はドッジボールへ行ったよ。 希望ちゃんと奈央ちゃんと紗希ちゃんはドッジボールへ、私、夕ちゃん、宏ちゃん、遥ちゃん、奈々ちゃんはサッカーへと参加する。
これが終わるとあとは月ノ木祭までは受験勉強受験勉強。
インターハイはあるけど。
「こんなんで受験勉強進むのか?」
夕ちゃんはサッカーのコートに立ちながらそう呟いた。
「ちゃんと家ではやってるでしょ?」
お風呂の後、希望ちゃんも交えて3人で少しずつやっているのだ。
部活を引退すればそれなりに時間は増えるしなんとかなるはず。
「まぁ、なんとかしなきゃならんか」
「なるでしょ。 私と成績変わんないんだし、同じ七星だし」
「なんでお前はそんな自信満々なんだ……」
奈々ちゃんが隣にやって来て、話に混ざってきた。
でも奈々ちゃんの言う通りで、2人なら十分合格できるレベルだと思う。
「奈々ちゃんぐらい前向きで良いよ夕ちゃん」
「お、おう」
「んなことより、今は球技大会楽しもうぜ」
就職組の宏ちゃんは受験勉強よりも就職試験対策に重点を置き始めている、
ペットショップの就職試験を受けることも決めたらしく、前向きに頑張っているようだ。
「サッカーかーやるぞー」
「遥ちゃんはサッカーやった事あるの?」
「まあ、多少はね」
私は初サッカーだし、男子に任せてディフェンスでもやってようかなぁ?
「奈々ちゃんはポジションどこ行くの?」
「適当にディフェンダーかしらね」
「一緒だ。 駄弁ろう」
「いや、真面目にやれよ……」
夕ちゃんにダメ出しされてしまいましたとさ。
「サッカーよくわかんないし……」
「何でドッジボールいかなかったんだ?」
「サッカーの方が動かなくて良さそうだったから」
最初からキーパーの前でじっとしてるつもりだったのである。
でも、夕ちゃんに怒られたしちょっとは真面目にやろうかな。
「じゃあ、俺は攻めるから」
「うん、一杯点取ってきてね」
「まあ、やるだけやるさ」
前線へ上がっていく夕ちゃんに手を振って、試合開始を待つ。
試合時間30分で、それで決まらない場合はPK戦で決めるようだ。
遥ちゃんも前かー。 駄弁りたかったなぁ。
あの彼とは上手くいってるんだろうか?
「始まったみたいよ」
「本当だねぇ」
ボールは相手チームが持っているようで、パスを上手く回しつつ攻め上がってくる……。
「こっちまで来たわね」
「来たねぇ」
なんてのんびりしてたら、また夕ちゃんに何か言われちゃうよ。
ということでわからないなりにボールを奪いに行く。
「げ、清水さん?!」
私が近寄って行くと、ボールを持った生徒が声を上げる。
もしかしたら、私がサッカーも出来ちゃうと思い込んでいるのかもしれない。
好都合だ。 なんかそれっぽい動きをして足止めをするよ。
「てやや!」
足をボールに伸ばすも、凄く屁っ放り腰になる。 素人丸出しだった。
すぐにバレてしまい、あっさりとドリブルで抜かれてしまう。
「無理だよぉ」
「あははは! 亜美ダサ!」
「奈々ちゃんは出来るの?」
「出来るわけないでしょ? やったことないもの」
「お前らなぁ……」
戻ってきた夕ちゃんが、呆れたように溜め息をつく。
「はあ……しょうがない。 俺も後衛やるか」
「やった! 夕ちゃんと一緒だ!」
「駄弁るために下がるんじゃないぞ?」
「わ、わかってるもん」
夕ちゃんは信じられないというような目で私の事を見るのだった。
試合再開で、今度は宏ちゃんと遥ちゃんが攻め上がっている。
「おー! いけー遥ちゃーん!」
スポーツ全般が大好きな遥ちゃんは、サッカーも様になっている。 宏ちゃんとパスを回しながら、どんどん敵陣に切り込んでいく。
「ふむふむ、なるほど。 ディフェンスはああやって動くんだね」
ついでに相手ディフェンスの動きを観察し、同時にイメージトレーニングをする。
「亜美がまたなんか人間離れしたことしようとしてるわね……」
「人間でーす」
まったく、何回言えばわかってもらえるんだろうか?
とかやってるうちに、宏ちゃんがゴールを決めていた。
「おお! ナイス宏ちゃん! かっこよかったねぇ、奈々ちゃん!」
「よ、よそ見して見てなかったわよ」
うーん、照れ隠しだねぇ。 可愛いんだから。
「おーい、敵さん攻めてきたぞー」
「え、もう?」
たしかにもう攻め上がってきている。
「よーし! さっき見て覚えた事をやってみよ」
私はボールを持った生徒へと走っていき、ディフェンスを始める。
「清水さんか。 初心者にはさすがに負けないんだ。 ごめんよ」
「初心者だったのはさっきまでだよ。 てや!」
相手がボールを蹴り出す一瞬の隙を突いてボールを奪う。
「うげっ?!」
「遥ちゃんー! パース!」
そのまま遥ちゃんにボールをパスして、お役目完了。
持ち場に戻っていく。
「やれば出来るじゃないか」
「まぁね」
ちょっと威張ってみたり。
奈々ちゃんは隣で「やっぱり人間離れしてる」と小さく呟いていた。
もうツッコむのも無駄な気がしてきたよ。
「にしても遥は上手いわね」
「そうだな。 さすがアスリートって感じだな」
「んー、去年ぐらいからは髪も伸ばしたりちょっとオシャレも覚えて、アスリートっぽさはずいぶん抜けたけどねぇ」
「まぁたしかにね。 やっぱ男が女を変えるのね」
変えちゃったのは男の人じゃなくて多分私達だと思うんだけど……。
「おお、宏ちゃんがまたゴール決めたよ! 凄い凄い」
「こうなってくると後ろは暇だな」
夕ちゃんは、腕組みをしながら首をコキコキと鳴らして欠伸している。
「駄弁ろう!」
「お前は最初からほとんど駄弁ってるだろうが」
それが目的でわざわざサッカーを選んで、しかも後衛のポジションについているんだもん。
「あ、またまた宏ちゃんが決めた」
これはハットトリックってやつかな? 宏ちゃんもなんだかんだ言ってスポーツ万能だね。
身長は高いしかっこいいし、いい男だよ。
「かっこいいねぇ」
「まぁ、かっこいいんじゃないの? 知らないけど」
「奈々ちゃんは素直じゃないなぁ。 そこがまた可愛いんだけど」
「やかましー」
こつん!
「痛ーい!」
照れ隠しをする奈々ちゃんのゲンコツが私の頭を襲う。 多分相当手加減してるんだろうけどそれでもこの痛みである。 ちょっとでも力を入れてコツンされてたら、私の頭の形変わるんじゃないかな?
結局私達はろくに試合に参加しないままサッカーは次の試合で負けてしまい終わった。
楽ちん楽ちん。
「そういえばドッジはまだ勝ち残ってるらしいわよ?」
「おお、やるな。 んじゃ応援行くか」
「そだねぇ。 行こう行こう」
「私達の分も勝ってもらわんとな」
「まぁ、サッカーは皆やる気なさそうだったしな」
「あはは、やったことないんだもん」
と、皆で駄弁りながらドッジボールをやっている体育館へ移動するのであった。
希望ちゃん頑張ってるかな?
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