第415話 ドッジボールサイド

 ☆希望視点☆


 こちらは球技大会ドッジボールサイド。

 なんやかんやで決勝戦まで勝ち残っている我らが3年A組。

 なんと言っても奈央ちゃんが凄い。

 1人で相手チームを壊滅に追い込んだりしていて、もはやラスボスだ。

 1人チームでも優勝しちゃいそうだよぅ。


「希望ちゃん、やっほー」

「亜美ちゃん。 サッカー終わったの?」


 サッカー組の皆が、体育館へとやってきた。

 時間的に随分早いので、多分負けたんだね。

 亜美ちゃん、最初からあまりやる気無さそうだったもんね。

 

「2回戦で負けたわよ。 こっちは?」

「次決勝戦ですわよー」


 ラスボスの奈央ちゃん登場だ。

 隣には紗希ちゃんも立っている。 紗希ちゃんも大活躍してるよぅ。

 私? 私はまあ……お察しして下さい。


「さすがだなぁ。 サッカーは亜美も奈々美もやる気0でなぁ」

「ドッジボールにこればよかったのにー」


 紗希ちゃんがそう言うと亜美ちゃんは「楽がしたかったから」と、正直に返すのだった。


「ドッジボールは頑張れよ」

「まあ、奈央がいれば余裕だろうけどな。 小学生の頃は撃墜女王と呼ばれるドッジボールの鬼だったもんな」

「む、昔の話はやめて下さい」


 げ、撃墜女王……ドッジボールの鬼……なるほど、さっきまでの無双っぷりも納得だよぅ。


「さすが奈央ちゃんだねぇ」

「亜美ちゃん!」

「あぅ?」


 奈央ちゃんが亜美ちゃんに声を掛けたかと思うと、ものすごい勢いで助走しながらボールを投げつけた。


「はぅっ?! 亜美ちゃん、危ないよぅっ!」

「ほっ!」


 パシッ!


 奈央ちゃんの豪速球をいとも簡単にキャッチして見せる亜美ちゃん。

 奈央ちゃんはそれを見て満足そうに「ふふふ、さすが亜美ちゃんですわね」と微笑みながら言う。

 もう何が何だかわかんないよ。


「はぇー、あの奈央のショットを軽くキャッチするとはさすがだなー亜美ちゃん」

「私でもたまに零すのにー」


 私の周りの女子は皆化け物です。


「今から決勝戦を始めます! 3年A組と2年A組はコートに入って下さい」

「うわわ、相手は2年A組?」

「そうだよぅ」


 並みいる3年生の先輩達を倒して勝ち上がって来たのは、麻美ちゃんと渚ちゃんのいる2年A組だ。

 その2人がまた大活躍しているのだ。

 私の周りの後輩も化け物です。


「良く勝ち上がって来たましたわねー小童」

「いや、西條先輩に小童言われても……」

「むきーっ」


 何だか奈央ちゃんが後輩の渚ちゃんにバカにされているみたいだよ。


「先輩達ー! 今日は勝たせてもらうよー!」

「ふはははー! 私達に勝とうなんて10年早いわ!」


 白熱した試合になりそうだよぅ。

 さて、今回のルールは外野3名固定で、内野はヒットされたら退場して復活は無し。 どちらかの内野が0になるまで続くよ。

 最初のボールはジャンプボールで決める。

 私達のジャンパーは紗希ちゃん。


「神崎先輩か……こらボール取られへんなぁ」

「わははは! 諦めたまへ!」


 紗希ちゃんと渚ちゃんの2人がコート中央に立ち、ジャンプボールで試合開始。


「さささーっ」


 私はすぐさまコートの隅っこで、他の人に隠れる。 狙われたくないし、ボール当たったら痛いからね。


「希望ちゃんー! 何やってるのよー!」


 亜美ちゃんがそんな私を見て、ちょっと呆れたように言う。

 でも、何と言われようと私は逃げ回るよぅ。


「よーし! いけー奈央!」

「お任せですわ。 まずは邪魔そうな渚辺りから……って、何あれ?」

「はぅ?」


 奈央ちゃんの言葉が気になり相手コートを見ると、渚ちゃんと麻美ちゃんを守るように、他の生徒が防壁を形成している。


「多分、あの2人があのチームの攻撃の要なんでしょー?」

「なるほど……仕方ありませんわね。 壁を一枚ずつ剥がしていきましょ」


 奈央ちゃんは、助走してボールを投げる。

 その小さな身体からは想像も出来ないような豪速球だ。


 パァンッ!


「ぐぁ……」


 誰かは知らないけど、キャッチを試みるも無惨に散ってしまう。

 しかし身を挺してボールを止めた事で、攻撃が2年A組に渡る。


「田中……お前の死は無駄にはしいひんで!」

「なははー、いけー渚ー!」


 今度は渚ちゃんが豪速球を投げ返して来た。

 狙いは隅っこに集まっているドッジボール苦手女子の塊である。

 私も含まれていたけど、いち早く察知して反対側へ逃げたよ。

 渚ちゃんの投げたボールは、ピンボールのように跳ね返り、同時に3人がアウトにされてしまった。 あそこにいたら危なかったよぅ。


「やりますわねぇ。 一気に3人やられたのはかなり痛いですわよ」

「とか何とか言って、結局あんた1人でやっちゃうくせに」

「頑張れ奈央ちゃんっ」


 私は隅っこに引っ込みながら応援する。

 コートの外で応援してくれている亜美ちゃん達は、そんな私を見て溜息をついていた。


 その後の展開は、奈央ちゃんが相手チームの壁を少しずつ減らしながらチャンスを窺う中、渚ちゃんと麻美ちゃんは、うちのチームのドッジボール苦手勢を減らしていく。


「どこかで流れを止めないと、最初の3人同時にやられた分不利になりますわね」

「あんた1人で100人分でしょ?」

「1人は1人ですわよ」


 残りこちらが4人で、相手が7人。

 そして──


「ひゃっ!? あーん、ごめーん!」


 たった今3人になってしまった。

 私、紗希ちゃん、奈央ちゃんの3人で逆転を狙うよぅ。


「はぅっ!」

「はぅーっ!」


 と、意気込んでみたけど、私は戦力外である。 次のターゲットは私という事なんだと思うけど、

私をめがけてどんどんボールが飛んでくる。

 私は自慢の反射神経で避けまくっているけど、全然攻撃のチャンスが回ってこない。


「希望ちゃーん、キャッチキャッチー」


 亜美ちゃんにもそう言われるけど、渚ちゃんのボール凄く速いよぅ。


「はぅぅっ」

「雪村先輩、ええ加減観念してくださいよー!」

「はぅーっ」


 あんなのに当たったら痣出来ちゃうし、痛いだろうし嫌だよ。


「希望ちゃん、バレーボールだと思ってください」

「はぅ?」


 バレーボールだと思う?

 奈央ちゃんの言葉に首を傾げて立ち止まってしまう。


「そこや!」


 その一瞬の隙を突いて、渚ちゃんが私を狙って投げてきた。

 私は咄嗟に腰を落として、両手を下に構える。

 バレーボールだと思う。


「こぅっ!」


 アンダートスの要領で、ボールを上に跳ね上げる。

 高く上がったボールは奈央ちゃんがキャッチしてくれる。

 たしか、当たっちゃってもノーバウンドでキャッチできればセーフだよね。


「うげ」

「うわー、あれありー?」


 私のこのプレーには、渚ちゃんも麻美ちゃんも猛抗議。

 審判に判断をゆだねた結果、ルールから大きく逸脱しているわけではないという事でセーフの判定が出た。


「あ、あんなん反則や」

「あはは! 無理ゲーだねー」


 私にレシーブという武器を与えたが最後、渚ちゃんと麻美ちゃんの攻撃を無効化しつつ奈央ちゃんと紗希ちゃんがどんどん相手を減らしていき……。


「試合終了ー! 優勝は3年A組に決まりましたー!」


 見事に優勝しました。 


「希望ちゃんやればできるじゃん」

「ドッジボールかどうかは怪しかったけど」

「あはは……」


 たしかにドッジボールとしては邪道だったかな?

 とりあえず球技大会も無事終わり、6月のイベントは終了しました。

 残された私達のイベントは、直近のインターハイ、秋の月ノ木祭に受験、そして卒業式だ。

 

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