第410話 姉妹
☆希望視点☆
体育祭3年目、今は借り物競争中で渚ちゃんが近藤先生のカツラ疑惑が確かなものである事を証明したところである。
「私もあんなお題引いたらどうしよぅ……」
借りやすい物を引ければ良いのだけど。
さて、私の順番は回ってきた。
「希望頑張れよー」
「うん。 宏太くんも頑張ってね」
私の後ろに並ぶ宏太くんと、お互いの健闘を祈った後でスタートラインに立つ。
スタート前に、スターターの人からお題の書かれている紙を手渡される。 これをスタートの合図の後で開いてお題を確認するところから始まるのだ。
パンッ!
スタートの合図であるピストルが鳴ったので、紙を開いてお題を確認する。
神様どうか簡単なお題お願いしますぅ。
「……身長180cm以上の人に肩車をしてもらいながらゴール」
身長180cm以上……。 知り合いだと宏太くんと遥ちゃんだけど、宏太くんは次の走者だから大変そうだ……。
遥ちゃんはここからちょっと距離があるから他の走者のお題次第では負けちゃうかもしれない……。
「……宏太くん!」
「おん?」
私は宏太くんにお題の紙を見せて説明する。
「おう肩車だな。 任しとけ」
宏太くんはそう言うと、すぐさま私を肩車して立ち上がる。
「はぅはぅ」
凄く高い視線で周りが見える。 こ、これが高さ3m以上の視界かぁ。
「よし、飛ばすから気を付けろよ」
「うんっ」
言うが早いか、宏太くんは私の足を掴みながら走り出した。
「速い速い! いけーコウタキングオー!」
「馬じゃねぇよ?!」
宏太くんの頭をペシペシ叩きながら走らせて1位でゴールテープを切るのだった。
肩車から降ろしてもらった後は、お礼と共に頭を叩いたことを謝罪するのだった。 つい楽しくなっちゃって……。
「ふぅ……じゃあ俺次の走者だから戻るな」
「うん。 ありがとう。 頑張ってね」
宏太くんは急いでスタート地点へと戻っていくのだった。
その後、宏太くんは生徒用の椅子4個を借りるというお題をクリアしてトップでゴール。
私達Aチームはさらに得点を加算するのだった。
テントへ戻ってきたところで、皆から声をかけられた。
「希望ちゃん、肩車どうだった?」
「何だか全てを見下ろせて気分良かったよぅ!」
「こいつ、テンション上がって人の頭をペシペシ叩いてたぞ」
「あ、謝ったもん……」
「あはは。 それで、結局お題は何だったの?」
「180cm以上の人に肩車だったよぅ。 遥ちゃんと迷ったんだけど、宏太くんの方が近かったから」
「なるほど」
私が借りられるものがお題で本当に助かったよ。
と、皆と話をしていると渚ちゃんも帰ってきた。 カツラを返してきたみたいである。
「あ、渚ちゃんおかえり」
「……近藤先生にこっぴどく怒られました」
「きゃははは! でも最高に面白かったわよ渚」
「うむ。 グッジョブだったぜ渚ちゃん」
「あ、あはは。 実は私もめっちゃ気になっとたんですよあの頭……カツラ疑惑を解明できて満足や」
渚ちゃん、結構無茶する子だったようだ。 私ならお題を見た瞬間にギブアップしてたよぅ。
「にしても、相変わらずぶっ飛んだお題が多かったわね」
「うん。 今回は私が借りられなくて助かったよ」
亜美ちゃんは1年生の時に2回ほど連れていかれてたっけ? 夕也くんにお姫様抱っことかされて恥ずかしがってたね。
「次は綱引きだな」
綱引きは各学年から2人ずつ選抜して各チーム6人で行われる。 私達3-Aからは奈々美ちゃんと夕也くんが参加する。
「奈々美がいれば余裕だな」
「何で私が馬鹿力キャラみたいになってんのよ」
「奈々ちゃんはそういうキャラだよぉおぉおぉおぉ」
亜美ちゃんがそう言うと、奈々ちゃんは亜美ちゃんの頭をグリグリとされている。 口は禍の元ってやつだね。 私は思ってても口には出さないよぅ。
「奈々美、さっさと行くぞ」
「はいはい」
夕也くんと奈々美ちゃんは仲良く並んで綱引きへと向かっていった。
「あぁやって見ると、あの2人もお似合いよねー」
紗希ちゃんが手で望遠鏡を作るような仕草で2人を見ている。 たしかに2人が並んで歩く姿はとても様になっている。 付き合ってるって言われても何も違和感ないよぅ。
「むぅ」
「亜美ちゃん、落ち着いてください」
亜美ちゃんは頬を膨らませてちょっと不機嫌になるのだった。 可愛い。
綱引きの方は、奈々美ちゃんのスーパーパワーでAチームの優勝、またもやAチームの得点が加算される。
「お疲れ2人ともー」
「ふふん、楽勝よ楽勝」
「そりゃおまえの怪力にかかれヴァァァァ?!」
宏太くんは余計な事を言って関節を極められている。 何だかもうワザとやってイチャついてるようにしか見えない。
さて、次の競技は二人三脚。 私は亜美ちゃんと組んで参加予定である。 私達姉妹の阿吽の呼吸を皆に見せるよぅ。
「行こう希望ちゃん」
「うんっ!」
「頑張ってねー!」
「姉妹の絆見せつけてこーい」
私達は血こそ繋がっていないけど、その絆は本当の姉妹にも負けたりしないという自信がある。
それは亜美ちゃんも同じ。
「掛け声要るかな?」
「要らないと思うよぅ」
「んじゃ、お互いのリズムで足出しちゃおう」
「うん」
これで十分だと思う。 足の速さ自体は亜美ちゃんの方が速いけど、そこは亜美ちゃんが私に合わせてくれるはずである。 その辺も打ち合わせをしなくてもきっと自然とやってくれるに違いない。
私達はスタート地点に並び。リボンを受け取るとお互いの足を繋ぐように結ぶ。
「これでよし。 希望ちゃんきつかったりしない?」
「大丈夫だよ」
準備は出来たので後は順番を待つのみである。
さてさて、前のペアは少々苦戦しているようだ。 中には転けているペアも見て取れる。 息が合わないとああいう事になっちゃうのが二人三脚だ。
「順番きたよぉ」
「うん。 頑張ろぅ」
麻美ちゃんが率いるAチーム応援団も応援してくれている。 やる気があふれてくるよぅ。
パンッ!
スタートの合図とともに、お互いの結ばれている方の足を前に出す。 打ち合わせもしていないのに出だしの足並みが揃った事は嬉しい。
後はお互いにテンポを合わせて交互に足を出していくだけである。
「速い速いAチームのペア! まるで1人で走っているようなスムーズな走りだぁ!」
放送席からハイテンションな実況が流れてきている。 ちょっと恥ずかしいよ。
他のペアが苦戦して中々進めない中、私達はノンストップで走り抜ける。
そのままトップでゴールすることが出来たのであった。
「いぇーい!」
「やったねっ!」
亜美ちゃんと勝利のハイタッチを交わして、私達の絆の深さを再確認するのだった。
「私達仲良しだねぇ」
「うんうん」
「仲良しだし、夕ちゃんの事は私に任せてくれていいよぉ」
「それとこれとは別だよぅ」
たとえ仲良しでも譲れないものもあるという事である。
◆◇◆◇◆◇
その後の競技であるパフェ食い競争にも亜美ちゃんは出場。 圧倒的速さでパフェにたどり着いた亜美ちゃんだけど、ゆっくりと味わったせいで3位になっていた。 何てのんびりさんなんだろう……。
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