第401話 ビーチバレー決勝
☆亜美視点☆
沖縄でビーチバレー大会に参加中の私は、奈々ちゃんとペアを組んで順調に勝ち上がり、いよいよ決勝戦までやってきた。
決勝戦の相手は、ここまで余裕を見せて勝ち上がってきた、奈央ちゃん・紗希ちゃんペアである。
やっぱり2人は凄いなぁ。
「おう、亜美も奈々美も頑張ってんなー」
「あ、夕ちゃん。 頑張ってるよー」
「あと一試合あるのよねぇ。 しかも一番疲れそうな相手」
「ふふふー。 いざ勝負ですわよ亜美ちゃん!」
「あ、あはは。 奈央ちゃん元気だねぇ」
奈央ちゃんと紗希ちゃんのペアは、3回戦で地元のビーチバレー部員ペアを、準決勝で遥ちゃん・渚ちゃんペアをそれぞれ倒してきている。
疲れてないのかな?
「決勝は2セット先取だよね?」
希望ちゃんが確認してくる。
そう、決勝戦は21点の3セットマッチだ。
「どっちも頑張れー!」
「応援しますよ!」
麻美ちゃんと渚ちゃんが応援してくれるので、もう少し頑張ろうかな。
「夕ちゃんも応援してね」
「ん? おう。 でも贔屓はしないぞ? どっちも応援するからな」
「うーん……しょうがないかー」
夕ちゃんはこういうとこは厳しい。 ついでに宏ちゃんにも応援を願いしておいたよ。
宏ちゃんもやっぱり贔屓はしないとの事。
ふうむ。 まあいっか。 後は呼び出しを待つのみだね。
「亜美。 作戦ってある?」
「ないよ」
奈々ちゃんが訊いてきたけど、私は即答で返事する。 奈央ちゃん相手には変な作戦を立てて戦っても通用しないだろう。
全力で当たっていくのみだよ。
「わかった。 全力でぶつかりましょ」
奈々ちゃんとの作戦会議を終えて、試合の呼び出しを待つ。 決勝が行われるコートの周りには決勝戦を見ようと大勢のギャラリーが集まってきている。 中には私達が戦ってきたペアの人達もいるようだ。
ここに来て、私達の正体もバレてしまっているようで、サインを頼まれたりする瞬間もちらほらとあって困った。
「これより決勝戦を開始します。 選手の方々はコートへ入ってください」
呼び出しがかかったので立ち上がり、コートへ移動する。 コートの前で奈央ちゃん達と合流。
「亜美ちゃん。 負けないですわよ」
「うん、私もだよ」
勉学、スポーツにおいての私の最大のライバルと言っても良い奈央ちゃんとの真剣勝負。
ワクワクしてきたよ。
「さあ、この決勝戦に残った両ペア! 奇しくも同じ千葉県から旅行にやって来た友人達同士での決勝戦となっているそうです! さらにこの4人、インドアのバレーボール界では現在春夏の全国大会を2年連続連覇中の強豪、月ノ木学園のバレー部レギュラーとのことです。 特にゼッケン10、11、12の3名は昨年の秋の世界大会での活躍も記憶に新しいと思われます」
なんかすごく大袈裟な紹介のされ方をしている。 言っていることは全部真実なんだけど、もう少し普通の説明をしてほしいものである。
周りのギャラリーも「おお、やっぱりかー!」などの反応で盛り上がっている。
「そっちのちっちゃいのとでっかいのー! 私達に勝ったんだから負けんなよー!」
「ちっちゃいって言わないでくださる!?」
奈央ちゃん達と対戦して負けた地元の子達が、奈央ちゃん達を応援している。
「コイントスします。 10番の方、表裏選択お願いします」
「表で」
答えると、主審がコイントスを開始する。
コインの向きは……。
「裏ですね。 12番の方、サーブかコートを選択してください」
奈央ちゃんは砂を少量掴んでから、サラッと落とす。 風の向きを確認しているようだ。
「コートでこっちを選びますわ」
開幕を風上でプレーすることを選んだようである。
私達はサーブ権を貰い風下に立つ。
そして試合開始の笛が鳴る。
「奈々ちゃん、最初から全力だよ」
「わかってるって。 んじゃ、早速行くわよ」
奈々ちゃんのサーブ前のルーティーン、両手でボールにバックスピンを掛けてクルクルと回す動作に入る。
「ふぅ……」
息を吐いてボールをトスする奈々ちゃん。
「っと!」
奈々ちゃんのサーブで試合が始まった。 これといった作戦は立てていないけど、勝つ為にやることは奈々ちゃんも分かっている。 なのでこのサーブは奈央ちゃんを狙っていく。
「なめられたものですわねー」
奈々ちゃんのサーブをしっかりと、拾う奈央ちゃん。 普段は
「奈央ー頼むわよー」
「誰に言ってるのかしら?」
落ちてくるボールの落下点に紗希ちゃんが入り、アンダートスの構えを取る。
この分なら麻美ちゃんの時のようなツーでの攻撃はなさそうだ。
2人1ペアで試合するビーチバレーは、攻撃力の低い選手を狙うのがセオリーだ。 相手チームには強力なアタッカーである紗希ちゃんがいるので、紗希ちゃんにスパイクを打たせないように奈央ちゃんを狙っていく。
「奈央っ!」
紗希ちゃんのアンダートスが上がり、奈央ちゃんがそれに合わせて助走を開始する。 奈央ちゃんも希望ちゃんと同様、ほとんどスパイクを打つことはない。
だけど、奈央ちゃんは天才的センスを持ったプレーヤーだ。 フィジカル面も決して優れた選手ではないのだけど、その小さな体には似つかわしくない、とんでもない能力を秘めていることは私達なら皆が知っている。
「私がブロックに出るよ」
「後ろは任せてちょうだい」
ボールの位置を良く見てブロックに跳ぶ。
奈央ちゃんもその小さな体で高いジャンプを見せている。 やっぱり凄い運動能力だ。 その体でネットの上に手が出せるだけのジャンプを出せるなんて、Sにしておくのがもったいないぐらいだ。
「はっ!」
奈央ちゃんは私のブロックを躱してスパイクを打つ。
「上手い……」
まるで本職の
奈々ちゃんがレシーブに構えているが、その奈々ちゃんの手前でボールが急激に落ちる。
「うぇぇ?!」
そのまま、奈々ちゃんの立つ手前にボールが着弾する。 ドライブ回転がかかっていたようだ。
普段からサーブをドライブ回転で打っているので、それをスパイクに応用したのだろうけど、それにしても凄い回転数だ。 この距離であの落差が出るものなんだろうか。
「ナイス奈央ー。 さっすがねー」
「当然ですわー」
むう、奈央ちゃんに打たせる方針は悪くはないと思うけど、こんなスパイクを隠し持っていたとなるとちょっと厄介だねぇ。
あのドライブスパイクと普通のスパイクを混ぜられると結構惑わされそうだ。
かといって、紗希ちゃんのスパイクはかなり強烈だし……。
「結構難しい試合になりそうね」
「そうだねぇ……ちょっと奈央ちゃんのこと見くびってたよ。 考えを改めないといけないねぇ」
希望ちゃんと言い奈央ちゃんと言い、普段やらないような事なのに平然とやってのけるんだから……一体誰が化け物なんだか……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます