第399話 激突 亜美VS希望
☆亜美視点☆
「てりゃ!」
ピィッ!
「ゲームセット! 25―8 ゼッケン番号10、11ペア!」
「いぇーい」
「どんなもんよ」
私達は沖縄の浜辺で行われているビーチボール大会に参加している。
とりあえずは1試合目を難なく勝利して休憩タイム。
Cコートでは今、遥ちゃんと渚ちゃんのペアが試合をしている。 攻守のバランスが取れた良いペアである。
「ふぅ、試合終わったー」
「何だか感覚が狂うよぅ」
と、1試合目を終えてきたのであろう希望ちゃんと麻美ちゃんがやってきた。 どうやら勝ったみたいだけど、希望ちゃんって攻撃の練習とかあんまりしてないんだよね。
サーブで希望ちゃんを狙えば、あっさり勝てないかなぁ?
「渚ちゃん達も順調そうだね」
「まあ、お相手さん初心者っぽいしねー」
どうやら観光客がエンジョイ目的で参加している感じのようだ。 ただ中には、近隣の学生でビーチバレー部っぽい子達も参加しているのも見受けられる。
そういうペアは強敵になりそうだよ。
「あ、奈央ちゃん達も戻ってきたよぅ」
「ふう、他愛もないですわねー」
「はははー」
どうやらこちらも勝ったらしい。
「そっちの相手は?」
「なんか地元のビーチバレー部員だったみたいだけど、ねじ伏せてやったわ」
「うわわ」
「あら、あそこは強敵かもって思ってたけどもう消えちゃったの?」
「えぇ。 ただあのペアはまだまだみたい。 もう1ペア残ってるのが強そうよー」
なるほど。
本命のペアがまだいるのか。
と話していると、遥ちゃんと渚ちゃんペアも勝ち上がったようだ。
これで全組初戦突破だけど、次の試合は私達のペアと、希望ちゃん麻美ちゃんペアがぶつかるよ。
他のペアはまだ潰し合いにはならないようだ。
「亜美、次の作戦どうする?」
「サーブもスパイクも希望ちゃんを狙うよ」
「うわ、結構ガチで勝ちを狙いにいくのね」
「勝負は勝負だからね」
希望ちゃんを狙う事により、3度目のタッチ──つまりスパイクは希望ちゃんが打つ事になる。 だけど、スパイクの練習なんて普段やらない希望ちゃんの攻撃なら怖くないというわけ。
☆希望視点☆
「って感じで、お姉ちゃん達は希望姉を集中的に狙ってくると思うよ」
「やっぱりそうだよね」
私と麻美ちゃんは、次の試合の展開を予想して対策を考えていた。
私達の予想では、スパイクが苦手な私を狙ってくるだろうと思っている。
私が逆の立場でもそうしているしね。
「そこで! 2つの対策を用意しましたー」
「おおー」
麻美ちゃんの考えた作戦を早速聞いてみる……。
「ごにょごにょ」
「ふむふむ。 なるほど……でも上手くいくかな?」
「わかんない! 何せ相手がお姉ちゃんと亜美姉だからねー。 頑張るしかない」
とにかく、作戦通りにやるだけだよ。
☆亜美視点☆
というわけで、第2試合目がやって来た。
向かいのコートには見知った2人が立っている。
希望ちゃんと麻美ちゃん。 鉄壁の防御力を誇るペアだよ。
私達は風上のコートを選択して、サーブを譲る。
まずは麻美ちゃんのサーブのようだけど、どちらを狙ってくるかな?
「よいしょっ!」
パァン!
威力のあるサーブが、私の守備範囲に飛んでくる。
「私か」
これは中々良い作戦。
まだ砂浜での踏み切りに慣れていないので、高いジャンプは出来ないと呼んでの私狙い。
「正解っ」
とりあえずレセプションして、すぐに助走出来る体勢に入る。
「亜美!」
奈々ちゃんがアンダーハンドでボールを上げたのを見て助走を開始。
「っと!」
跳び上がってボールをスパイクしにいくが、ブロックに麻美ちゃんが跳んでくる。
「うぇーい!」
「っは!」
結局空いているクロスへ打たされた格好になり、あっさりと希望ちゃんに拾われる。
しかし、これはこれで良い。
希望ちゃんが拾ったという事はスパイクするのも希望ちゃんだ。
作戦通りだよ。
麻美ちゃんがアンダーハンドに構えてボールの落下を待っている。
私も奈々ちゃんも、希望ちゃんの動きに注意する。まだ走らないって事はクイックの線はない。
「私がブロッ──」
と、奈々ちゃんに言いかけた時に、目の前で跳ぶ人の影が見えた。
「うぇいっ!」
スパァン!
ピッ!
「え……あ?」
麻美ちゃんにスパイクを決められたようだ。
「や、やられた」
「ツーで来たわね」
裏をかかれた形になってしまった。
あっちはあっちで、私達の作戦に対する対策をしっかり用意していたようだ。
それもこれも、希望ちゃんのレシーブが上手いから可能なツータッチでの攻撃。
「これはこれは……」
予想以上に曲者だよこのペア。
「どうする亜美?」
「んー……でも麻美ちゃんしか打ってこないっていうなら麻美ちゃんだけ止めればいいだけだし、このまま行こうか」
「了解」
これで問題無しのはずである。
試合は引き続き麻美ちゃん。
「ほいっ!」
麻美ちゃんのジャンプサーブが私めがけて飛んでくる。 私狙いは変わらないようだ。
「よっ」
先程と同じようにレセプションして助走の準備をする。
ビーチは2人でやる以上、誰がスパイクを打ってくるか丸わかりになる。 その関係上クイックなどのタイミングを変えた攻撃が効果を発揮しない。 ああいうのはコンビネーションがあってこそなのだ。
「亜美ー」
「おーし!」
助走して跳ぶ。 やっぱり踏ん張りが利きづらくていつも通りに跳べない。
だけど、これでも十分麻美ちゃんの上を抜ける。
「とりゃ!」
「高ーいっ!」
麻美ちゃんの上からスパイクを打ち抜く──が。
「はぅ!」
希望ちゃんの好レシーブで得点を防がれる。
とんでもない反応速度とレシーブ力。 この子から点を取れる他校の生徒も対外凄いよ。
「ナイス希望姉」
「奈々ちゃん、ツー警戒!」
「わかってるわよー」
麻美ちゃんのツーアタックを警戒しつつ、急いで立ち上がった希望ちゃんにも注意する。
もしかしたら希望ちゃんが打ってくるかもしれないからだ。
「希望姉!」
「あら」
麻美ちゃんは、ここで希望ちゃんにトスを上げた。
希望ちゃんのスパイクは今までに見たことがない。 インドアの
希望ちゃんは慣れないながらも助走をして跳び上がる。
「むっ! あれは!?」
「なるほどね」
希望ちゃんは指を握るように突き出して、指の背中側でボールを小突いてきた。
ビーチバレー特有の打ち方、ポーキーだ。 あれなら強力なスパイクを打てなくても簡単に出来る。
ポーキーは思いっ切り打ち付けるわけじゃないので、狙いも付けやすい。
「奈々ちゃん!」
「はいな!」
慌てて走り出しダイビングレシーブで拾う奈々ちゃん。 上手く上げてくれたおかげで私も余裕ができる。
奈々ちゃんが態勢を整えるだけの時間を作るために高いボールを上げる。
「奈々ちゃんお願い!」
「任せなさい!」
奈々ちゃんが助走してスパイクに跳び上がる。
「お返し!」
スパァン!
相変わらずとんでもない威力のスパイクが希望ちゃんに襲い掛かる。
「はぅっ!?」
ボールに何とか触った希望ちゃんだけど、あまりの威力に耐えられず体が後方に仰け反り、ボールも後方に飛んでいく。
「よーしどうよー」
「はぅぅ、凄い威力ぅ」
「お姉ちゃん本気出しすぎー」
奈々ちゃんのパワースパイクを止めるのは、さすがの希望ちゃんでも簡単ではないようである。
「なぁ、このコートの試合やばいぞ」
「マジか?」
ざわざわ……。
何やら私達の試合してるコートにギャラリーが集まってきたようである。
この試合、希望ちゃん達には負けたくないね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます