第398話 ビーチバレー大会

 ☆亜美視点☆


 沖縄3日目──


 今日は朝からビーチへ向かう。 何やらイベントがあるらしい。

 またミスコンとかだったりするのかと思ったけど、ビーチに着いて周囲を見れば、何をやるのかは一目瞭然だった。


「ネットが並んでるわね」


 そう。 私達にも馴染みが深いネットがいくつか並んでいる。

 つまり、今日ここで開かれるイベントというのは……。


「ビーチバレー大会!」


 である。

 なるほどなるほど。


「俺達は見てるだけか……」

「だなぁ」


 男子2人組は参加しないつもりのようだけど、何故か表情は残念がってはいない。

 その理由は……。


「あの青水着の姉ちゃん。 要チェックやで!」

「だなぁ!」


 スケベ丸出しだからである。 男の子って本当に仕方ないなぁ。


「ささ、参加する気のある人は受付に行きますわよ」

「奈々ちゃん、組んで出よう!」

「良いわよ。 小学生のあの日以来ね」


 そうそう、私と奈々ちゃんのバレーボールとの出会いはビーチバレーだった。

 あの時はボロ負けだったっけ。


「紗希、行くわよ」

「あいよー」

「麻美ちゃん、一緒にやる?」

「おおー! 希望姉と組むー!」

「ほなら蒼井先輩、私と組みましょう」

「OK」


 と、続々とペアに分かれていく。

 それぞれペアで受付をを済ませてゼッケンを貰い、更衣室で水着に着替える。

 何と、奈央ちゃんが今日の為に用意してくれていた水着が4セット。

 それぞれ同じデザインのものが2着ずつ8人分だ。 チームの人同士で同じのを着ろって事なんだろうけど……。


「何で私達が誰とペア組むか先読みして用意してあるのよ……」

「ふふん」

「凄すぎるでしょあんた」


 奈央ちゃんは、誰と誰がペアを組むかを予測していたらしい。 私と奈々ちゃんに渡された同じデザインの水着は、私達にぴったりのサイズであった。

 まぁ、それはこの際どうでもいいか……ササッと着替えてゼッケンを上から提げる。


「おお、動きやすいねぇこれ」

「本当ね」

「ふふふふんー、ビーチバレーやるからには運動性の高い作りにしなきゃね」

「あははー、奈央本気になりすぎ~」

「あったりまえでしょー! 打倒亜美ちゃんチームよ紗希!」

「いやー、無理でしょー」

「やる前から諦めるなー!」


 奈央ちゃんと紗希ちゃんは、着替えながらも「ギャーギャー」と騒いでいる。

 さてさて、ビーチバレーって言うのは私達のやってるインドアでやる6人制バレーボールとは色々と違うところがある。

 まず、2人ペアで試合をする事。 コートはインドアより少し小さい程度だけど、2人で守ることは可能。

 そして屋外でやるので、風や太陽光の影響を受けたりする。 風上や太陽の方角に立つと有利になったりするらしい。

 あと、細かいルールだけど、オーバーハンドトスがドリブル(ダブルコンタクト)を取られやすくなっているということが挙げられる。

 ドリブル(ダブルコンタクト)って言うのは1人が連続してボールに触る反則行為のことだけど、ビーチはその基準がとても厳しいらしいのである。 なので自信のない人はアンダートスを上げるのが基本だ。

 さらにインドアと大きく違うのがブロックの扱い。 インドアでのブロックのワンタッチはそのままワンタッチとして数えないが、ビーチではブロックでのタッチもワンタッチと数えられるので注意が必要だ。

 さらにさらに、インドアで使われるフェイントスパイクは禁止。 その代わりに指の背の部分で突くように打つポーキーという打ち方がOKとなっている。

 今大会は決勝戦以外は25点マッチの1セット先取制、決勝戦のみ21点3セットマッチで2セット先取制となるようだ。

 以上、清水亜美のビーチバレールールブックのコーナーでした。


「なるほどー」

「インドアとは細かいとこ違うんですねぇ」

「インドアに慣れてる人は、ビーチでは少し苦戦すると聞くわ。 他の参加者がどんな方達かは知りませんが、皆さん健闘を祈ります」


 よし、ルール確認もして着替えも終わったし、ビーチへ出るよ。



 ◆◇◆◇◆◇



 ということで、私達月ノ木学園バレー部一同は、ビーチバレー大会に参加する為にビーチへと出てきた。

 大会参加者は集合を掛けられて、簡単にルール等の説明を受けた後に、呼び出された順にコートに入って試合をすることに。

 私達は早速Bコートで試合だ。


「奈々ちゃん行くよ。 小学生の時のリベンジ」

「えぇ。 あの時とは違うわよ」


 コートに入って軽くストレッチをして体をほぐす。 お相手さんのチームも観光客さんのようだ。

 思い出参加って感じだろうか? いくら私達も初体験とはいえ、一応インドアの春高優勝者。

 悪い気がするけど……。


「お手柔らかにお願いしまーす」

「は、はーい」


 どうやら向こうさんも、私達が何かしら経験者であろうと察したのであろう、そう声を掛けてきた。

 じゃあ、手加減しながらやりますか。


「コートは風下かぁ」

「まぁ、まずはやってみましょ」


 という事で、私達のサーブから。


「奈々ちゃんいっちゃってー」

「はいよー!」


 奈々ちゃんは、インドアの時のような強烈なサーブは打たずに、ゆっくりとしたサーブを打つ。

 相手に配慮したのか、はたまた慣れないビーチだから警戒したのか。


「はい!」


 おお、ただの観光客かと思ったけど、結構形になったレシーブを上げている。 そしてもう一人の人が更にアンダーでトスを上げる。 どうやら、ビーチの基本を知っているようだね。


「奈々ちゃん私がブロック行くからフォローお願い」

「了解」


 私はネット際へ出てタイミングを計る。 むう、砂浜だと微妙に足の踏ん張りが利かない。

 硬い床を蹴って跳ぶのとは全然違うよ。


「とりゃ」


 とにかく跳んでみる。 やっぱりインドアの時ほどは高く跳べなかったけど、それでも十分な高さは出た。


「えぇぇ?!」


 予想以上に跳んだ私にお相手さんも驚きの声を上げて、スパイクのインパクトがずれる。

 へなへなと飛んできたボールを、奈々ちゃんがアンダーでしっかりと上げる。

 いつもは攻撃的OPオポジットとしてプレーしてる奈々ちゃんは、相手のサーブやスパイクに対してレシーブすることはほとんどない。

 だけど練習していないというわけではないので、これぐらいのボールなら余裕だ。

 んで、私はブロックに触ってないから、私が触ってもツータッチ目。 私が奈々ちゃんにアンダーハンドでトスを上げる。


「はい奈々ちゃん!」

「はいはいっ!」


 奈々ちゃんは軽く助走して跳び上がる。


「跳びにくいわねぇ」


 そう言いながら大きく腕を振る奈々ちゃん。 とはいえ、いつもの強烈なのじゃなくて軽めのスパイク。 バレーボール素人さんにあんなの打つのは可哀想だからねぇ。


「す、凄い……」


 そんな軽めのスパイクでも、やっぱり素人目にはすごく見えてしまうものなのだろう。  お相手さんには悪いけど、1試合目は軽く勝たせてもらうとしよう。


「これ、案外きついわね」


 奈々ちゃんは足で砂浜を踏みしめながら言う。 砂浜でのプレーについての意見のようだ。

 たしかに、インドアとは感覚が違うね。 何というか踏み切った力が分散して、上手く跳びづらいというかなんというか。


「まぁ、良い練習にはなりそうね」

「あはは、たしかにね」

「さ、この試合はサクッと勝っちゃいましょ」

「うん」


 ビーチバレー大会は始まったばかりだけど、目一杯楽しんじゃおう。

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