第392話 沖縄の観光

 ☆希望視点☆


 ご飯を食べ終えた後、亜美ちゃんが部屋へ帰ってこないので、これは好機とみて夕也くんの部屋に行ってみるも夕也くんもいない。


「……やられたよぅ」


 2人でどこかへ行ってしまったようだ。 亜美ちゃんの方が一枚上手だったらしい。

 20分部屋で待っていると、亜美ちゃんが部屋に帰ってきてお風呂に入る準備を始めた。 私はジト目で亜美ちゃんを見つめる。


「そ、そんなに怒らないでよぉ」

「怒ってはいないんだけど……」


 どうせなら私も一緒に行きたかったなぁと思う次第である。 そこまで私の事を警戒しなくてもいいと思うけど。


「……とりあえずお風呂行こ?」

「うん」


 私も入浴準備を済ませて2人で浴場へ向かう。



 ☆亜美視点☆


 希望ちゃんと一緒にお風呂に入る為に、浴場へと向かう。

 脱衣所の前には女子入浴時間中の張り紙があり、中へ入ると3人分の服が脱いであった。


「奈央ちゃん達だね」

「はぅ、紗希ちゃんまた触ってくるかな……」


 紗希ちゃんの一番の被害者である希望ちゃんは、ぶるぶると震えていた。

 私達もサクッと脱衣して浴場へ。


「あ、やっほ」

「やっほ」


 紗希ちゃんの気さくな挨拶に、私もそのまま返して掛け湯をする。


「どうかしら沖縄?」


 今回の旅行も計画してくれた奈央ちゃんが、そう聞いてきた。


「楽しいよ!」


 これが率直な意見である。 私の場合は、皆と一緒なら何処で何をしても楽しめると思うけど。


「明日は沖縄観光するわよ。 観光名所をどんどん回るの」

「おぉ、それはまた楽しみだねぇ」


 希望ちゃんと2人で湯船に浸かり、奈央ちゃん達の元へ向かう。

 

「沖縄の観光地かぁ。 当たり前だけど、テレビでしか見た事ないな」

「私も」


 遥ちゃんを始め、私達は誰も沖縄に来た事が無かったから、明日は何もかも初めてだ。

 写真とかも一杯撮っちゃおう。


「やっぱり水族館楽しみでしょー」

「はぅー楽しみだね!」

「ふふ、水族館はここから少し距離があるから、まずそこから攻めていくわよ。 水族館から少しずつ戻ってきながら、他の観光スポットに足を伸ばす感じになるわ」

「やったー!」

「わーい!」


 2年前のゴールデンウィークに行った水族館で、紗希ちゃんと希望ちゃんの2人はかなりはしゃいでいたっけ?

 とても楽しみにしているようだ。

 かく言う私も、非常に楽しみである。


 明日は疲れそうだし、今日は早めに寝ようかな。


 入浴を終えた私と希望ちゃんは、部屋で少しだけ受験勉強をした後、明日に備えて就寝する事にした。



 ◆◇◆◇◆◇



 翌朝──


 外は快晴。 絶好の観光日和だ。

 早朝には皆で朝食を摂り、支度を整えてバスに乗り込む。

 運転手さんに挨拶をするのも忘れない。

 夕ちゃんの隣の席を当然のように確保。 景色も楽しみたいので窓際に座る。

 通路を挟んだ反対の席には希望ちゃんと紗希ちゃんが座っている。 通路があるとは言え、しっかり夕ちゃんの隣を確保する辺りやっぱり侮れないねぇ。

 私達の後ろの席には麻美ちゃんと渚ちゃんが座った。 夕ちゃん包囲網の完成である。


「はい、では出発しますわねー! まずはここから1時間半程走った先にある、有名な水族館へ向かいますわ」

「待ってました!」

「あの有名な!」


 紗希ちゃんと麻美ちゃんの賑やかコンビのテンションが上がる。 密かに希望ちゃんも興奮しているのが見て取れた。


「では、車出してください」


 奈央ちゃんの合図と共に、バスが動き出す。

 沖縄の景色を窓から眺めながら、バスは一路水族館へ。



 ◆◇◆◇◆◇



 バスに揺られる事約1時間半。 私達は水族館へとやって来た。


「では、中に入りますー」

「はーい」

「わくわく」


 奈央ちゃんの先導の下、私達は水族館へ入館。

 希望ちゃんは、普段では考えられない様なテンションになっていた。


「何だか、2年前を思い出すね」

「2年前? あ、そういえば、2年前のゴールデンウィークも皆で旅行して、水族館へ行ったねっ!」


 希望ちゃんも思い出したようである。


「あの時の希望も、今と同じようなテンションだったな」

「そうだったわね」


 奈々ちゃんは、その時の光景でも思い出したのか、くすくすと笑う。


「い、良いじゃない別に……」


 ちょっと顔を赤くして小さくなる希望ちゃん。

 せっかく楽しんでるんだから、あまり邪魔しないようにしてあげよう。


「うんうん。 一杯楽しもうね」

「うん!」


 大きく頷くと希望ちゃんは、紗希ちゃん、麻美ちゃんと共に、水槽という水槽を張り付くように見ながら梯子している。


「夕ちゃん。 希望ちゃん可愛いね?」

「ん? 元から可愛いだろ」

「ふふっ。 2年前と同じ様な返しだねぇ」

「そうだったか?」

「そうだよ」


 夕ちゃんも変わらないねぇ。


 私達は水族館の中を練り歩く。

 新たな水槽が現れる度に、走り寄っていく3人に、他7人がついて行く様な格好になる。


「うおー! 希望ちゃん! 麻美!」

「うおー! ジンベエザメだー!」

「はぅー! 大きい!」


 世界最大の魚類を目にして大興奮の3人を見て、私達はついつい笑顔を溢す。

 本当に可愛いなぁ。


 

 ◆◇◆◇◆◇



 その後、これも2年前と同じくイルカのショーを堪能した私達は、水族館を後にして次なる観光スポットへ移動している。


「次は沖縄と言えばここって場所、首里城へ行きますわよー」

「おぉ……」


 行ってみたかったんだよねぇ。 これは楽しみだよ。


 バスは私達を乗せて、再度走り出す。

 水族館を出た後も、興奮冷めやらない紗希ちゃん達は、バスの中でも魚の話で盛り上がるのだった。



 ◆◇◆◇◆◇



 首里城に到着した私達は、守礼門の前にやって来た。


「これが守礼門かぁ」

「2000円札よね?」

「そだねぇ」


 今や何処に消えてしまったのかわからない2000円札に描かれていたのが、今目の前にある守礼門だ。

 私達は守礼門の前に並んで、他の観光客さんに頼み写真撮影を行う。

 撮影してくれた人にお礼を述べて、いざ守礼門をくぐり首里城見学を開始。


「おー! 朱い!」


 朱色をメインに使った立派な建物を見て、麻美ちゃんが声を上げた。

 琉球王国の中心的な役割を担っていた首里城は沖縄戦の際に全壊したが、後に復元され首里城跡となり、今では世界遺産にも登録されている。


「立派なお城だねぇ。 こういうとこに一度で良いから住んでみたいよ」

「亜美ちゃんはこういうの好きだよな」

「昔から歴史を感じる物とかが好きよね」


 宏ちゃんと奈々ちゃんからそう言われる。

 やっぱり、古い歴史のある物にはロマンを感じるんだよね。

 どんな風に使われて、どんな時間を過ごして来たかとか考えるだけでワクワクする。


「亜美ちゃんも中々にロマンチストさんなんだね」


 遥ちゃんにそう言われて、少し恥ずかしくなる。


「そ、そうかな……」


 あまりそんな風に思った事は無いんだけどねぇ。


 私達は一通り首里城を見学し、写真撮影なんかも程々にしてその場を後にした。

 実に良いものを見せてもらい、とても満足である。


 さて、バスに乗り込んで、次なる目的地へと移動する。

 どうやら鍾乳洞があるらしく、次はそこへ向かうとのこと。

 鍾乳洞は初体験だし、それも楽しみだよ。

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