第393話 沖縄観光その2

 ☆希望視点☆


 沖縄旅行2日目の観光中です。

 水族館と首里城を観光し終えた私達は、鍾乳洞があるというテーマパークヘと向かう途中。


「しょ、鍾乳洞って洞窟だよね?」

「そうだよ」

「は、はぅ……」


 洞窟→暗い→怖い

 私は怖いのがダメなんですぅ……。


「あはは、大丈夫だよ希望ちゃん。 皆一緒だから怖くないよ」


 亜美ちゃんは、にこっと微笑みながらそう言ってくれた。

 鍾乳洞に入ったら亜美ちゃんの手を握ろうと思います。 それを亜美ちゃんにお願いしてみると──


「え? 手を握るの? 嫌だよ? 夕ちゃんと手を繋いで歩くもん」

「は、はぅーっ?!」


 あっさりと拒否られてしまった。 あ、亜美ちゃんにこんな風な扱いを受けたのは初めてだよぅ……。

 わ、私はバスの中で運転手さんと待ってようかなぁ……。


「希望ちゃん、これから行く場所は別に鍾乳洞しかないわけじゃありませんわよ?」

「え、そうなの?」


 どうやら、お土産屋さんやバイキング、琉球王国城下町を再現したエリアやフルーツ園、ガラス工房など様々なものがあるらしい。


「それに、鍾乳洞内はちゃんと歩けるように足場も整備されてるし、観光しやすいように明かりも点灯していますわよ」

「あ、そうなんだ」


 それなら私でも大丈夫そうだし、皆と一緒に行こうかな。

 亜美ちゃんはそれを知ってて私と手を繋ぐのを拒否したのだろうか? 亜美ちゃんの事だから有り得るね。 いや、単純に夕也くんと手繋いで歩きたいだけなのかも?



 ◆◇◆◇◆◇



 バスは、次の目的地であるテーマパークに到着した。


「ほぅ、良い感じのとこだな?」

「ここだけでもかなり時間潰せそうね」

「そうだねー!」


 お土産屋さんを一通り見た後は、早速メインである鍾乳洞へと向かう事に、 どうやら一番奥の方に入り口があるらしい。 なので、今は他の場所には目もくれずに一番奥へ向かう。

 少し歩いた先で、鍾乳洞の入り口が口を開けて待っていた。


「これが鍾乳洞かぁ」

「この分なら大丈夫そうだよぅ」

「ですねぇ」


 私と同じで怖がりな渚ちゃんも、少し心配していたようだ。

 どうやら「南の島探検ツアー」なるものもあるらしく、そのツアーに申し込めばガイドさんと一緒に未公開エリアの見学もできるようだ。

 今回はそのツアーには参加していないという事なので、一般公開エリアのみの見学という事らしい。

 私達は、順番に中へ入っていく。

 内部は約5000mもあるらしく、国内最長ということらしいけど、公開されているエリアは890m程らしい。

 中に入ると、ちゃんち明かりも灯っており、歩きやすいように足場も組んである。


「希望ちゃん、はい」


 周りを見回していると、不意に亜美ちゃんが左手を私に伸ばしてきた。 どうしたんだろうと思いその手を見つめていると──。


「手、繋ぐんでしょ?」

「はぅ?」


 さっきバスの中では拒否られたと思ったけど、どうしてまた……?


「あはは、あれはさすがに冗談だよぉ。 ささ、一緒に鍾乳洞見学しよ?」

「う、うんっ!」


 亜美ちゃんは何だかんだ言って私には優しくしてくれるのである。 「夕也くん以外の事」ではだけど。

 私は亜美ちゃんの手を握って、2人で歩き出した。


「おー……これが鍾乳洞……」

「凄いわねぇ……」

「これ、何百年とかかかって成長してるんですよね?」

「そうよ。 気の遠くなるような時間をかけて少しずつ大きくなって、ここまでになったのよ」


 洞窟内部には天井や地面から伸びる大小さまざまな鍾乳石と、洞窟内を照らす明かりが醸し出す雰囲気はとても幻想的で、私も凄く感動している。

 亜美ちゃんは目をキラキラさせている。 本当にこういう不思議な物とか好きだよね。


「宏太、触って折ったりしないでよ?」

「するわけねぇだろ……」

「なははー。 宏太兄ぃはその辺常識人だから大丈夫だよお姉ちゃん」

「そうよー? 佐々木君バカだけど常識だけはあるから」

「何か褒めてんのか貶してんのかわかんねぇな」

「ははは、佐々木君はそういうキャラだかんねー」

「本当、皆のおもちゃだなぁ、佐々木」

「……はぁ、まあいいけどよぉ」


 宏太くんはあまり気にした風もなく、鍾乳洞の見学を続けるのであった。


「それにしても、かなり冷えるな」

「そうだねぇ……」


 夕也くんの言う通り、奥に進むにつれて気温が下がってきているようだ。 外の気温差がかなりあるみたい。 夏場だと良い避暑地になりそうだよぅ。


「写真写真……」


 亜美ちゃんは先程からパシャパシャと写真を撮りながら歩いている。 手を繋いで歩いている関係で、私も立ち止まって亜美ちゃんの気が済むまで付き合うよぅ。


「お?」


 先頭を歩いていた紗希ちゃんが声を上げる。 どうしたのかと前の方を見てみると……。


「はぅ」

「おお」


 目の前には、通路を塞ぐかのように鍾乳石が垂れ下がっている。 一応人は通れそうなスペースがあるので、順番に通過していく。


「あんな風になってる個所もあるのねぇ」

「びっくりしましたね」

「そうだねぇ」


 さらに進むと、何やらザァー……という水の流れる音が聞こえてくるようになった。

 もう少し進むとその音の正体が判明した。


「うわわ、川だよ。 写真写真」

「洞窟内に川が流れてんのか……不思議だなぁ」

「冷たそうや……」


 奈央ちゃんの説明によるとどうやら、雨水が地面へ浸透し、やがてそれが同じ場所で合流した結果それが川になったとのことらしい。

 自然って凄いんだね。


「しかし凄いわね……一つの鍾乳洞でこんだけ見所があるなんて」


 奈々美ちゃんの言う通りだ。 洞窟の仲なんて暗くてジメジメして、見所なんてないだろうと思っていたのに、実際は綺麗で神秘的で見所しかない場所だった。


「ふふふ、まだまだこんなもんじゃないわよ」


 と、奈央ちゃんが言う。 どうやらまだまだ見所満載のようだ。

 さらに奥へと進む私達の目の前に現れたのは、今までよりもさらに幻想的な空間だった。

 段々畑のようになった場所に水が溜まっており、そこを緑色にライトアップした空間。

 ここは「青の泉」というらしい。


「ふぉー……」

「すんごい……」

「綺麗ねぇ……」


 あまりに美しい光景に心も言葉も奪われる。 その光景が少し続く。

 途中にはとても広い水たまりもあり、そこで写真を撮影する。

 ここまで来ると私も鍾乳洞の魅力の虜になってしまっていた。 こんな世界があったんだね。

 青の泉のエリアを抜けると、またまた鍾乳石エリアに到達。

 銀柱と呼ばれる物らしい。

 中に入ってだいぶ歩いたと思うけど、まだ続くのかな? と思っていると、洞窟内には不釣り合いな屋根のある場所が現れた。


「東屋ね。 休憩出来ますけど」

「うーん……」


 洞窟内は湿気でジメジメしているので、休憩には適さないような気がするという事でそこは素通りして出口を目指すことにした。


 東屋を越えて先に進むと、今まで見た鍾乳石とは少し雰囲気の違う鍾乳石が姿を現した。

 絞り幕と呼ばれるエリアらしく、この辺りに滴る石灰水は入り口付近よりも多いらしく、鍾乳石のサイズが大きいようだ。


「はぅー……まるで幕みたいだよぅ」

「凄いねぇ……自然の神秘だねぇ」


 と、亜美ちゃんは感嘆の声を漏らしながらも写真撮影を怠らない。

 他の皆もスマホでパシャパシャと撮影をしているよ。

 奈央ちゃん曰く、もうすぐで出口へと上がるエスカレーターが見えてくるとの事なので、私達はそこを目指して歩き続ける。


「あれー? 何これぇー?」

「んー? 壺やないんか?」


 麻美ちゃんが声を上げてみているのは、形状的には壺のようだ。

 話によると、普通の壺を鍾乳洞に置いて、石灰水や独綱井の湿気でどんな風に変化していくのかを観察しているようなのだ。


 一応写真を撮っておく。 これから数百年を経てこの壺は鍾乳石に覆われていき、今とは全く違う形になっているのかもしれない。

 その壺から離れて歩き続けると、ようやくエスカレーターが見えてきた。

 これにて鍾乳洞探検は終了のようである。


「んーっ! 凄く良い所だったねぇ!」

「そうだねっ! 私最初は怖いところだと思ってたけど、途中からもう虜になってたよぅ」

「綺麗だったものねぇ」

「うんうん。 青の泉は感動したー!」


 皆は感動の言葉を次々に口にする。 良い思い出が出来たよぅ。

 この後はパーク内の他の見どころを堪能するよぅ。

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