第381話 1年生選抜
☆亜美視点☆
練習試合がさらに進んでいき第1セットを都姫に取られた後、第2セットを取り返したところ。
さらに第3セットも終盤20-22でリードされている。
「よーし! あと3点とるよー」
「おーう」
都姫女子はここまで宮下さんと田辺さん、さらには足立さんのクイックや川道さんの時間差など多彩な攻撃で攻めてきている。
宮下さんのワンマンチームだったというわけではないけど、今までの宮下さんに頼りきりだった都姫女子とは違う。
はっきり言って強い。
「ふう……」
「これ、練習試合組めて良かったわね」
「そうだねぇ。 今日、都姫女子の戦力を知れて良かった」
奈々ちゃんとそんな話をしながら、相手のサーブを待つ。
相手側のサーブを私が拾い、奈央ちゃんがセットアップする。 今回のサインは前衛3人による同時高速連携。 現在の前衛は奈々ちゃん、紗希ちゃん、麻美ちゃんである。
1人に対して1人ずつブロックがついてくる形をとった都姫女子。
トスは麻美ちゃんに飛んでいき、麻美ちゃんがなんとかそれを決める。
「うぇーい」
「はー、西條さんのトスやばすぎぃ」
「藍沢妹もなんだかんだ言って上手いよねぇ。 しっかりブロックとリベロ躱してくるし」
「なははー! 天才なもんで!」
「調子に乗らない」
「あ、痛っ」
ちょっと調子に乗った麻美ちゃんの頭を、奈々ちゃんが小突く。
でも奈々ちゃんの小突きは普通の人のゲンコツぐらい痛そうである。
「ここ止めて逆転狙うわよー」
「おっけー」
逆転するにはあと2ブレイクいるが、今の都姫女子から2ブレイクはなかなか難しい。 麻美ちゃんのブロックに期待である。 今日は通算で5回のブロックポイントを決めている麻美ちゃん。 遥ちゃんも6回取っているが、そのほとんどが宮下さん以外からである。
宮下さんからは2人とも2回ずつしかブロックポイントを取れていない。
「奈々ちゃん入れてこー」
奈々ちゃんのサーブ。 ここでのサーブミスは避けたいのだけど、奈々ちゃんはお構いなしに全力のパワーサーブを放つ。
そのサーブは、足立さんが何とかレセプションするも、大きく乱れた。
さすが奈々ちゃんの全力サーブだ。
「止めるよー!」
ブロックチャンスと見た麻美ちゃんが、気合いを入れる。
ボールの落下点に入り、トスの準備をする永瀬さん。 ずいぶんネットから遠い位置からのトスになるけど……。
「どこでも良いから高いの!」
宮下さんがそう声を上げる。
か、かっこいい。
「頼んだー!」
トスはライト方向に高く上がった。
位置的にもネット手前の最高の位置。
あそこからよくコントロールしたものだ。
「ブロック3枚! 西條先輩も入ってください!」
「了解ですわ」
麻美ちゃん、紗希ちゃん、奈央ちゃんの3枚ブロックで完全にコースを塞ぎにいく。
こうなると、宮下さんには2つの選択肢が生まれる。
1つは、端のブロッカーの手に当ててブロックアウトを取る選択。 宮下さんレベルなら、これは狙って可能だ。 私はブロックフォローの為に、ライン際に待機。
もう1つは、ブロックの上を抜くフェイント。
しかし、それは3枚ブロックがつくとなった時点で遥ちゃんがフォロー出来る位置に移動して潰した。
無いとは思うけど、強引にクロスへ来た場合は奈々ちゃんが拾えるはず。
「どうする、宮下さん」
「っここ!」
スパァン!
「ワンタッチっ!」
宮下さんはストレートに打ってきた。
第3の択だ。
ブロッカーの指先を掠めるように打った、ほぼ水平な高さのスパイク。
ある程度の高さと、指先を狙えるだけの技術がなければ打てないスパイクだ。
遥ちゃんが反応した時には、ボールはコート外まで飛んでいた。
「あー、すっご」
麻美ちゃんもこれには脱帽といった様子。
いや、私もだけど。
「あれをやられちゃあねぇ」
こちらとしては笑うしかないのであった。
◆◇◆◇◆◇
試合終了──
結果は……
月ノ木26ー28都姫
都姫20ー25月ノ木
月ノ木23ー25都姫
セットカウント1ー2で都姫女子が勝ったよ。
「よーっし!」
宮下さんは大きくガッツポーズをとると、凄く嬉しそうな笑顔を見せた。
春高では、私達に接戦で負けて悔し涙を見せていたし、本当に嬉しいのだろう。
「まったく、大袈裟ねぇ」
奈々ちゃんは「やれやれ」といった表情で、宮下さんを見つめている。
「やられたね。 宮下を全然止められてないや」
「そだねー。 夏までにもっと止められるようにならないと」
ブロッカー勢はさすがに悔しいだろう。
2セット目はお互いに控え選手を投入してのプレーだったため辛うじて取れたけど、スタメン同士でやってたら連取されて負けてたかもね。
「あっちのコートも終わりそうだね」
Bコートの試合に目を向けると、そちらも3セット目終盤になっていた。
その試合の行く末を見ていると……。
「あの1つ提案あるんですけど……」
と、声をかけてきたのは都姫女子のコーチの方であった。
「提案ですか?」
「はい」
はて、どういった提案だろうか?
「このあと時間よろしければ、両校の新入生部員から選抜して試合をしてみませんか?」
「新入生部員同士で試合……」
悪くない提案だ。
まだお互い、高校での試合経験が無いであろう1年生部員達。
他校との実戦経験を積ませるには良い機会かもしれない。
お互い1年生同士なら、気負いもなくやれるだろうし。
「わかりました! その提案受けます。 うちにとっても良い話ですので」
「ありがとうございます」
という事で、試合が1試合追加になった。
1年生選抜かぁ。 奈々ちゃんと相談しよ。
宮下さんと話し込んでいる奈々ちゃんの元へ向かう。
「あ、清水さん。 今度は公式戦で勝つからね!」
「あはは、私達だって公式戦では負けないよ」
と、夏のインターハイでの再戦を約束する。
「ところで奈々ちゃん。 ちょっと相談が」
「相談?」
「実はかくかくしかじかパフェパフェ」
「パフェパフェって何よ……」
パフェ食べたいなーみたいな事を考えていたら、つい出てしまった。
「ふぅん。 1年生同士で試合ね。 良いじゃん。 で、メンバーどうするかって話よね」
「そうそう」
「あの金髪ちゃんは絶対っしょ」
と、宮下さんが言うのはマリアちゃんの事。
たった今終了したBコートで試合をしていたけど、疲れはないだろうか?
「私もあの子は外さないわねー」
と、奈々ちゃんも推してくる。
「そっか、じゃあ1人はマリアちゃんで決まりだね」
「他はまだ何ともって感じね」
「まあ、うちも似たようなもんだし。 まだ1ヶ月経ってないからどの子が良いってわかんないよねー」
宮下さんがそう言う。 やっぱり都姫女子もそうなんだ。 じゃあ、奈々ちゃんと2人で適当に選んじゃお。
◆◇◆◇◆◇
というわけで、月ノ木1年生の選抜メンバーを決めたよ。
マリアちゃんは最初から決まってて、
都姫女子もメンバーが決まったらしいので、これから1年生選抜チームの試合開始だよ。
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