第374話 試してみる?
☆亜美視点☆
本日は4月16日の金曜日。
今日は宏ちゃんと2人で体育館の全面使用日のすり合わせをすることになっている。
最近はお昼休みにササッと終わらせていたんだけど、今日はお互い昼休みも忙しかったという事で放課後に緑風へ行くことにした。
少し愚痴も言いたいしね。
愚痴というのは、主に何もしてくれない顧問の事や体育館が共用なままであることなど。 他にも様々な話を宏ちゃんとしている。
現在は部活中。
「狭いねぇ……」
「そうねぇ」
1年生も一杯入ってきてくれたのに、この環境じゃ思いっ切り練習させてあげられなくて可哀想である。
私達3年生は、出来るだけ1、2年生に練習の時間を作ってあげるために指導に回っている。
「はーい、
「
練習の指示を出して練習させておく。 私達3年は飛び散ったボールを拾っていく。
普通は逆なんだろうねぇ。 でも、1、2年育成に力を入れたいのでこれでいい。
◆◇◆◇◆◇
練習を終えて、片付けを1、2年生にお任せした私は、先に上がらせてもらって宏ちゃんと合流。
「お待たせー」
「おう。 んじゃ久しぶりの愚痴デートと行きますか」
「あはは、デートデ-ト」
宏ちゃんと私は、この時間の事を愚痴デートと呼んでいる。
何せ、体育館の使用日すり合わせなんてすぐに終わるからである。
むしろお互いの愚痴や、他愛無い話がメインなのである。
とりあえずは、緑風を目指す。
場所なんて何処でも良いんだけど、私はフルーツパフェが食べられる緑風を推す。
店に着いたら席に座り、注文を終えてすり合わせを始める。
お互いスマホを取り出して、カレンダーを見ながら話を進めていくよ。
「来月には、バレー部の練習場所を変えてもらえる予定だから、日程すり合わせはゴールデンウィーク前までで良いかな」
「了解」
「んで、早速来週の土曜日なんだけど、練習試合入ってるんだよ」
「来週土曜日……24日だな。 じゃあこの日は別の体育館空いてないか当たってみるか」
「そのかわり、日曜日はバレー部お休みにするよ」
「お、了解」
「バスケ部は練習試合とか無いの?」
バレー部はこんなものなので、バスケ部に話を振ってみる。
「練習試合はあるが、俺達が出向くからな。 明後日だけど」
「んじゃ、明後日は全面使わせてもらいまーす」
「どうぞご自由に」
他に抜けていないかを2人で確認して、すり合わせ終了。
ちょうど運ばれて来たパフェとコーヒーをいただきながら、いつもの愚痴&雑談タイムへ。
「でも、やっと広い体育館が使わせてもらえるようになるよ」
「まあ、うちもそっちも全国優勝経験したし、実績充分だからな」
「まあね。 人数も増えたし。 女バスとバドミントン部には悪いけど、向こうさんには実績が無いからね」
バレー部とバスケ部が単独で体育館を使わせてもらえる皺寄せは、女バスとバド部へ。
両キャプテンには2人で頭を下げに行ったが、向こうさんは部員数や実績を見ても妥当であると言ってくれた。
「大体、こういう事も普通は顧問が全部やってくれるものじゃないかな?」
「まあそうだよなぁ」
無能な顧問に対して、どんどん愚痴が溢れる。
「良い加減、もうちょっと仕事してくれる顧問に変えて欲しいもんだな」
「うんうん。 外部からコーチ雇うとかもしてほしいよ」
練習メニューや作戦立案なんかも、全部私達が自分でやらなきゃいけなくて、かなり負担がかかっている。
私や宏ちゃんはまだ良いけど、夏以降の次の世代の事を考えると、早めにこういう負担が減るように私達が動かないといけない。
「まったく大変だぜ」
「本当にねぇ」
2人して溜息を漏らす。 今なら、何故私がキャプテンに選ばれたのかが何となくわかる。
こういった問題を解決に導ける人間だと、そう判断されたからである。
最初からそう言ってくれればよかったのに、あの先輩はもう……。
「はあ、愚痴っても愚痴っても、気が収まらないね。 話題変えよ?」
「そうだな」
もう少し楽しい話をしようということになり、お互いの近況を話す事に。 主に恋愛方面でね。
「そういえば、希望がまた宣戦布告したらしいな?」
「うん。 結構本気で向かってくるよ。 ケンカとかは今のところないけど」
「まあ、2人がケンカするなんてよっぽどだろうからなぁ」
「そだねぇ。 希望ちゃん怖いから怒らせたくないし」
あれで、本気で怒ると怖いから不思議である。
「んで、その希望と夕也が今絶賛2人きりなわけだが?」
「……だ、大丈夫でしょ。 ゆ、夕ちゃんを信じるよ」
「あいつ、チョロいからなぁ」
「うっ……」
思い当たる節がありすぎるぅーっ。
私は心配になって、電話してみる。 だけど、やっぱり取り越し苦労だったようで、希望ちゃんは夕飯の準備で忙しいらしく、それどころではないらしい。
「ふぅ」
「ははははっ」
「もう、宏ちゃんが不安にさせるから……」
「いや、悪い悪い。 でも、注意しないと取り返されるぜ」
「大丈夫だもーん。 私と夕ちゃんラブラブだもん」
「見てりゃわかるけどな」
私達の事もだけど、宏ちゃんと奈々ちゃんはどうなんだろう? 障害って障害も今のところ見当たらないし。
「そっちの2人は?」
「俺達? どうだろうな? 上手くいってるんじゃねーかな?」
「なんか曖昧だねぇ……」
「あんまり変わらないんだよな、付き合う前と今って。 いや、多少はイチャついたりするにはするんだが」
奈々ちゃんが宏ちゃんにイチャついてるところ、実は全然見たことがないんだよね。
何か人前ではそういうの見せないみたい。
そのくせ、夕ちゃんとはよくスキンシップを取っていたりしてよくわからない。
「マンネリってわけじゃないんだろうけど。 まあ、今みたいなのが俺達らしいだろ」
「マンネリ……ね、紗希ちゃんが言ってたんだけどさ、同じ相手とばかり……その……そういうことしてるとマンネリ化するって」
「んー? どうだろなぁ。 まあたしかにあるんだろうけど……特に神崎のとこは交際歴長いしな」
「そっかー……」
やっぱり長年ずっとだと、そうなっちゃうものかのかな?
何だか嫌だな。
「何かね? 紗希ちゃんが言うには、違う人とたまにして新しい刺激が欲しくなるとかなんとか」
「あれの場合は、そういう性格なところもあるんじゃないか?」
「だ、だよねー。 いくらマンネリしてきても、浮気まではさすがにね」
「なんなら試してみるか?」
「へ?」
素っ頓狂な声を出してしまう私。
どういう意味?
「あの? 試すって?」
「いや、別の相手としてみてどうなるか」
「誰と誰が?」
「俺と亜美ちゃんが」
しばらく沈黙が続く。
「えーっ?!」
頭の中で言われたことを理解して、大声をあげるのであった。
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