第368話 麻美VSマリア
☆亜美視点☆
翌日──。
今日は私と夕ちゃんの合同の誕生日パーティーがある。
けど、その前に今日は部活の練習日。
学校はお休みだけど、予選も近いからね。
「って、感じらしいんだよ」
「亜美に対抗意識をねー」
マリアちゃんについて昨日調べた事を、希望ちゃんと奈々ちゃんと麻美ちゃんの3人に話してみる。
「麻美は知らないの?」
「私達の代は県大会ベスト8止まりだから、直接対決はしたことないよー? 名前ぐらいは聞いてたけど」
なるほどねぇ。
「でも、凄い子が入ってきたよね?」
「そだねぇ」
まだまだ荒削りではあるけど、周りから天才と言われていただけはあるぐらいのレベルにはある。
「普通に即戦力クラスだけどねぇ」
「他校なら、ね。 うちはOHの層が厚いから」
と、奈々ちゃんの言う通りである。
これからの伸び次第だ。
現2年生で1番の成長株である渚ちゃん、それに負けじとついていく真宮ちゃん、金城ちゃん辺りがレギュラー争い熾烈組である。
マリアちゃんのプレーをこの目で見ないことには、まだまだ判断を下せないね。
◆◇◆◇◆◇
「はーい、集合ー」
今日はバスケ部がお休みなので、体育館全面を使える。
紅白戦なんかも出来そうである。
「まずは、昨日と同じように体をほぐしてから外周ランニングねー」
「はいっ!」
「……」
あぅ……マリアちゃん、またこっち見てるよ……。
また勝負を持ちかけられるかもしれない。
今日も後ろから1年生の子達を見ながらゆっくり走り、辛そうな子には声をかけていく。
「亜美ちゃん、面倒見が良いですわねぇ」
と、一周早く周回してきた奈央ちゃんが、並びかけてきて、並走ペースに落とす。
さ、さすがに速いねぇ。 もう周回遅れか。
「ついこの間まで、中学生だった子達だからね。 いきなり高校レベルの練習だから、ついてこれない子もいるかもしれないし」
「……まあ、それはそうですけれど、それならそこまでの子って事になるんじゃなくて?」
と、奈央ちゃんは割りかしドライな考えを持っているようだ。
奈央ちゃんの言う事も一理あるんだけど……。
「たとえついてこれなくても、バレーボールを諦めて欲しくないからね。 好きだからバレーボール部に来たんだもん、楽しく上手くなっていけたらそれで良いじゃない。 私はそんな子達を応援したいよ」
「亜美ちゃんらしいですわねぇ。 まあ、キャプテンの方針に文句はありませんわよー」
と、そう残して加速していった。
いやー、速いなぁ……。
「あ、亜美ちゃん」
「あんた、ゆっくり走ってるわねぇ」
奈央ちゃんから遅れて、希望ちゃんと奈々ちゃんもやってきた。
奈々ちゃんはわかるけど、希望ちゃんも速いんだよねぇ。 持久走は得意らしい。
「あの子に先着されたら、勝負吹っかけられるわよ?」
「それは昨日の話じゃ?」
「いつまでって決めてなかったわよね?」
「え、ま、まさかー……まだ続いてる?」
「可能性あるわよ」
「はぅ……大変だね、亜美ちゃん」
「うーむ……そうなったらそうなった時考えるよ」
別に勝負するのが嫌ってわけじゃないからね。
「ま、好きになさいな」
「先に行ってるよ?」
「はーい」
奈々ちゃんと希望ちゃんも加速して前に行ってしまった。
外周のランニングを終えて体育館へ戻って来ると、マリアちゃんが寄って来て一言。
「約束です。 勝負を受けてもらいますよ? 清水先輩」
「あ、やっぱり昨日のアレはまだ有効だったんだね……」
「いつまでって言ってなかったので」
んー、一本取られた。
そうだねぇ……。
「わかった。 今日は紅白戦をしてもらうつもりだから、私とマリアちゃんは別チームに振り分けるよ。 それで良い?」
「構いません」
メラメラ……
うわわ、凄く燃えてるよ……そんなに対抗心燃やさなくても……。
というわけで、皆を集めて紅白戦のチーム分けをする。
人数がかなり多いので5チームに分けた。
もちろん、私とマリアちゃんは別チームに振り分けたよ。
さて、2面使えるので、同時に4チームが試合可能だ。
私の入ったEチームは一旦観戦に回り、残りのチームで試合してもらう。
さて、注目試合だ。
マリアちゃんのいるAチームには、紗希ちゃんと黒川ちゃんがレギュラー陣として入っている。
対するBチームは、麻美ちゃん、希望ちゃんの鉄壁チームに、真宮ちゃんがエースアタッカーとして入っている。
マリアちゃんが鉄壁チームにどれくらい通用するか、これは楽しみな一戦だ。
「んじゃ、両コート始め!」
私の合図で試合が始まる。
さてさて、どうなりますかな。
まずはAチームのサーブからだね。
それを拾うのはもちろん、うちの正
安定したレシーブをセンターに上げると、麻美ちゃんがSの後ろから回り込み、Cクイックのポジションに入り跳び上がる。 真宮ちゃんもセミクイックのテンポで跳んでいたが、1年生Sの子トスは麻美ちゃんに合わされた。
「んー、即席にしては合ってるね」
「うぇい!」
麻美ちゃんのクイックは、ブロックに阻まれる事もなく綺麗に決まる。
「ナイスー!」
うんうん、やっぱり今年の1年生はレベル高いよ。 県外からの生徒が半数近くいたんだっけ。
さすがに高校大会4連勝すると全国から強豪選手が来たりするんだね。
とか頷いていると、マリアちゃんの攻撃が見られそうだ。
紗希ちゃんがセミクイック、マリアちゃんはまだ助走しないことからオープン攻撃かな? 自信あるんだねぇ。
そして、紗希ちゃんが囮になった事でブロックが薄くなったマリアちゃんに高いトスが上がる。
冷静な麻美ちゃんがすぐにブロックに入るが。
「壁1枚……マリアちゃん有利だ」
「はっ!」
「……」
パァンッ!
マリアちゃんの長身から放たれたスパイクは、1年生
ディグを試みるも、ボールはコート外へ飛んでいってしまった。
「ドンマイー! ナイスチャレンジだよ! マリアちゃんナイススパイク!」
一人一人に声をかけてあげる。
それにしてもマリアちゃんは天才と言われているだけあるね。 麻美ちゃんが希望ちゃんの方に打ちやすいように誘導するようなブロックをしたのに、それを見てあえてコースを外した。 あのコースは中々打てないよ
でも、もっと末恐ろしいのは麻美ちゃんかな。
麻美ちゃんの凄いところは攻撃に対する嗅覚、それと相手の癖や弱点を見抜く観察力。
さっきのブロックの時、じっとマリアちゃんを見ていた。 何かしら癖を見つけたかもしれないね。
そして、その成果はすぐに表れた。
次のマリアちゃんの攻撃チャンス。 先程と同じ様に高いトスに合わせたオープン攻撃。
「ブロック合わせるよー。 せーの!」
今度は、麻美ちゃんと真宮ちゃんの2枚ブロック。
マリアちゃんどう出る?
「はっ!」
今度もリベロを避ける様なコースを狙った……けど。
「うぇーい」
麻美ちゃんがそれを読み、手を少し斜めに出していた。 ボールは麻美ちゃんの手に当たり、ブロックポイントとなる。
「ナイスブロック麻美ちゃーん! マリアちゃん狙いは良かったよー! 次決めよー!」
「……」
ありゃ、今のを止められてちょっと頭に血が上ったかな? どうも、まだまだメンタル面が未熟そうだ。 冷静にならなきゃ良いプレーは出来ない。
紗希ちゃんが何とか宥めてみているが、効果はなさそうである。
その後のマリアちゃんのプレーは精細さを欠き、尽く麻美ちゃんと希望ちゃんに止められ、ついには選手交代となった。
「精神面が脆いですね、あの子」
隣で見ていた渚ちゃんが、私に話しかけてきた。
「そだねぇ。 プライドが高いのかもしれないね」
うちにはあまりいないタイプだ。 技術的には申し分ないから、もう少し大人になれば夏以降は、渚ちゃんとの2枚看板も見えてくるんだけどねぇ。
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