第364話 Wアタック!

 ☆夕也視点☆


 花見を終えて、少しの間別荘の自室で休憩。

 あんな桜景色、そうそう見れたもんじゃないよなぁ。


「ふぁぁぁ……ふむ……ちと眠いな……」


 と、ベッドに寝転ぶとすぐに眠りに落ちるのだった。



 ◆◇◆◇◆◇



 で、目が覚めたのが夜の19時前。


「やべ……寝すぎちまったか?」

 

 飯の時間はまだのようだが、こんだけ寝ちまうと夜寝れるか怪しい。

 俺は部屋の電気を点けて、寝ぼけた頭を覚醒させる。


 コンコン……


「夕ちゃーん。 夕飯の時間だよぉ!」

「……おー……」


 ちょうどドアの外から、夕飯の時間を告げる亜美の声が聞こえてきた。


「あはは、寝てたんだね。 早く来るんだよぉ」

「おーう……」

「大丈夫ー? 一緒に行って上げよっかー?」

「大丈夫だー……」

「そうー? じゃあ、ダイニングで皆待ってるからねー」


 パタパタ……と、足音がドアの前から遠ざかっていく。


「……行くか」


 ゆっくりベッドから起き上がり、ダイニングへと向かうのだった。


 ダイニングには、俺以外の全員がすでに集まっていた。

 ふむ、さすが皆だな。


「あ、来た来た」

「あんた待ちなんだから早く座んなさいよ」

「おう、すまんすまん」


 亜美と希望の間の席が空いていたので、そこに座る。

 今日の夕食は豚汁に炊き込みご飯のようだ。

 美味そうである。


「揃ったわね? ではいただきましょう」


 奈央ちゃんの合図で、各々が夕食を開始する。


「お昼あれだけ食べたのに、食欲落ちませんね」


 普段小食らしい渚ちゃんが、今日は結構な量を食べているようだ。


「やっぱり皆で食べると違うよー」

「そうだな。 やっぱり賑やかな食事は食が進む」

「遥は普段から似たようなもんでしょー?」

「あははは!」

「にしても……奈央っていくつ別荘持ってんの?」

「7軒ぐらい?」

「うへぇ……」


 なんちゅう数じゃ……。

 他の皆もドン引きしている。 もはや次元が違う。


「最近1軒増えたわよ」

「あ、あれも別荘扱いになるんだね……」


 多分だが、元清水家の事を言っているのだろう。 奈央ちゃんの衝動買いには恐れ入る。


「亜美の家だった場所でしょ? 今度集まりましょうよ」

「そうだねぇ。 合鍵貰ったけど、私もまだ入ってないし」


 そういえばそうだな。

 どんな家具が置いてあるやら……。


「夕也もこれで、自宅を集会所にされなくて済むわけだな」

「マジそれな」


 何故か俺の家に集まるのが当たり前になってたからな。

 両親いないからとか言ってたが……。


「これからは私の別宅で集まって何かやりましょ」

「賛成ー」


 という事で、近々元清水家に集合することとなった。

 皆、騒ぐのが好きなのかなんなのか……。


 俺と宏太は食後の片付けのある女性陣より先に風呂を頂き、ゆっくりと疲れを取る。

 

「春休み終わったら3年生か……進路のことも考えないとなぁ」

「まだ、そんなこと言ってんのか」


 周りの皆は、大体進路を固めつつある。 はっきりと決まってないのは、俺と奈々美ぐらいである。

 宏太はどうやら就職志望のようだ。 行き先は求人を見て決めるとの事だ。 亜美は進学を志望。 小説家をやりながら経済学を学びたいと思っているらしい。 よくわからん抱き合わせではあるが。

 小説家にそういったものが必要なのか?

 希望も進学、 教育大学で幼稚園教諭の資格を取るためである。 あいつはもう進学先も具体的に決めており、受験勉強も始めているらしい。

 他の友人達も軒並み進学という事らしい。


「やっぱ進学だよなぁ」

「お前は進学なのか」

「まあな」


 大学で何バイトしながら何かしら資格を取って、将来の仕事に活かしていければ良いのだが……。


「奈々美はどうすんだろうなぁ」

「私がどうしたのよ?」

「あー……奈々美は進学先どうすんのかと思って……」


 ……ん?


「ちょっと待て!」

「奈々美?! す、すいません命だけは!」

「何よ……別に取って食べないわよ」


 何で奈々美が俺達の入ってる風呂にいるんだよ?! 入る時に男子入浴中の張り紙しといたはずだぞ……。


「私もいるけど?」

「あ、亜美ちゃんまで?!」


 何でだぁ?


「良いじゃん別に。 で、私の進学先だっけ?」


 気にした風もなく話を続ける奈々美。 亜美もさも当たり前のように俺の隣で入浴している。

 ちょっと意味わからないぞ。


「私は一応だけど七星大ね。 近いしそこまで難関じゃないし?」

「七星か……」


 七星大は市内へ出るだけで行ける、超近場の大学。 奈々美の言う通り、俺や奈々美ぐらいの成績でも十分狙えるレベルでもある。 文学部や理学部といったものから機械工学や電子工学なんてものまである。

 七星大か……考えてみても良いかもしれんな。


「ふふ、何? 私と同じ大学行きたいの?」

「い、いや、参考までに聞いてみただけだが……」

「あ、そう」

「あはは。 でも、夕ちゃんは何かやりたいことないの?」

「今んとこはなぁ……七星でいいかもなぁ」

「ふふふ。 じゃあ一緒に七星目指しましょっか」

「いいなぁ……」

「亜美ちゃんはどうすんだ?」

「私は奈央ちゃんの受ける大学で経済学を学ぼうかと思うんだ」


 やっぱり経済学なんだな。


「え? 亜美ちゃんは小説家の道を進むんだろ?」

「うん。 それはもう決めたよ。 でも選択肢は多い方がいいと思ってね」

「選択肢?」

「この子、将来は奈央の秘書をやりたいって思ってるらしいわよ? 二足の草鞋ってやつ?」

「な……奈央ちゃんの秘書?」


 またとんでもない事を考えてやがるな亜美の奴……。 天下の西條グループの総帥秘書って……。


「まだそっちは本決めじゃないけどね?」


 亜美には色々と驚かされてばっかりだな……。

 その後も、将来の展望について話し合うのだった・



 ◆◇◆◇◆◇



 風呂から上がってきてベッドに倒れ込んでいると……。


 コンコン……


 部屋に来客を告げるノックが聞こえてきた。

 一体誰だ……宏太か亜美かってとこだろうが……放置しておくのも悪い。

 しかたなく起き上がり、ドアを開けて来客者を確認する。


「あ……夕也くん」

「ん……希望か」


 希望の方だったか。 可愛いパジャマに身を包んだ希望は、廊下に立っていた。


「あ、あの、ちょっと寝れなくて……眠くなるまでお話し相手になってほしいなぁ……なんて」


 んー……夕食前まで寝ていた所為で俺もまだ寝れそうにない。


「いいぞ。 入るか?」

「うん」


 と、希望を部屋に招き入れたところで廊下を通りかかる影が……。


「んん、今井君……と、希望ちゃん?」

「おお、紗希ちゃんか」

「何々? 2人で何してんのさー」


 ニヤニヤしながら俺の希望を交互に見やる。 むぅ、何か面白い事が起きそうだと思っている顔だな。


「あ、紗希ちゃん。 ちょっと寝られないから、夕也くんとお話で持って思っただけだよ。 紗希ちゃんもどう?」


 と、何故か希望が紗希ちゃんを誘う。 まあ、別に構わないのだが。


「え、いいの? 今井君もいいの?」

「まぁ、構わないが」

「んー、じゃあおじゃましようかな」


 そう言って、紗希ちゃんも俺の部屋へと入ってきた。 この2人も仲良いんだよなぁ。

 2人でソファーに座って話を始めている。 これって俺要らなくないか?

 まあ、いいか……。

 という事で、俺もソファーに腰を下ろす。


「……」

「……」


 と、俺がソファーに腰を下ろした途端に、2人が黙り込んで、何か頷き合っている。

 何だ?


「「Wアタック!」」


 と、発した瞬間に2人で立ち上がり、俺に襲い掛かって来るのだった。



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