第359話 紗希の企み

 ☆亜美視点☆


 夕食の場で、皆とクリームシチューをいただいているよ。

 皆で共同制作したシチューはとても美味しい。


「うめぇ」

「宏太、もっとゆっくり食べらんないわけ?」

「これが俺のゆっくりだっつーの! んぐんぐ」


 宏ちゃんはもうさっきからがっついている。 他の皆も口を揃えて美味しい美味しいと言いながら夕食を楽しむ。


「私も去年に比べて料理上手になったと思ったけど、先輩達には敵わないなー!」

「そやなぁ……もっと精進せな……」


 と、私の料理教室の生徒である麻美ちゃんと渚ちゃんは、まだまだ足りないと感じているようだ。

 先生をさせてもらっている身としては、十分すぎるぐらいだと思うけど。


「んむ……明日はお昼前に出て、お花見行くわよ。 場所取りはもう済ませてあるから、ゆっくり行っても大丈夫よ」

「ま、まさか今年も?」

「いえ、今年は前もってレジャーシートを敷いて場所取りを済ませてあるの」


 ほっ……また土地を買ったとか言い出すのかと思った。


「お花見で食べる料理や飲み物はどうするのよ?」

「それも準備してあるわよ。 安心して」


 相変わらず手回しが早いんだよねー。 これなら私達は何もしなくて良さそうだね。

 ゆっくりとしていようっと。



 ◆◇◆◇◆◇



 夕食後は部屋に戻りゆっくりしていると、廊下から話し声が聞こえてきた。


「なるほど。 今井君の部屋は3号室ねー」

「それがどうしたのよ?」

「あははーちょっとねー」

「怪しいよぅ……」


 声の主は紗希ちゃん、奈々ちゃん、希望ちゃんの話し声だけど……夕ちゃんの部屋を知ってどうするんだろう。


「それより、さっさとお風呂入るわよ」

「そうね」

「お風呂ぅ」


 うーん、お風呂かぁ。 私も入ろうかなぁ。

 と、入浴の準備をして、3人に少し遅れて浴場へと向かう。


 浴場では、先程の声の主の3人が先に入浴してる。 例によって、希望ちゃんは紗希ちゃんに揉まれていた。 うーん、入るタイミングずらしたほうが良かったかも……。


「おりょりょ? 亜美ちゃんじゃん」

「皆もお風呂だったんだねぇ」


 知ってたけど。

 掛け湯をしてゆっくりとお湯に浸かる。 ふぅ気持ちいい。


「じーっ」

「ん?」

「何よ希望?」

「どったのー?」


 私達3人をじーっと見つめる希望ちゃん。 視線の先を辿ってみると……私達の胸を凝視している。


「バレー部のビッグバスト3人衆と並ぶと、私のは平凡に見えるなぁと……」

「そ、そうかなぁ」


 希望ちゃんも十分にあるほうだけど……。


「私ら90越えだからね」

「でかくてもジャマなだけだよこれー?」


 紗希ちゃんがそう言いながら自分の胸をボインボインさせている。 私でも紗希ちゃんのを見ると劣等感を感じるレベルである。

 なるほど、希望ちゃんの気持ちはわかった気がする。


「それにしても、紗希。 さっきの話は本気なの?」

「奈々美っ! しーっ!」

「うわっ?! な、何よぉ」

「それは秘密だって!」

「いやでもねぇ……」


 何の話だろう? 多分さっき部屋の前で話してたことに関係あるんだろうけど……。

 んー? 

 希望ちゃんの方に視線を向けてみても、首を横に振って「詳しいことはわからない」と言う。

 紗希ちゃんは一体何を考えているんだろう……。

 ただ、夕ちゃんの部屋を聞き出していたことから、夕ちゃん関係の事だという事はわかる。

 そして、紗希ちゃんが夕ちゃんに絡むと色々といやらしい展開になりそうである。


 浴場から出て、キッチンで飲み物を飲んだ後はすぐに部屋に戻る。

 明日はお花見だし、早めに寝てしまいたいところだねぇ。

 

「ふぁぁ……んー眠い」


 ……ん?


「あんた……本当に行くの? どうなっても知らないわよ?」

「大丈夫大丈夫」


 奈々ちゃんと紗希ちゃんの声?

 お風呂に入る前やお風呂でのやり取りが思い起こされる……。 紗希ちゃんが何か企んでるみたいだね。

 さて、夕ちゃんの彼女として私はどうしたものか。


「考えるまでも無いか……碌なことじゃなさそうだし、阻止だね」


 少し眠いけど、怪しい動きをしている紗希ちゃんを止めるためにベッドから立ち上がり部屋を出る。

 すると、夕ちゃんの部屋の前に立つ奈々ちゃんと紗希ちゃんを発見する。


「あれー? そこは夕ちゃんの部屋だけど2人で何してるのかなぁ?」


 わざとらしく2人に声を掛けてみる。


「うげっ、亜美ちゃん?!」

「タイミング最悪ね」


 奈々ちゃんは、苦笑いしながら紗希ちゃんの肩に手を置いて「諦めなさいな」と、諭している。

 本当に一体何をしようとしていたのか……これは問い質す必要があるね。


「さて、まずは私の部屋に来てもらおうかなぁ、2人とも」

「しゃーないわね」

「そうねー」


 2人は意外と大人しく私の部屋に連行されるのであった。

 私はテーブルの前のソファーに座り、2人に説明を促す。


「で、夕ちゃんの部屋に行って何しようとしてたの?」

「それは勿論夜這いを……」


 グゴゴゴゴゴォ……


「うわ……亜美がすごく怒ってるわよ紗希……」

「奈々ちゃんはぁ? 何で止もしないで一緒にぃ?」

「紗希が1人じゃ押さえられないから手伝えって……」

「2人とも怒るよぉ!」

「もう怒ってるじゃないの……」


 まったくもう……紗希ちゃんだけならまだしも、奈々ちゃんまで一緒になって何やってるんだか。


「大体2人は彼氏いるでしょ。 何で夕ちゃんを襲う必要があるのよ?」

「やっぱり、彼氏以外の男も知っておきたいっていうかぁ?」

「必要ないでしょ……」

「わかってないなー亜美ちゃんは。 同じ相手ばかりだとマンネリ化してくるものなのよ? たまには違う刺激が欲しくなんのよー」

「他の人とすればいいじゃない……どして夕ちゃんなの」

「そりゃ、私の初恋相手だし、お気に入りの男子だし」


 うーん……納得できるような説明ではないよね。


「……私に隠れてコソコソするのはやめてよねぇ」

「紗希、だから言ったでしょ」

「うぐっ……話したってOKしてくれないじゃーん」

「当たり前だよっ」


 まったくもう……。 本当に困ったお友達だよ。


「今日の所は未遂で止められたから許すけど、もうだめだよ?」


「わ、わかったわよー……」


 あからさまに落ち込む紗希ちゃんと、溜息をつく奈々ちゃんであった。


「でもさー、本当に同じ相手ばかりだとマンネリしてくるわよ2人ともー」

「……私にはまだ何とも言えないよ。 付き合い始めてまだ1年経たないもん。 奈々ちゃんは?」

「私はーまぁ……去年1回浮気の経験あるし」


 あー、そうだったね。 夕ちゃんと一晩過ごしたんだっけ?

 あの時は色々大変だったねぇ。


「奈々美浮気したの?」

「まぁ1回夕也と」

「ほらー! 奈々美は良くて何で私はダメなのよー」


 紗希ちゃんは文句を言い出した。 そんなこと言われてもねぇ。

 あれは、私の知らないところで起きた事だからなんとも……。


「どうしてもそういうことしたいなら、私にバレないように、私が気付かないようにすることだね」

「バレず気付かれず……らじゃ-! 紗希頑張ります!」

「いやいや……頑張られても困るんだけどねぇ」


 紗希ちゃんはあんまり懲りていないようである。 夕ちゃんにも注意するように言っておかなきゃねぇ。 この分だとまた夜這いしに行きそうだし。

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