第360話 お花見開始

 ☆紗希視点☆


 亜美ちゃんに企みがバレて説教された私と奈々美。

 さすがに本気で怒られてしまったわね。 しかーし、バレずにやれれば問題ないのよね?

 ならその方向で色々と考えてみましょうか。


「で、まだ私を巻き込むわけ?」

「まぁまぁ……それよりさっきの話なんだけど本当なわけ?」

「さっきの話って?」

「今井君と浮気したっていう話」


 それは初耳なのよね。 でも、亜美ちゃんが知ってたって事は、亜美ちゃんにバレたか何かって事よね?

 騒動になったりしなかった事を見るに、内々で話しを済ませたって事かしら。


「えぇ……まぁ」

「どういう経緯でそうなったわけ?」

「んー……そんな大したことはないわよ?」


 奈々美がそう言って、話を続けた。


「去年の夏休みにさ、学校の草むしりがあったの覚えてる?」


 夏休みに草むしり……。 たしか、くじで担当を決めて夏休みに集まって草むしりするってやつよね。 私は当たらなかったから草むしりには行ってないけど、たしかあのくじで当たったのは今井君だったわね。 A組は奈々美だったっけ? 愚痴ってたわね。


「その草むしりの当日が、ちょうど台風直撃の日だったのよ」


 そういえば夏休み中に台風あったわね。


「で、台風直撃にあった私達は、一晩学校に足止めされちゃったのよ」

「学校に足止め……ふうん、なるほどね」


 亜美ちゃんが干渉出来ない状況が出来上がったわけね。 なるほどなるほど。


「で、何でそれを亜美ちゃんが知ってたのよ?」

「私も夕也も、誰にも言う気は無かったんだけど、言わなきゃいけない状況になっちゃったのよ」

「何よそれ?」

「んー……私に妊娠の疑いがあったのよ。 結果的にはしてなかったけど」

「なるほど」


 私の知らないとこでそんなことになってたのね。 どうやら幼馴染の5人ですべて解決したっぽいわね。

 でも、そういう状況を上手く作り出せば、私でも今井君を襲って一晩のアバンチュールも不可能じゃなさそうね。


「むっふふん……」

「はぁ……程々にしときなさいよ? わかったでしょ? 怒った亜美は怖いのよ」

「バレなきゃいいんでしょ」

「あんたねぇ……」

「ところで、どうだったの?」

「何が?」

「今井君と浮気してみてどうだったのよ?」

「ま、まあそうねぇ……宏太とはまた違って、良かったような?」

「でしょー? やっぱり同じ相手ばかりだと、ダメだと思うのよ」


 私もたまには別の男性とも経験してみたいなって思うわけ。

 んで、どうせならやっぱ今井君が一番候補なのよね。


「まぁ……否定はしないけども、彼氏のことは大事にしなさいよ」

「それはわかってるわよ。 あいつも私の事は理解してるから、多少の事は目を瞑ってくれるわ」

「どうだか……」

「それにー……バレなきゃいいのよバ・レ・な・きゃ!」


 それを聞いた奈々美は「もう知らん」と言って大きな溜息をついた。


「好きになさい……んじゃ、私はもう寝るから。 また明日」

「んー、おやすみー」


 奈々美は背を向けながら手を振って部屋を出ていった。


「ふうむ……状況を作るのが大事ね……なんとか今井君と2人になれるタイミングを作るしかないか……こりゃ骨折れるわ。 諦めた方が良いかもしれないわ」


 下手に策を講じるより、自然な流れでそうなることに賭けるしかないかしらね。

 私はそう結論を付けて、ベッドに入った。

 明日は楽しいお花見。 余計なことで雰囲気を悪くするのはやめておきましょ。



 ☆亜美視点☆


 翌朝~。 今日のお昼はお花見の予定。 朝ご飯を食べて、時間までは自由行動するよ。

 と言っても出掛けたりは出来ないので、夕ちゃんの部屋に行って少しイチャつくことにしよう。

 紗希ちゃんの事で注意を促さないといけないしね。


 ということで、夕ちゃんの部屋へ向かう。

 ドアをノックすると。夕ちゃんはドアから顔を出す。


「亜美か。 どした?」

「うん。 一緒に時間潰そうと思って」

「そっか、じゃあ入れよ」

「わーい」


 夕ちゃんの部屋の中に入り、ベッドに座る。


「夕ちゃん夕ちゃん」

「なんだ」

「紗希ちゃんが夕ちゃんの体狙ってるの。 注意してね!」

「なんだそれ……」


 私は昨夜の事を夕ちゃんに説明する。 夕ちゃんは、引き攣り笑いしながら「よ、夜這い……」と呟くのだった。

 なんだかやけに夜這いに対して反応するね。


「どうかしたの?」

「いや、なんでも」


 んー目が泳いでる……。 まあ、詮索しても仕方ないか。

 んじゃ早速イチャつきますかね。


「えへへー……」


 夕ちゃんに擦り寄って、腕に絡みつくようにしてくっつく。

 希望ちゃんがいる前では中々イチャイチャできないからね。

 だからこうやって、2人になってゆっくりイチャつくのである。


「んん……」

「朝っぱらから甘えん坊だなぁ」

「いいじゃない……普段はこんなに甘えてないんだし。 んん」


 夕ちゃんとキスしまくって、スイッチが入っちゃった私は、朝っぱらから夕ちゃんに馬乗りになってムフフするのだった。 キャー。


 事を終えて一息……。


「いやー……旅先でテンション上がっちゃったねー」

「防音じゃねぇんだからもっと静かに頼むぜ」

「そ、そんな大きい声出してたかな?」


 夢中で全然気にしてなかったよ……。 たしか夕ちゃんの部屋の両隣は麻美ちゃんと渚ちゃんだっけ……。

 き、聞こえてなかったかな……?


「まあ過ぎたことは仕方ないか」

「そうだね」


 あとでそれとなく2人の様子見てみよっと。


「もうすぐ時間だね。 服着て広間いこっか」

「そうだな」


 

 広間へ来ると何人かはすでに待っていて、 その中には麻美ちゃんと渚ちゃんもいたので顔色を窺ってみると。


「にやにや」

「……」


 麻美ちゃんは意味ありげに私と夕ちゃんを見ているし、渚ちゃんは顔を赤くして俯いている。

 あー、丸聞こえだったかこれー。

 私はあえて何も言わずに素知らぬ顔でソファーに座る。

 2人も特に何か追及してくることはないので一安心といったところである。

 しかし、その向かいの席に座っていた奈々ちゃんが一言。


「朝っぱらからお盛んねぇ」


 どうやら麻美ちゃんの部屋にいたらしい……。

 私も顔を赤くして俯くしかないのであった。


「ささ、皆いるわね?」


 と、皆が揃ったのを確認した奈央ちゃんが声を上げる。


「じゃあ、そろそろ行きましょうか。 近くまではバスで行くから駐車場へ向かうわよ」

「はーい」


 というわけで私達は駐車場でバスに乗り込み、お花見予定地へと移動する。

 車での移動はわずか5分程であったが、荷物を運ぶのにバスの方が楽だっただけのようである。

 それぞれ荷物を持ってバスを降りると、眼前には広い広い桜並木が広がっていた。


「場所取りしてるとこは少し先になるから、歩いて移動ね」

「おう」

「男子は力持ちで頼りになるねぇ」


 重い荷物は夕ちゃんと宏太ちゃんに持ってもらい、特に非力な私と希望ちゃんは軽い荷物で勘弁してもらっているよ。

 少し歩いた先に大きめのレジャーシートが敷かれた一帯が現れた。

 周りには大きい桜の木で囲まれている。 絶好の場所だね。


「ここで、今年のお花見をするわよ!」


 奈央ちゃんが大きく両手を広げながら、高らかにお花見の開始を宣言するのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る