第340話 ファンクラブの活動内容

 ☆亜美視点☆


 私達は、自分たちの非公認のファンクラブがどんな活動をしているのか気になり、男子生徒から情報を聞き出して調査をすることにした。

 情報によると、私のファンクラブは毎週水曜日に、奈々ちゃんのファンクラブは毎週土曜日に特定の場所で集会していることがわかった。


 そして土曜日の今日、奈々ちゃんのファンクラブが集会している場所、駅前の喫茶店へとやってきた。

 その喫茶店の息子を呼び出し、見事に集会所への立ち入り調査を果たしたのである。


 ガチャ……


「おう重田。 今日はこれ以上のメンバーは来ないはずだろ? 誰だよ、俺たちのルールを無視した愚か者は?」


 ファンクラブ会員には何やらルールが存在するらしい。 まぁどうでもいいけど……。


「す、すまない皆……」

「どうしたのかね重田君。 何故謝るのだね」


 そういう君は何故そんな口調なのだね……。


「バレちまったみたいだ……俺達の集会所」

「バレたとは如何なる意味でござるか?」


 ござるさんまでいるのでござるか……。 なんかそういうキャラ作りをするルールでもあるのかな?


「我らがお嬢に、ここがバレたんだよ!」


 奈々ちゃんはお嬢って呼ばれてるんだねぇ……。 私もなんかそんな感じで呼ばれてるんだろうか?


「お嬢に? どういう事なのじゃ?!」


 私はもう、いちいちツッコまないよ。


「こういう事よ」


 ドアを全開にして、奈々ちゃんが部屋に入っていく。 私達も続いて部屋の中へ。

 部屋内の男子たちが無言になり、少しずつ顔を青ざめていく。


「「「お嬢っ?!」」」

「やめぃ!」


 お嬢呼びに奈々ちゃんが物申す。


「あ、あはは……」

「な、何故お嬢がここに……」

「とある男子から情報を貰ったのよ。 彼もファンクラブ会員だったのかしら」

「ぐぬぬ……今週の予定は誰になっていた?」

「会員No96の駿河だ」


 何の話か知らないけど、皆が輪になって何かを話している。 今週の予定とか駿河って聞こえたけど。


「おのれ、情報の出所は駿河の奴か……裏切者め」

「まあ、誰でもいいでしょ?」


 奈々ちゃんは腕を組んで話に割って入る。 威圧感が半端じゃないよ。


「私はね、このファンクラブがどういう活動してるのか気になって視察しにきたわけ」

「か、活動内容の視察?!」


 あからさまに声が裏返り、焦りが見て取れる。 怪しいことしてなきゃいいんだけど……。


「ふふふふふ……さぁ、吐いてもらおうじゃないの。 貴方達の活動のすべてを!」

「ひぃ……」

「な、何か怯えてるよぅ」

「それだけいかがわしい内容があるって事かもしれないね」

「ふふふふふふ」


 奈々ちゃんから黒いオーラが漏れ出ている。 これは血が流れるかもしれないねぇ……。


「まずはこのファンクラブの会長さん。 名乗り出てもらおうかしら?」

「……」


 しーん……。


 黙り込んでしまうファンクラブ会員達。 まさか集会に顔を出していないなんてはずないよね。


「名乗り出てもらおうかしら?」


 更に威圧感を増して言い直す奈々ちゃん。 こ、怖すぎるよ奈々ちゃん……。

 それでも名乗り出ない会長さん。 一体どんな活動していれば、名乗り出るのが恐ろしくなるんだろう。

 奈々ちゃんが男子達をキッと睨むと、数人の生徒がビビッて会長さんと思しき男子の方を指さす。

 ファンクラブの結束が破綻した瞬間であった。


「お、お前らなー!」

「ふぅん。 貴方が会長さん? 確か2Cの有吉君よね?」

「……うぐ……はい……」


 観念したのか何なのかは知らないけど、ガクッと項垂れて頷いた有吉会長。

 奈々ちゃんが話を続ける。


「で、どんなファンクラブなのよこれは? 活動内容を洗いざらい話してもらうわよ?」

「……はい」


 何だかこの世の終わりみたいな顔してるよ会長さん。


「まず、このファンクラブはお嬢に惚れ込んだ男子が集まっておりまして……」

「まあそりゃそうでしょうよ。 顔ぶれを見る限り、私に告って散っていった男子ばかりだし」

「そうなんだ……」

「会員同士で牽制し合って、抜け駆けを防止するという意味もあります」

「な、何それ……」

「はぅー」

「あ、あはは……」


 どうやらそういう事らしい。 話によると、告白するにはファンクラブ会長に申請し、会員達から過半数以上の賛成票がもらえないといけないらしい。 そうやって認められた会員のみが、奈々ちゃんへの告白を許されるのだそうだ。


「会員数は現在102名」

「そんなにいんの?!」


 驚きの人数である。 会員には奈々ちゃんの写真が印刷された会員カードが配られるらしい。

 そのカードを見せてもらう。


「わなわな……」

「うわわ……」

「はぅ……」


 奈々ちゃんの可愛らしい浴衣姿の写真を印刷したものだ。 これは一昨年のかな?

 夏祭りの時に誰かに撮られてたんだね。 それにしてもベストショットだ。

 奈々ちゃんは震えながらも、その会員カードを返す。 よく破り捨てなかったねぇ。


「この集会の参加メンバーは、会長の俺と場所を提供してくれている重田以外は毎週くじで決めています」

「その情報はまあ別にいらないけど……」

「活動内容としては、基本的にはグッズ販売を……月に1回行なってます。 他にもその……鑑賞会をしたりお嬢の歌声に癒されたりなど……」


 うわわ。 思ったより凄いことしてる。 鑑賞会って何?

 奈々ちゃんもそれが気になったのか、鑑賞会について聞き出そうとした。


「……こちらになります」


 何やら円盤を取り出した会長さんが、レコーダーを起動して再生した。

 そこには、奈々ちゃんの学園での日常が記録されていた。 休憩時間、友人と話をしている奈々ちゃんや部活で汗を流す奈々ちゃん等。


「い、いつの間に……」

「凄いねぇ……」

「はぅー……」


 思っていたよりグレーである。 いや、もう黒いよこれ? 奈々ちゃんが訴えたら勝てちゃうよ。


「は、販売されてるグッズってのも見せてもらおうかしら……?」


 奈々ちゃんは、目頭を押さえて何とか耐えながら話を進める。 暴れ出さないか心配だよ。

 会長さんがグッズの数々を床に広げる。

 これまた、どこで撮ったかわからないような写真や、それらがプリントされたバッジ、何故か奈々ちゃんそっくりの模型等々。

 こ、これはライン越えてるーっ。


「うがぁ! 何なのよこれは! どこで撮ったのよこの写真や映像はー!」


 あー、耐えてた奈々ちゃんがついに爆発してしまったよ。 暴走する奈々ちゃんを何とか抑えて、冷静さを取り戻させる。

 他人の家だというのに気にもせずに暴れる奈々ちゃんは、まるで怪獣だったよ。


「はぁはぁ……良い? 今日からこのファンクラブは私の公認のファンクラブにしてあげる」

「おお……」

「ただし! 活動の事前事後報告、および販売物の販売許可申請の提出を義務付けするわ。 あと隠し撮りが見つかった場合は粛清」

「ひぃぃ!」


 奈々ちゃんはファンクラブの存続を認めるという条件で、あらゆるルールに口出しする権限を行使できるようにしてもらったようだ。

 今日の所はこれで帰ることにした私達。 奈々ちゃんも一応は安心したらしい。



 尚、水曜日には私の所のファンクラブにも立ち入り調査を行った。 

 結果、奈々ちゃんの所に似たような活動内容で活動していて、やはりいつ撮られたかわからないような写真や映像を所持していた。

 なので私も、奈々ちゃんと同じようにファンクラブを公認することで、変な活動を抑止する方向で動いた。

 これで、ファンクラブの実態の調査報告を終わります。


「でも、いつあんな写真や映像を撮られたんだろう……怖っ」

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