第339話 非公認ファンクラブを追え
☆亜美視点☆
皆さん、ご存じかもしれないけど希望ちゃんには公認のファンクラブが存在する。
「……」
「はぅ」
現在そのファンクラブの会長さんがやってきて、希望ちゃんの写真の販売許可を求めている。
良いのかなぁ、学校内でそんな商売して……。
ていうかそもそも、その写真どうやって撮ったのよ……ブルル……怖っ。
「うーん……まずその写真見せてもらおうよ? 変な写真があったら没収して、それから決めよう」
「そうだね。 見せてもらえる?」
「はい、わかりました」
そう言うと、すぐにケースから写真を取り出して見せてくれる。 堂々としている辺り、変な写真は無いのかな?
「本当にこれで全部なんでしょうね?」
奈々ちゃんが腕を組みながらジト目で会長さんを睨む。
怖っ。
「大丈夫です。 公認してもらっている以上、姫の信頼を裏切るような真似は絶対にしません」
「ひ、姫……」
希望ちゃんはどうやら、ファンクラブ内で「姫」と呼ばれているようだ。 怖っ。
3人で写真を確認してみる。
体育祭の時の写真や、月ノ祭での写真。 バレー部の試合の写真など、たしかに普通の写真だ。
隠し撮りの類というわけではなさそうである。
「希望ちゃん、どう?」
「うーん、これならまぁ……」
と、希望ちゃんは写真販売の許可を出した。 ファンクラブの存在自体はどうなのか知らないけど、中々良心的な人達のようだ。
会長さんは何度もお辞儀とお礼をしながら去っていった。
「こうなってくるとさ、私達の非公認のファンクラブがどうなってるのか気になってくるわね?」
「うう……なんだか闇を感じるよ」
「あ、あはは……」
しかし、たしかに気になる……。 私達の知らないところで、変な写真が売られている可能性もあるわけだしね……。 希望ちゃんのファンクラブみたいに良心的なものならいいんだけど。
「亜美、調査するわよ!」
「調査って言っても……どうすれば?」
「今日の昼休みなんだけど、男子に呼び出されてるのよ」
「あ、私も」
この手の呼び出しはもう日常茶飯時である。 もう、彼氏がいるって知ってるだろうに何で告白してくるかなぁ?
「その男に、ファンクラブの存在を知ってるかどうか聞くのが手っ取り早いわ」
「うーん……そんな簡単に口割るかなぁ……」
「なんかガード堅そうだよね」
「ふふふ……割らせるのよ」
「怖っ」
◆◇◆◇◆◇
というわけで昼休み──
私は呼び出された屋上にやってきている。 もう慣れきってしまった作業である。
いつものように告白されて、いつものようにごめんなさいする。
で、いつもならこれで終わりのところを、今日はちょっと話を続ける。
「あの、2つほど訊きたいんだけどちょっと良い?」
「え? あ、はい!」
よし……。 まず個人的に気になることを。
「私に彼氏がいるっていうのは知れ渡ってると思うんだけど、どうしてそれでも告白するの?」
「あー……何というか……清水さんにフラれたっていうのが、ある種のステータスになるというか」
「な、何それ」
私にフラれる事がステータス? この学校はどうなっているんだろう?
これ以上聞いてもわけわからなくなりそうなので、この話はここで切ろう。
「んじゃもう1つ。 噂で聞いたことあるんだけど、私の非公認ファンクラブが校内にあるらしいんだよね。 知ってる?」
「えっ?! あー、し、知らないですねー」
怪しすぎる。 これは十中八九何か知っている人間の反応だよ。 何が何でも聞き出すよ。
「本当ぉ? 何か知ってるんじゃないのぉ?」
「うう……」
「教えてくれたら、ここで特別に私の写メ撮らせてあげるよぉ?」
「毎週水曜日に4階の空き教室で定期集会してます」
ちょろいなぁ。 なるほど、そういえば空き教室があるねぇ……あんなところで活動してたんだね。
「ありがとう。 約束通り1枚撮らせてあげるよ。 ポーズも一応リクエスト聞いてあげるけど、変な格好は却下だよ」
「ありがとうございます!」
喜んでポーズを要求して撮影するのであった。 男の子って……。
◆◇◆◇◆◇
「なるほどねー。 水曜日の昼休みに集会ねぇ」
「奈々ちゃんの方は情報聞けた?」
「ええ、ちょっと脅したらあっさり吐いたわよ」
「な、奈々美ちゃんは武闘派だね……」
希望ちゃんは引き攣り笑いをしながらそういうのだった。
「私のとこは学校外で集会してるみたい。 土曜日の夕方に、駅前の喫茶店でやってるらしいわ。 ここの生徒のご両親がやってる喫茶店って話よ」
「ほうほう……じゃあ、曜日的には奈々ちゃんの方が近いね。 今日はもう木曜日だし」
「そうね。 んじゃ、土曜日に視察に行きますか」
「うん」
「なんだか楽しくなってきたね」
希望ちゃんはスパイ映画か何かと勘違いしているようだ。 さてさて、奈々ちゃんのファンクラブはどんな活動をしているんだか……。
「じゃあ、土曜日の夕方、駅前に集合って事で」
「らじゃだよ」
「はーい」
いよいよ、奈々ちゃんの非公認ファンクラブに潜入だよ。
◆◇◆◇◆◇
んで土曜の夕方。 予定より早めに集合して、渚ちゃんの部屋に入れてもらい喫茶店を監視する。
「急に来はるから、どないしはったんかと思うたら……非公認のファンクラブの調査ですか」
「うん。 あの喫茶店行ったことある?」
「何回もありますよ。 そういえば土曜日はやたら客足が多かったような気がしますね。 高校生ぐらいの男性が2階の居住スペースちゅうんですかね? そこに何人も上がっていくのも見たことありますわ」
「それね。 間違いないわ」
確信を得たところで喫茶店の監視をしていると、ゾロゾロと見たことのある男子が喫茶店に入っていくのが見える。 結構な数がいるもんだね。
「奈々美ちゃんの人気からすると、もっといても良いんだけど……」
「まぁ、集会所が喫茶店の居住スペースじゃ、収容人数も限られてるだろうし、人数絞ってやってるんじゃない?」
「多分そうだね」
「さて。 んじゃそろそろ殴り込みに行きますか」
「物騒だよ奈々ちゃん……どんな活動してるのかを調査するだけだから……」
「暴力はダメだよぅ……」
「い、いってらっしゃいです……」
私達は渚ちゃんの部屋を出て、奈々ちゃんファンクラブの集会所となっている喫茶店へと向かった。
からんからーん……
喫茶店の中に入ると「いらっしゃいませー」と声を掛けられる。 普通なら空いてる席に向かうところだけど……。
「すいません。 月ノ木学園2年生の藍沢という者ですけど……重田君はいらっしゃいますでしょうか?」
「息子の友人の方ですか? お待ちください」
そう言って居住スペースへ上がっていくおじさん。 多分お父さんなんだろうねぇ。
しばらくすると、この喫茶店の息子さんである重田君(たしかC組)が降りてきた。
「うげ……あ、藍沢さん?!」
「ふふふふふ……ちょーっと上がってもいいかしらーん?」
「あわわわわ……」
重田君は狼狽えている。 なぜバレたって感じだねこれは。 しばらく慌てふためいていたが、奈々ちゃんがファンクラブの名前を出したところで諦めたのか、私達を居住スペースに上げてくれた。
潜入成功である。
次回へ続くよ!
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