第292話 モテモテ美女軍団?

 ☆亜美視点☆


 今日はクリスマス。

 今年はなんと、奈央ちゃんの家で行われるクリスマスパーティーに出席させてもらっている。

 相変わらずとんでもない規模のパーティーで、私達一般の人間は肩身が狭いこと狭いこと。

 一応奈央ちゃんがその辺りは配慮してくれており、私達の為に専用のスペースを確保してくれている。

 とはいえ、目の前ではテレビで見たことのある大物芸能人や政界の人間もおり、やはり気が気じゃない。


「んむんむ……美味しい~」


 しかし、今はお腹が空いているので、気にせずまずは目の前の料理をいただくとする。

 周りの人が来ても奈央ちゃんが応対してくれるとのことなので、今は気にしないようにしよう。


「そうだ。 バスケ部どんな感じなんだい?」


 料理を食べながら、遥ちゃんが訊いてきた。

 バスケ部は現在、ウインターカップに出場している為東京にいる。

 なのでこの場にはいない。


「1回戦は難なく勝ったみたいですよ」


 と、何故か渚ちゃんがそれに答える。


「何で渚ちゃんが知ってるの?」

「うぇっ?! そ、それはその……ネット中継で観戦を……」


 どうやら、渚ちゃんもネットチケットを購入してネット中継で観戦しているらしい。

 バスケットボールが好きというわけではないのだろうけど……ははーん、さては夕ちゃんの応援だね。

 陰ながらひっそりと応援……健気である。

 私さえいなければ、もっと積極的になってたんだろうか?

 少し罪悪感である。


「へえ、順調な滑り出しってとこかー」

「さすがだねー夕也兄ぃと宏太兄ぃ」

「そうよねー。 あの2人がレギュラー入りするまでは精々県止まりレベルだったでしょ?」

「そうなんですねぇ……もとから強かったわけじゃないんや……」

「それ言ったら、私達バレー部もそうよ? 私達の前の世代は地区大会レベルだったんだから」


 奈々ちゃんが言う通り、私たちが入学してきた時は本当に地区レベルであった。

 でも、私達が入学したことで戦力アップ、先輩達もメキメキ上手くなっていった。

 元々力はあったはずなんだけどなぁ。


「んむんむ……」

「今の先輩達が引退した後は、どうなるやろ?」

「んー? まあまあ、県レベルでは戦えるんじゃない?」


 1年の2人は、私達が引退した後の事を考えているようだ。

 今の1年生も割とレベルは高いので、私達が抜けても大丈夫だと思うけどなぁ。

 練習試合や大会の予選は、出来るだけ1年生に試合の機会を与えている。 経験は十分積んでる。


「別に心配無いわよ、あんた達なら」


 奈々ちゃんもそう言っている。

 1年の2人は、頷き応えた。

 なんて、話をしていると、どうやら奈央ちゃんにお客さんが来た。 どうやら挨拶に来たらしい。


「はぅっ」


 私達は小さく会釈して、後は奈央ちゃんに任せる。


「奈央さん、お久しぶりです」

「はい、お久しぶり。 最近はドラマでも主役を張ってらっしゃいますわね」

「あはは。 はい、少しずつですが、認められてきたようで」


 挨拶に来ているのは、最近テレビでよく見かける若手の俳優さんだ。

 草食系の甘いマスクが、女性から人気なのだそうだ。


「そちらのお嬢様方は?」

「私の仲の良い友人達ですの」


 と、紹介されたので再度会釈する。


「奈央さんのご友人ですか。 皆さん垢抜けていらっしゃるから、アイドルグループかと……ん? そういえば皆さんを何処かで」


 うわわ、口説きの定番「以前何処かで」だよ。


「新聞かスポーツニュースではありませんか? 私も含めて皆、バレーボールの全国チャンピオンですから」

「あー! 思い出しました。 スポーツ新聞ですね。 特にそこの青髪の女性は大きく一面に載ってました」

「あぅ、お恥ずかしい」

「いやいや、世界で活躍されているなんて素晴らしいです。 どうでしょう、この後私と一曲踊りませんか?」


 まさかのダンスのお誘いである。

 どうしよ、断ると奈央ちゃんの印象も悪くなってしまう……。


「うふふ、私を差し置き、友人を口説くなんて大胆な事をしますわね」

「あ、いえいえとんでもない!」

「友人達はこういう場には不慣れですので、出来ればお控え下さるとありがたいのだけど」

「あー、なるほど……失礼をいたしました……」


 と、深々と私に向かって頭を下げる。


「い、いえいえ! あの、すいません! せっかくのお誘いを」

「ははは、出来たご友人ですね」

「自慢の友達よ」

「そうですね。 それでは、失礼します」


 頭を下げて、席から離れていく俳優さん。


「亜美ちゃん凄いじゃーん。 あれ沢北大地でしょ? 人気若手俳優に口説かれるなんてヤバイっしょ」


 紗希ちゃんは大興奮している。

 凄いしヤバイかもしれないけど、私は全く興味が無いので逆に困るよ。


「でも亜美ちゃんは、芸能人から見ても魅力的なんだね」


 希望ちゃんがそんな事を言い出した。

 別にそんな事無いと思うんだけど。


「奈々ちゃんや紗希ちゃんの方が、男性ウケは良さそうだけどねー」

「どうかしらね」

「じゃあさー、この後試してみる?」

「試す?」


 紗希ちゃんの言葉に、全員が首を傾げる。

 また変な事を言い出さなきゃ良いけど……。


「最後にダンスタイムがあるでしょ? そこで、誰が一番多く誘われるか」

「はぅっ…私はパスだよ」


 紗希ちゃんの提案に、速攻でリタイア宣言する希望ちゃん。

 ダンスタイムは外に出て、夜風にでも当たるつもりなんだよね。

 夕ちゃんや宏ちゃん以外と、ダンスを踊るつもりもないし。


「私もパスかなぁ」

「えー、亜美ちゃんが参加しないんじゃやる意味ないなぁ……やっぱ無し!」

「先輩達は、誘われたら踊りはるんですか?」

「私は毎年踊ってるわよ」


 奈央ちゃんはまあそうだろう。

 一応、主催側の人間だしかなり誘われるはずだ。

 断るのも失礼だろうしね。


「私は踊ろうかなー」

「私もー」


 紗希ちゃんは、何回かこのパーティーに参加してるみたいだし慣れているようだ。

 麻美ちゃんは意外にも参加するらしい。

 渚ちゃんは私達同様パス。

 遥ちゃんもパスするらしい。


「私はちょっとだけ踊ろうかしら」

「奈々ちゃんは踊るんだぁ」

「ま、何事も経験ってね」


 奈々ちゃんらしいというか何というか。

 肝が座ってるなぁ。

 パス組は仲良くテラスでお喋りだね。


 なんて話していると、今度は5人ぐらいの男性がやってきた。

 この人達は有名アイドルグループだったかな?


「あら、皆さんお揃いで」

「ご無沙汰してます、西條様」


 うわわ、有名アイドルグループさえも奈央ちゃんには頭が上がらないようだ。


「新曲、素晴らしい曲でしたわよ」

「ありがとうございます。 ところで皆さんは西條様の友達で?」

「はいそーでーす」


 元気に応えているのは紗希ちゃん。

 物怖じしないなぁ。


「あまりに綺麗どころばかりだから、遠くからでも目立ってますよ、皆さん」

「あはは……ありがとうございます」


 私は軽く返しておく。

 その後、紗希ちゃんや麻美ちゃんは、メンバーの人と何故か仲良くなり、話し込み始めるのだった。

 私や希望ちゃんも話しかけてもらったらけど、緊張してしまった。

 5分程経ったところで、奈央ちゃんが話を切ってくれて、お客さん達は手を振り離れていった。


「あの浅田君と、ダンスの約束しちゃったよお姉ちゃん!」

「良かったじゃん。 あんたファンでしょ」

「うむ!」


 なるほど、ファンだったんだ。

 

「それにしても、貴女達……本当にモテますわねぇ」


 奈央ちゃんは、頬杖をついて呆れ顔でそう言うのだった。

 

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