第281話 久しぶりの3人デート

 ☆夕也視点☆


 11月も中旬の土曜日。

 今日は以前から亜美とデートの約束をしていたのだが、後から希望も今日月1のデートをしたいと申してきた。

 ブッキングはまずいので希望には悪いが断ったのだが、それを聞いていた亜美が「じゃあ久しぶりに3人でデートすればいいじゃん」と言ってきたので、結局そうなった。

 亜美は何でも楽しむことを優先する節がある。

 良い事ではあるんだが、俺と2人の時間よりも3人でいる方が好きなんだろうか?


「んむんむ」


 で、現在は朝飯の時間。

 最近は麻美ちゃんや渚ちゃんの料理教室も開かれていないようだが、終わったのだろうか?

 それを聞いてみると……。


「ううん? まだ続いてるけど、でも2人とも自信ついてきたみたいだから、独学で勉強してるみたい」

「そうなのか」

「んー? 2人の料理食べたいの?」

「え?」

「しょうがないなぁ。 じゃあ明日呼ぼう」


 勝手に話が進んでしまった、

 まぁいいか。 賑やかな食卓は良いものだし。


「2人の料理、美味しくなったよね。 亜美先生の教え方が上手なんだろうね」

「いやいや……」

「実際上手いんだろ? 最初の頃は希望も全然ダメだったのに、今じゃ人並み以上の腕前だからな」


 中学に上がりたてだった頃の希望の料理は、何だか良くわからない塊だったりしたからな。

 成長したもんだ……料理の腕も精神面も……あと体も。


「夕也くん、顔えっちだよ」

「な、なんのことかな?」

「あはは。 さあさあ、早く食べてデート行くよ」

「そんな急かすなよ」

「そうだよぅ」


 まだまだ朝早い。 もうちょっとゆっくりしてからでも良いと思うのだが。


「で、今日はどこ行くんだ?」

「うん? 最初は希望ちゃんが行きたがってるボケねこパークってとこだよ」

「わくわく」

「なんだそれ……」


 ボケねこパーク? ショップとは違うのか……?

 話を聞くと、大人気キャラになったボケねこは、ついに専用のテーマパークまで出来るほどになっていたそうだ。

 アレの何処がそんなにいいのだろうか?

 周辺の女子の友達でもアレを推してるのは熱狂的ファンの希望と紗希ちゃん位だが、本当に人気キャラなのか?


「で、それはどこにあるんだ?」

「結構近いよ」

「そうなのか」

「うん。 電車で40分」

「近いのか?」


 結構微妙な距離だと思うのだが。

 どうやら千葉県の端っこにあるらしい。

 よくまぁそんな所にできたな……ご都合展開だな。


「遊園地みたいな感じか?」

「うーん。 まぁネズミさんの国みたいなとこだよ」

「あぁ……なるほど」


 あの奇妙なバカ面の猫の着ぐるみが、パーク内を闊歩している姿を想像する。

 あぁ、何というか異様な光景になりそうだ。



 ◆◇◆◇◆◇



 といううわけで、朝飯も食い終わり3人で目的地へ向かう。

 そういえばさっき何処へ行くのか聞いた時「最初は」って言ったよな? ってことはその後も何かあるのか?


「なぁ、そのバカねこ……」

「ボケねこ」

「……その後もどっか行くのか?」

「その後は、亜美ちゃんが紅葉狩りしたいって」

「紅葉狩り?」

「うん。 ちょうど近くに良い遊歩道があるんだって」

「そうか。 了解」


 ゆっくり散歩デートってのも良いだろう。

 3人で遊ぶものをデートと呼ぶかは知らないが。


「ボケねこボケねこー」

「亜美はあれをどう思う?」

「あんまり可愛くはないと思うよ……でも多分、あの感じがウケてるんだろうね」

「可愛いよぅ」


 希望や紗希ちゃんの感性はよくわからないな。

 

「希望ちゃんは可愛いねぇ」

「はぅ」

「可愛いのは間違いないわな」

「うう……」

「あはは」


 俺を挟んで座る2人は、相変わらず仲のいい姉妹である。

 こんな2人に囲まれて、俺は幸せ者なのかもしれない。

 さっきから「リア充爆ぜろ」という痛い視線を感じるが、全く気にならないのであった。

 

 40分ほど電車に揺られれて、下車する。

 普段は下りない駅なので、土地勘がさっぱりである。


「どっちだ、そのテーマパーク」

「んと……」

「こっちだよっ! 波動をビンビン感じるよ」

「うわわ、出たよボケねこの波動」


 ボケねこファンは何故か皆持っている謎のセンサー。

 本当かどうかは疑わしいが、どうやらそれでボケねこの波動をキャッチしてボケねこを探し当てることができるらしい。


「こっちー」

「はいはい」

「ほんとかなー……」


 亜美はまだ信じてないようだ。

 まぁ俺も信じられないんだけど。

 しかし希望は自信満々に突き進んでいく。 俺達もよくわからんので、仕方なくついていくしかないのであった。


「ここをこっちー」

「……」

「……」

「真っすぐ行ってー次の交差点を右ー」

「……」

「……」


 迷いないな。

 地図を見ていた様子もないしまさかなぁ。


「うわわ、看板出てきたよ」

「まじか……」


 なんと、本当にボケねこパークの看板が出てきた。

 この道を真っすぐ徒歩5分らしい。

 恐るべしボケねこセンサー。


「さぁ! どんどん行こうー」

「私、希望ちゃんが怖くなってきたよ」

「俺も」

「ボーケーねこーのー口はー開きっぱなしー♪」


 なんだか変な歌まで口ずさみだした。

 

 看板の通りに5分ほど歩いたところで、パークの門が見えてきた。


「ボーケーねこーのー口はー開きっぱなしー♪ 目はいつも上を向いてるー♪」


 スピーカーから、先ほど希望が口ずさんでいた歌が流れてきた。

 まさか、ボケねこのテーマ曲なのだろうか。


「人をーバカにしたよーなー表情のねーこー♪」

「ひでぇ歌だな……」

「うん……」

「入場券買って入ろうよー」

「お、おう」

「うん」


 意気揚々と入場券売り場まで歩いて行った希望だが、受付のお姉さんの前でピタッっと止まり、小さくなる。

 さっきまでのテンションはどこへやら……。


「人見知り発動しちゃってるし……しょうがない子だよ」


 亜美は苦笑いしながら希望の横まで歩いていき、受付のお姉さんから入場券3人分を購入した。

 さらに、期間限定のボケねこキーホルダーまで貰えるらしく、希望にプレゼントしていた。


「ありがとー」

「私はいらないからね。 残りは紗希ちゃんにでもどうぞ」

「うん。 じゃあ入ろう。 ボーケーねこのー♪」


 またテンションが戻る希望。 ようわからん奴だ。

 入場券を機械に通して、パーク内へいざいざ。


「はぅー! ついに来たよボケねこパークー!」


 大きく手を広げて、これまた大きな声を上げて喜びを目一杯に表現する。

 本当に好きだな。


「さぁ、夕也くん、亜美ちゃん! 遊びたおすよ!」

「はーい」

「へいへい」


 先陣を切って進み希望の後を、2人でついていく。

 周りには、ボケねこのぬいぐるみを抱えた女性、風船を持った女性など、結構な人数の客が来場しているようだ。

 本当に人気あるんだな。

 中央広場に出ると、巨大な看板が立っていた。

 どうやらパーク内の案内図らしい。

 どうやらかなり広いようだ。

 ボケねコースターやボケねこ屋敷、ボケねコーヒーカップなど遊園地でみられるようなラインナップの他に、ボケねこの森、ボケねこステージといったものがあるようだ。

 さて、最初はどこへいくのやら。

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