第282話 ボケねこの森
☆希望視点☆
今日は亜美ちゃん、夕也くんと3人でデート。
亜美ちゃんが行きたい場所を譲ってくれて、今回は念願のボケねこパークへやってきました。
私の大好きなボケねこのアトラクションやステージ、売店などがあって目移りしてしまう。
まずはどこから行こうかな。
「希望ちゃんったら、子供みたいにはしゃいじゃって」
「はぅっ? 良いじゃんっ」
「い、良いんだけど……」
ボケねこの聖地に来たんだから、はしゃいで当然。
むしろ平然としている亜美ちゃんと夕也くんの方がおかしいんだよ。
「さーて、じゃまずはボケねこの森へ行こう!」
最初はボケねこの森というアトラクション。
いわゆる迷路である。
しかも、迷路の中にはボケねこの家や遊び場なんかが再現されている。
「どこへでもお供しますよー」
「好きに回れ」
「おー!」
私は意気揚々とボケねこの森へと向かうことにした。
向かう途中で大通りを歩いていると、人だかりができているのを発見した。
中心に着ぐるみのようなものが見える。
あれは何だろう?
「なんか人が集まってるねぇ」
「うん。 ちょっと行ってみよう」
「あいよー」
少し寄り道をして、人の集まる場所を覗いてみると……。
「なんだ、ボケねこの着ぐるみが囲まれてるのか」
「でも、顔が違うよ? 口開きっぱなしの目は上を向いてる、人を馬鹿にしたような表情じゃないよ?」
亜美ちゃんの言うとおり、表情はボケねこのものではない。
歯を食いしばり、目はつり上がったような表情のこの着ぐるみは……。
「オ、オコねこさんだよぅ!」
「オ、オコねこ?」
「バリエーションまであるのか……」
「オコねこさんはボケねこの友達で、凄く短気な性格なんだよ。 そのせいで顔つきがあんな風になっちゃったんだ。 いっつも怒ってるけど、ボケねこはバカだから何とも思わないんだよぅ」
オコねこさんはふきだし看板に「てめえらじゃまだーどけー」と書いて掲げているものの、誰一人どかないどころかさらに人は増える。
私も揉みくちゃにされながら、接近を試みる。
「はぅーっ! せめて一撫でぇ!」
普段では考えられないほどに積極性を出して、人ごみの中をかき分けていく。
「よいしょっ!」
何とかかんとか、一番前に躍り出てオコねこさんと対面。
おー怒ってるよ。
しかし私は気にせずに、そのお腹をさわさわと触る。
─ミッションコンプリート─
私は満足して、人ごみの中から抜け出す。
「お、おかえり……凄い執念だね、希望ちゃん……」
「あんな強引な希望は初めて見たぞ……」
「ふふーん! ボケねこ関係のことなら何でもできるよ」
「へ、へぇ……」
亜美ちゃんと夕也くんは、顔を引きつらせながら微妙な表情を浮かべていた。
満足したところで、当初の目的であったボケねこの森へと向かうことにした。
「ボーケーねこのー♪」
「なぁ、あれ以外にもバリエーションっているのか?」
「いるよぅ。 ねこシリーズだけじゃないしね」
「なぬ……」
「ねこ以外もいるの?」
「うん。 あ、ほらあれ」
ちょうど良いところに壁紙があったので、それを指さして説明する。
「あの常に泣き顔なのがメソねこちゃん。 鼻の下が伸びてるのがデレねこくん。 で、あのおまわりさんの格好をした犬がポリどっぐさん。 あそこに居ない子もまだまだいっぱいいるんだよ」
「へ、へぇ……」
「犬までいるのかよ……」
「さぁ、ボケねこの森はすぐそこだよぅ!」
歩を進めていくと、ボケねこの森と書かれた看板が見えてきた。
結構な人数の列ができているが、私は気にせずに並ぶ。
20分待ちとなっているが、特に問題無いよ。
「20分か。 ちょっと待つぐらいだな」
「そだね」
「ボケねこの為なら何時間でも待つよ」
亜美ちゃん、夕也くんにボケねこの素晴らしさを説いていると、あっという間に順番が回ってきた。
なぜか亜美ちゃんと夕也くんは、疲れたような顔をしている。
まだ最初のアトラクションなのに情けないなぁ、と思いつつもボケねこの森へと入るのであった。
中は迷路のような構造になっていて壁は森に見立てて垣根に植えた植物達となっている。
「迷路って、壁に手をつきながら歩けばゴールできるんだよね?」
「希望ちゃん、それは罠だよ」
「はぅ?」
亜美ちゃんが、そういうと、絵を描いて説明してくれた。
その絵は、壁沿いに歩いてもぐるりと一周するような構造になっており、気づかなければ同じところをぐるぐる周るだけになってしまうというものである。
「ね? こういうのもあるから気を付けないと。 ちゃんと、道を歩いてどんどん候補を潰していくほうが確実だよ」
さすがは亜美ちゃんである。
危うく私は、ボケねこの森で一生を過ごす羽目になるところだったよ。 亜美ちゃんに感謝。
「マッピングは私に任せて、希望ちゃんの好きなように歩いていいよぉ」
「はーい」
「亜美、マッピングってノートとかあんのか?」
「脳内マッピングだよ」
「へ、へぇ……」
亜美ちゃんに任せておけば、何の心配もいらないのである。
私は思うがままに迷路を進み、行き止まりにぶち当たっては引き返す。
中々正解ルートに乗れないけど、亜美ちゃんが完璧に道順を記憶しているものだから、確実に先へ進んでいる。
少し歩くと、大きな家のような建物が見えてきた。
そこへ近づいていくと、先ほど私達より早くスタートしたグループが中から出てきた。
表札には「ボケねこ」と書いてある。
「おおー! ボケねこのお家だよ! 入れるみたいだし入ろうよ!」
「うんうん」
「どうなってるんだろうな」
扉を開けて中へと入っていく。
家の中に入ると、中はベッドやテーブルが置いてあり、意外と普通な感じの家に住んでいるようだ。
食べる物はキャットフードのようだ。
鉢植えには何故か猫じゃらしが突き刺さっており、猫の家であるという事をアピールしている。
「あそこ、ボケねこさんの置物があるね。 撮影ポイントなんじゃない?」
「おおー本当だ」
私は早速そのボケねこの隣に立ってみる。
「亜美ちゃん、撮って!」
「はいはい」
亜美ちゃんはデジカメを取り出して、私とボケねこの置物を撮影してくれた。
「はい。 こんな感じだよ」
どんな風に撮れたかを、私に見せてくれる。
とても仲良さそうに映っていて、私は満足だ。
「うん。 ありがとう!」
一通り家の中を見て回った後、私達はボケねこの家を後にして森の攻略を再開した。
相変わらず亜美ちゃんは迷路の道順をすべて記憶しているようで、私が反対方向へ進もうとすると「そっちは戻るよ」と止めてくれる。
そうやって、亜美ちゃんの言葉を頼りに道を進んでいくと、出口が見えてきた。
そして出口の前にはボケねこの着ぐるみが立っていた。
どうやらここでも撮影できるようだ。
「亜美ちゃん! 一緒に並んで撮影しよう」
「え、わ、私は別にぃーうわわわー」
遠慮する亜美ちゃんの手を無理矢理引っ張って、2人でボケねこの隣に立つ。
デジカメを夕也くんに渡して。
「夕也くんお願いねー」
「はいよー」
夕也くんに撮影してもらい、ボケねこさんの着ぐるみに手を振り、ボケねこの森を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます