第242話 5人の夏祭り

 ☆亜美視点☆


 今日は夏祭りの日。

 天気も良いし楽しみである。

 今年は別に浴衣を着たりするつもりもない。


「夕方ぐらいに駅前集合だよね」


 今は軽く化粧をしたりして準備中。

 皆とのお揃いのブレスレットや、夕ちゃんから貰ったネックレスは欠かせない。

 希望ちゃんも同じものを身に着けるようだ。

 そういえば、春くんが日本に遊びに来てからちょくちょく一緒に遊んだけど、あんまり一杯は遊べてないなぁ。

 今日も奈央ちゃんと回るんだろうし、明日以降の数日でちょっと遊べればいいなぁ。

 

 チャララン……


「ん、メール? 奈々ちゃんからだ」


 奈々ちゃんからのメールを開くと、麻美ちゃんと並んで浴衣を着ている画像が貼ってあった。

 奈々ちゃんは今年も浴衣着るんだねぇ。


「可愛いねっと」


 と、返信しておく。

 奈々ちゃんは身長もあるし、浴衣も似合うなぁ。


「むうう、劣等感」


 無い物ねだりをしても仕方ないのでそこは諦める。


「さてと、ちょっとだけゲームでもしようかな」


 麻美ちゃんから貰ったパソコンで、麻美ちゃんのオススメのゲームを最近やっている。

 麻美ちゃんと一緒に協力プレイというやつをしているのだけど、今は1人だ。



 ◆◇◆◇◆◇



「おっとと、そろそろ出かけないとね」


 パソコンを立ち下げて、出かける用意をする。

 

「希望ちゃーん、行くよぉ」

「はーい」


 希望ちゃんの部屋に声を掛けて、出てくるのを待ってから家を出た。

 夕ちゃんも呼び出して、いつもの十字路で奈々ちゃん達とも合流。


「おお、奈々美ちゃんと麻美ちゃん、浴衣可愛い!」


 希望ちゃんは、2人の浴衣を見て絶賛。

 可愛いよねぇやっぱり。


「ありがと希望姉!」

「さぁ行きましょ」

「おう」


 6人で、皆との待ち合わせ場所を目指す。


「しかし、亜美達は浴衣じゃなくていいのか?」

「うん。 動きやすい方がいいし」

「動きやすいって、またナニしようとしてんのよ」

「ナニもしないよ?! 希望ちゃんもいるのに!」

「あ、あはは」


 何言ってるんだか奈々ちゃんは。

 大体お祭り中の人ごみの中でナニなんて出来るわけないし。


「ナニって何?」

「麻美ちゃんは知らなくていいんだぞ」

「えー」


 周りが夕焼けのオレンジに染まる中、仲良く話しながら駅前までの道のりを歩く。

 見回せば、家族連れや友人グループといった感じの人たちも、多数見受けられる。

 皆、お祭りを楽しもうという人達だね。


「そういえば、麻美ちゃんは去年友達と一緒だったんでしょ? 今年は?」

「今年もだよー。 向こうで同級生と合流!」

「そなんだね」


 渚ちゃんも一緒らしい。

 うんうん、友達は大事にしないとね。


 駅前広場へやってくると、先に奈央ちゃん達が来て待っていた。

 麻美ちゃんとは別れて、そちらに合流する。


「お待たせ―」

「あ、来た来た」


 奈央ちゃん達に合流すると、遥ちゃんがやたらおめかししている。

 どうしたのかな?


「遥、どうしたのそれ?」


 奈々ちゃんが代わりに訊いてくれた。

 で、その答えを紗希ちゃんが教えてくれる。


「遥がね、ジムの噂の彼を誘ったらしいのよ」

「さ、紗希ぃ……」

「おお、遥ちゃんから誘ったんだ!? いいね!」

「それで、私達が色々手を貸してあげたってわけ」

「うんうん、可愛いよ遥ちゃん」

「か、かかか……可愛い……」


 顔を真っ赤にした遥ちゃんも可愛い。


「さて、皆集まったみたいだし行きましょうか」

「そうねー。 遥はここで待ち合わせでしょ」


 コクコクと頷く遥ちゃんを置いて、私達はバラけることにした。

 駅前通りの方から回るよ。

 どっちからでもぐるりと1周するだけだけどね。


「あ、奈々ちゃん達もこっち?」

「そうよ」

「そっかそっか」

「なんなら5人で回る?」


 と、私が提案しようと思って、でもやめとこうと思った提案を奈々ちゃん側がしてくる。

 宏ちゃんと2人で回らなくていいのかな?


「良いの?」

「良いわよ。 ね、宏太?」

「おう。 中学時代みたいに幼馴染で集まって回った方が楽しいんじゃないか?」


 奈々ちゃんと宏ちゃんはOKという事なので、それなら気にする事は無いね。


「5人で遊ぼう!」

「いいね!」

「よっしゃ行くか」


 幼馴染5人で集まって、改めてお祭り回り開始だ。


「で、まずは食い物からだよな」

「宏太ったら……」

「あはは、佐々木くんらしいね」


 宏ちゃんはお腹を空かせているらしいので、まずは食べ物屋台へ行くことにした。

 ちょうど近くに焼きそば屋台があり、そこへ足を向けることに。


「あ、八百屋のおじさん。 今年も焼きそばなんだ?」

「おお、幼馴染5人組勢揃いじゃないか。 うちの八百屋の野菜を使った焼きそばだぞ」

「皆食べる?」


 一応確認してみると、皆が頷いた。

 なんだかんだ言って、皆お腹空いてるんだね。


「5人前お願いね、おじさん」

「あいよぉ」


 注文を受けると、足りない分の焼きそばをテキパキと焼き始める。


「佐々木の坊主と奈々美ちゃんはまだ交際続いてるんだってな?」

「ええまぁ」

「そっちは?」

「はぅ……亜美ちゃんに盗られちゃいました」

「あー……そうかぁ。 元気出しな希望ちゃん」

「元気ですよ」

「そうかい。 よし、希望ちゃんのは特別に大盛りだ!」

「おっちゃん、俺のも!」

「わかったわかった!」


 結局皆大盛りになるのだった。


「んまんま……」

「おっちゃんの焼きそばは美味いな」

「んだな」

「毎年やってるわよね。 焼きそば屋さんでもすればいいのに」

「それはどうかなぁ?」

「あのおっちゃんは八百屋が天職だろ」


 小さな頃からずっと贔屓にしている八百屋さん。

 いつもおまけをしてくれる優しいおじさんが私は大好きだ。

 奈々ちゃんも希望ちゃんも可愛がってもらっているようだ。


「んむんむ。 んぐ。 次どうする?」

「んん……あそこで輪投げやってんぞ」

「バスケ部なら余裕よね?」

「いや、勝手が違うだろ……」


 ということで、夕ちゃん達と輪投げをすることになりました。

 私も頑張るぞ。


「えぃ」


 スポッ


「入ったよ!」

「さすが亜美ちゃんだね」

「よーし、えぃっえぃっえぃっ!」


 連続して投げてみると、面白いように入ってしまう。


「亜美、あんたは輪投げも完璧なの?」

「あぅ……」


 このままじゃ、また化け物扱いだよ。

 わ、わざと外さないと。


「え、えぃっ」


 外れるように投げた輪っかは、当然棒には入らず下に落ちる。


「あちゃー、外れちゃったなぁ」

「わざとね」

「だね」


 バレていた。

 その後も、皆が順番に輪投げをやって、優勝は私になってしまった。

 勝負してたの?


「よし、次だ次。 金魚すくいで勝負だ」

「どうせ亜美が水槽の金魚全部すくって終わりでしょ」

「オチが見えてるね」


 奈々ちゃんと、希望ちゃんは何気にひどい。

 いくらなんでも、そんな事が出来るわけ──。


「お、お姉ちゃん……何者だ?」

「あ、あははは……」

「やっぱりね」

「わかってたよね」


 私の手には大量に金魚が入った入れ物、目の前には金魚のいなくなった水槽。


「こ、このポイ、破れないやつなんじゃないかな?」


 金魚屋台のおじさんは黙って首を横に振るのだった。


 すくった金魚はいらないので、全て水槽に返してあげた。

 夕ちゃんや奈々ちゃんも挑戦したけど、5匹ぐらいが限界だった。

 これじゃまるで、私が化け物みたいだよ。


「むぅ」

「何を膨れてるんだよ?」

「何か私に出来ない事探してよー」


 他人が聞いたら怒るだろう台詞。

 夕ちゃんも奈々ちゃんも、即答で「知らん」と言うのだった。

 少し歩いていると、奈央ちゃんのカップルと、紗希ちゃんのカップルが射的で遊んでいた。

 そういえば、去年は春くんに教えてもらったっけ?

 よし、今年は夕ちゃんに教えてもらうよ。


「紗希ちゃん、奈央ちゃんやっほー」

「あら皆さん」

「やっほー」


 紗希ちゃんが元気な挨拶を返してくれた。

 チラッと射的の方に目をやると、春くんと柏原君が射的を遊んでいた。


「裕樹ってば相変わらず下手っぴなのよ」

「ほっといてよ!」

「あはは」

「今井君、情けない裕樹の代わりにあのボケねこ夏祭りバージョン取って!」

「ん? 俺だって取れるかわからないぞ?」

「裕樹よりは可能性あるわよ」


 柏原君は泣いていいと思う。

 ボケねこと聞いて黙ってないのがもう1人。


「夕也くん! 私のも! 佐々木くんでも良いよ!」

「じゃ、私も狙ってみるね」


 という事で、景品被りしないようにまず私から。


「夕ちゃん、教えてー」

「亜美ちゃん、去年北上君から教わってなかった?」


 紗希ちゃんが何気無く言う。

 しまった、あの時は紗希ちゃん達がいたんだっけ。


「わ、忘れちゃってー」

「嘘ね」

「うん。 夕也くんに教えてもらいたいだけだね」


 奈々ちゃん、希望ちゃんにはしっかりバレていた。

 それでも夕ちゃんは、私の後ろに立って優しく教えてくれた。


「まさに手取り腰取りね」

「羨ましい」


 後ろから何か聞こえるけど気にしない。

 さて、希望ちゃんの為にバカねこさんのぬいぐるみ取るよ。


「ボケねこ」

「心の声にツッコミ入れるのやめてほしいなぁ」


 集中して……引き金を引く。


 パンッ!


 コルクはボケねこさんに命中。

 当たり所が良かったのか、大きくぐらついたぬいぐるみは、頭の重みに負けて後ろに倒れた。


「やった! 希望ちゃん、取ったよ!」

「亜美ちゃんありがとう! 大好き!」


 後ろから抱きついてくる希望ちゃんに、ぬいぐるみを手渡してあげる。

 こんなことで喜んでくれる我が妹。

 可愛らしいなぁもう。

 その後、夕ちゃんも挑戦して、紗希ちゃん用のぬいぐるみをゲットしていた。

 柏原君の前で夕ちゃんに抱きつくのはやめた方が良いよ、紗希ちゃん……。

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