第241話 他校との交流

 ☆夕也視点☆


 今日は8月25日。

 女子は女子だけで遊びに行ってしまい、とても退屈していた。

 宏太はまあ構わないが、春人を放ったらかして遊びに行くのはどうなんだ?

 せっかく日本に遊びに来てくれているのに……。


「しゃーねぇーなー」


 スマホを手に取り、宏太と春人に連絡を入れる。

 男子は男子で、何処かへ遊びに行こうじゃないか。



 ◆◇◆◇◆◇



 で、駅前へやって来たわけだ。


「華の無い絵面だな、おい」

「仕方ないだろ。 女子は女子で集まってどっか行ったんだからよ」

「何処へ行ったんでしょうね?」


 そういえば、行き先は聞いてなかったな。

 宏太も春人も聞いていないらしい。

 案外、隣町とか市内に行けば遭遇するかもしれない。


「で? このむさ苦しい面子で何処行くんだよ?」

「せっかく春人がいるんだ。 ストバスやりに行こうぜ」

「良いですね」

「俺らが集まってやる事って言ったらそれしかねぇか」


 特に反対意見も無いので、それに決定。

 早速隣町のバスケコートへと向かう。


「そういえば、インターハイは3位だったんですね」

「うっ……」

「ぐぬぅ……」

「やはり、僕がいないと勝てないんですね?」


 珍しく煽りよる。

 が、春人が抜けた穴はかなり大きかったのは事実だ。


「まあ、勝てないわけじゃない。 思った以上に戦力ダウンしていたのは事実だが」

「そうですか」

「まあ、兵庫の青柳高校は素で強いからな」

「やはり、あのチームですか」

「あぁ……もうちょっとだったんだがな」


 とか言いながら、82ー64とかいうスコアだったのだが……。


「冬はリベンジしてやる……」


 佐田さんは3年生。

 ウィンターカップがリベンジする最後のチャンスだ。


「頑張って下さい」


 春人は、優しい笑顔でそう言った。


 ◆◇◆◇◆◇


 さて、バスケコートへ来てみると……。


「やってるなぁ」

「何か今日は盛り上がってんな?」

「そうですね」


 いつもは、大体が決まった面子でやっているぐらいなんだが、今日はギャラリー含めて結構な人数がいる。

 そのギャラリーの1人に話を聞いてみた。


「あぁ、コート見てみな」


 コートを見ると、見た事の無い女子5人が常連の男達相手とゲーム中のようだ。

 なるほど、女子目当てか。


「あの子達は?」

風華かざはな女子バスケットボール部のレギュラーらしいぞ」

「風華女子ってと、今年のインハイで優勝した東京の女子高か?」

「何でこんな所にいるんだ?」


 良くわからんな。

 話を聞き終えて、ゲームに視線を移すと、常連メンバーの男達を手玉に取り圧倒している。

 なるほど、女子とはいえ全国一だ。

 そのまま、一方的に勝ってしまった。


「宏太。 華のある絵面になりそうだな」

「おう。 だが、俺達3人だぜ?」

「なら3onを申し込むまでだ」


 という事で、早速コートの中に入り、対戦を申し込む。


「次、俺達いいかな? 3人しかいないから3on希望なんだが」

「良いですよー……って、嘘!?」


 俺達の顔を見た瞬間、大きな声を上げたリーダーっぽい子。


「ち、千葉月ノ木のレギュラーの、今井さんと佐々木さんじゃないですか?」


 宏太と顔を見合わせる。

 何にやら有名になってしまったようだ。


「そうだけど……」

「マジー?! 今井さん、佐々木さんと試合出来るとか、来て良かった!」

「ていうか、3人誰が出るのよ!」


 と、何か勝手に盛り上がって、ジャンケンでメンバーを決め始めた。

 少し待っているとメンバーが決まったらしく、負けた子達は悔しそうにコートから出ていくのだった。


「よろしくお願いします!」

「よろしく!」


 元気よく挨拶をして、ゲーム開始。

 全国女子バスケの頂点のお手並み拝見だ。


 ボールを渡し、ディフェンスに回る。

 なるほど、ドリブルも綺麗だし基礎がしっかり出来ている。

 当たり前といえば当たり前か。

 インハイチャンピオンなのだから。


 ダン……


 次の瞬間、素早くステップインしてきたのを見て、反応する。

 しかし、中々のキレのあるフロントチェンジで大きく切り返し、逆を突いてきた。


「すげぇ……」


 あっさりと抜かれてしまった。

 お手並み拝見とか言ってる場合じゃないな。

 本気でやらないとマジで負けるぞ。

 そのままあっさり1本を決められる。


「やるなぁ」

「いえいえ!」

「お前は何簡単に抜かれてんだよ」

「いやいや、実際かなりキレのあるドライブだったぞ?」


 宏太も実際にやられてみればいいのだ。


「とはいえ、このまま負けてられねーな」

「ですね」


 ということで、今度は俺達のオフェンスだ。

 しっかりお返しせねばな。

 ボールを受けて、一気に切り込む。


「なるほど。 ディフェンスもしっかりしてる」


 これを抜くのは中々大変だろうな。

 その辺のプレーヤーならだが。

 俺は得意のキラークロスオーバーを見せる。


「これがっ?!」


 あっさりと抜いて、1本を決める。


「おお……これが今井さんのキラークロスオーバー……」


 どうやら、俺の得意技は知られているようだった。

 なんか、感動してるっぽいぞ。

 その後も、俺達が風華女子の子達を終始圧倒してゲームは終了した。


 ◆◇◆◇◆◇


「ありがとうございました!」

「おう、ありがとう。 しかし、凄い女子もいるんだな。 インハイチャンピオンは伊達じゃないな」

「そんなことは……手も足も出なかったですし」

「いえ、僕達も本気になってしまいましたから」

「だな。 本気じゃないと危なかったぞ。 夕也なんか初っ端あっさり抜かれてたしな」

「だからあれは様子見だったんだよ!」


 俺達は一旦コートを出て、他の奴らにコートを譲り、女子達としばらくバスケ会話を楽しんでいた。

 そんな時である。


「ほらーいたー!」

「うわわ……本当だ。 麻美ちゃんの鼻どうなってるの……」


 と、聞き知った声が聞こえてきた。

 亜美達である。

 どうやら月ノ木バレー部御一行は隣町で遊んでいたようだ。


「んん……?」

「あら?」

「むむぅ?」


 亜美、奈々美、奈央ちゃんが俺達を見て怪訝そうな顔で、俺達と風華女子バスケ部の皆さんを見ている。


「浮気だ!」

「最低ね!」

「春人君まで!」


 3人で俺達の事を罵倒し始めた。

 ちょっと他の女の子と楽しげに話していただけで、浮気呼ばわりされてしまった。


「浮気じゃない。 さっきまで試合してたんだよ」

「ワザと触ったりしてたんでしょぉ!」

「最低ね!」

「春人君まで!」

「あ、あの落ち着いてください。 別に何もされてませんからー」


 と、お相手さん達が止めに入ってくれた。

 亜美達に説明してくれて、一応事なきを得た。

 亜美達が騒いでいた時、紗希ちゃんと遥ちゃんはゲラゲラ笑っていた。


 ◆◇◆◇◆◇


「そっかぁ。 女子バスの全国優勝校なんだねぇ」

「そういう貴女達って、あの月ノ木のバレー部でしょ? インハイ2連覇中の」

「あはは、まあそうですけど」


 女子同士ですぐに仲良くなってしまった。

 こういう交流もまあ、ありだな。

 それにしても、他校の女子と話してるだけでも浮気扱いされてしまうのか……これから気を付けないといけないな。

 というか、どうやって俺らを見つけたんだろうか?

 麻美ちゃんの鼻がどうとか言ってたが、まさか俺達の匂いを嗅ぎ分けたとかじゃないよなぁ?

 だとしたら犬か何かみたいだな……。

 その後、亜美、奈々美、奈央ちゃんが3onで風華女子チームと対戦し、接戦の末に勝利していた。

 女子バスケのインハイチャンピオンに勝つ女子バレー部って何だよ……。

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