第46話 海で遊ぼう

 ☆亜美視点☆


 なんとかいつも通りの私に戻れて、皆も安心してくれた。

 今は色んなことは忘れて、海で遊ぶことを楽しむことにする。


「宏ちゃーん、背中に日焼け止め塗ってー」

「お、俺?! 奈々美とかじゃなくて?」

「うん、宏ちゃん」


 さすがに困った表情を見せている。

 ふふ、普段スケベなクセにいざとなったらヘタレるんだなぁ。

 夕ちゃんと一緒だ。


「いいのか……? その」

「うん、夕ちゃんは希望ちゃんとどっか行っちゃったし」


 今頃どこかでイチャついてるんだろうと思う。

 私は紐をほどいてうつ伏せに寝転ぶ。


「いいよ宏ちゃん……好きにして?」

「お、おう……どうしたんだよ急に」

「んー? どうしたんだろうねぇ」


 宏ちゃんは困惑しながらも、ちゃんとオイルを塗ってくれた。

 まだ、宏ちゃんを奈々ちゃんと取り合うと決めたわけではないけど、前向きには考えてみようと思う。


 そう言えば奈々ちゃんは私が宏ちゃんの所へ行くって予想してたっけ?

 うまく誘導されちゃったなぁ。


「ありがと、宏ちゃん。 ちゅっ」

「へっ?」

「えへへ、私、ミスコンのエントリー行ってくるから応援してね」

「あ、お、お?」


 私はそう言って会場の方へ向かうのだった。

 途中何処かで隠れて見ていたのか、奈々ちゃんと紗希ちゃんが現れて、私をイジリ始める。


「何よ、もうやる気になったの?」

「うーん、まだそこまでは……前向きには考えてみようかと」

「え? え? 何々? 亜美ちゃん、佐々木君の方に鞍替えすんの?」

「あーはは……まだわかんないよぉ」

「いいじゃんいいじゃん! 奈々美から奪っちゃえ」


 紗希ちゃんは他人事なので面白そうだけど、奈々ちゃんからしたらどうなんだろ?


「正直言って、この子が本気で奪いに来たらすぐ持ってかれると思うわ」

「そ、そんなことはないでしょ? 宏ちゃんとは上手くいってるんでしょ?」

「それでもよ」


 奈々ちゃん、自信なさそうだ。

 お似合いに見えるけど……。


 3人で話しながら、途中で夕ちゃんと楽しそうに歩いてる希望ちゃんを連行しつつ、ミスコンのエントリーを済ませて、4人で遊ぶ。

 途中で男の人達に声を掛けられたけど、奈々ちゃんと紗希ちゃんが追っ払ってくれた。

 んー、強い。


「はぅー、私本当に出るの?」

「諦めなさいって!」

「そうだよ」

「良い線行くと思うわよあんた」


 希望ちゃんは顔を真っ赤にして蹲っている。

 可愛い。


 ◆◇◆◇◆◇


  コンテストまで時間が空いたので、夕ちゃんとお話をしようと思い、夕ちゃんを探す。


「あ、夕ちゃん」

「ん?」


 すぐに見つけた。 私の夕ちゃんレーダーも捨てたもんじゃないね。


「ちょっとお話ししたくて」

「話し?」

「うん……ねぇ、もし、私が宏ちゃんとお付き合いしたいと思ってるって言ったら、夕ちゃんどうする?」

「そう思ってるのか?」

「う-ん、前向きに考えてるとこかな」


 夕ちゃんはそれを聞いて少し考え込む。 迷うんだ?


「亜美がそうしたいって言うなら……今の俺には止める資格も無いし良いとは思う」

「本音は?」

「……希望と付き合ってるくせにこういうのは変だが……やめてほしい」


 嬉しいなぁ。

 まだ、夕ちゃんの心の中には私がいるんだ。


「そっか。 でもどうするかは私が決める」

「ああ……」

「ありがと夕ちゃん。 大好きだよ、それじゃあね」


 私はそう言って夕ちゃんと別れた。


 ◆◇◆◇◆◇


 しばらく泳いだりして遊んで、時間を潰し、コンテストの開始を待った。

 時間になったのでコンテスト参加者が集まる、ステージ裏へやってきた。

 

 おお、私たち以外にも6人ほど参加してるみたいだね。 結構お姉さんな感じな人が多いよ?

 私みたいな高校生は子供っぽいかなぁ?


「ふふ、うちらの敵じゃなさそうね……」


 隣で不敵な笑みを浮かべる奈々ちゃん。 それ、漫画とかでは弱いモブキャラが言って、次のページで即退場するやつだよ。

 と、言っても、確かに奈々ちゃんなら周りのお姉さんたちにも負けてないのは確かだ。


「やはり、私達4人の勝負ね? 誰が優勝するかしら」


 紗希ちゃんも何か自信満々だ!? 確かに、紗希ちゃんも大人っぽいし、ナイスバディーだし優勝狙えるかも。


「はぅーはぅぅ」


 この子はなんだかなぁ。 まあ、元々人見知りな子だし、奥手だし人前に出るのも苦手な子だし……。

 あれ? 無理矢理出場させたの可哀想だったかな?!


「希望ちゃん、だいじょぶ? 棄権する?」

「ががが、頑張るぅ」


 凄い緊張してるよ! こんなのでアピールできるの?

 うーん、そうだ! アピールタイムは2人でやらせてもらおうか……。


「えーと、スタッフさんは……」


 私はスタッフさんに声を掛けて、希望ちゃんと一緒にアピールタイムを参加させてもらえるように交渉した。

 他にも、そういうお客さんがいるようなので、快くOKが貰えた。


 それを希望ちゃんに伝えると、心なしか安心したようだった。


「ありがと、亜美ちゃん……あの、そう言えば、奈々ちゃん達から聞いたんだけど……」

「うん? 宏ちゃんの事?」

「うん、本当なの? 夕也くんの事はもういいの?」

「まだ、決めたわけじゃないよ? でも、夕ちゃんの事は忘れないといけないぁ、とは思ってる」

「そんなー、夕也くんは亜美ちゃんの事、ずっと好きだって、忘れないって言ってるのに?」

「それは……うーん」


 夕ちゃん、やめてほしいって言ってたもんねぇ。

 でも、それじゃあ私は一生恋人も作れないじゃん?


「夕ちゃんには、私からちゃんと言うよ。 もう私には縛られないで、希望ちゃんだけ大事にして上げてって」

「亜美ちゃん……わかった」

「それを聞いてどうするかは、夕ちゃん次第だけど」

「うん」


 と話していると、コンテストの方が始まった。


 私と希望ちゃんはエントリー番号⑨⑩で、出番は最後になっている。

 奈々ちゃんが⑦、紗希ちゃんが⑧.


 出番はまでは舞台裏で待機することに。

 一応、裏ではモニターでステージの上の様子が確認できるようになっている。

 

 そうこうしていると、ようやく我々のトップバッター、奈々ちゃんがステージに上がる番がきた。


「んじゃま、ビーチの男どもを骨抜きにしてくるわ」


 相変わらず自信満々な様子でステージへ向かう。

 

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