第45話 親友
☆亜美視点☆
私達一行は、お昼ご飯を食べて少しだけ休憩し、海水浴場へ向かって歩いている。
その道中で、奈々ちゃんに話しかけられた。
「亜美、ちょっと話しましょ?」
「ん? 話?」
何だろ? 結構真面目な顔してるし、大事なお話しなんだろうか?
「あんた、結構無理してるでしょ?」
「……」
相変わらず的確に、人の心の急所を突いてくる。
本当、奈々ちゃんに隠し事は出来ないなぁ。
「私は、あんたの味方だって、困ったら相談しなさいって言ったじゃない。 どうして1人で抱えるのよ」
「だって、自業自得だし……」
バカな私が招いた、自業自得な結末。
いつだって幸せになるチャンスがあったのに、そのフラグを全てなぎ倒してきた。
苦しんで当たり前。 辛い思いは受け入れる。 誰かに頼っちゃダメだ。 自分で何とかするんだ。
「私は、あんたが辛そうな顔してるのを見たくないのよ。 私だけじゃない、皆そうだと思う」
「そんな顔に出てる?」
いつも通りで居るつもりなんだけど。
「少なくとも、私達4人は気付いてるわよ? あと紗希も心配してたし、多分」
夕ちゃんと希望ちゃんにまで……。
一番心配させちゃダメな人達だよ。
何やってるんだろ私。
「ほんと、何やっても完璧な癖に、色恋だけはダメねー」
「うぅっ」
「ねぇ? 辛いなら私を頼ってよ? 親友でしょ?」
「奈々ちゃん……」
やっぱり私はバカなんだ。
親友にまでこんな心配掛けて。 きっと宏ちゃんも心配してるんだよね。
いつも通りでいてくれてるけど。
「愚痴とかなら聞くし、ストレス発散したいなら、一緒にどっか遊びにいきましょうよ。 支えが欲しいなら、私でも宏太でも良いから頼りなさい」
「うん……」
スッと体の力が抜けた気がした。
肩肘張って無理していた証拠だ。
「無理に夕也を忘れようとしなくても、良いんじゃない?」
「でも……好きで居続けるのも苦しくて」
「そう……じゃあ、いっそ彼氏作る? 今日あたりナンパされまくるだろうし、1人や2人くらい気に入るのいるかもよ?」
夕ちゃんや宏ちゃん以外の男の子と付き合うなんて事、考えられない。
「ちょっと無理かなぁ」
「そうよね」
一緒になって悩んでくれる親友。
私は恵まれてる。
「もし、夕ちゃん以外で選ぶなら、宏ちゃんだけかな」
「いいじゃん。 それで行きなさいよ」
「ダ、ダメだよ!?」
宏ちゃんは奈々ちゃんの彼氏さん。 その宏ちゃんを横取りするなんて……。 親友にあるまじき行為だよ。
「何がダメなのよ? 男子の取り合いなんて、そこら辺の女子が皆やってるわよ?」
「でも、私と奈々ちゃんは……」
「そんなんだから、今辛い思いしてんのよ」
「っ?!」
あいたたたた……。
的確過ぎるよ奈々ちゃん。
「何回も言ったわよね? 私には……」
「遠慮しないで、だよね」
「そうそう。 良い顔になってきたわね? 宏太の事、本気になってもいいわよ?」
宏ちゃん……GWに一度告白されたっけ。
真剣な表情で私と一緒に歩いて行きたいって言ってくれた。
あの時の私は、夕ちゃんに惹かれてて、宏ちゃんには悪いけどお断りしてしまった。
今でも夕ちゃんに惹かれてるのは変わらない。
バスの中で、そんな感情は持ってないなんて言ったけど、そんなのは嘘。
今でも愛してる。
でも、そんな気持ちとは、さよならしないといけない。
きっと、そうなったら私は1人で立っていられなくなるだろう。
でも、私には奈々ちゃん、宏ちゃんがいる。
宏ちゃんは、フッた私を支えてくれるって言ってくれた。
宏ちゃんなら、全部忘れさせてくれるかな?
「少し、真剣に考えてみるよ。 奈々ちゃんの
それを聞いた奈々ちゃんは満足そうな顔をして言った。
「いつでも相手になるわよ。 でも、早くしないと宏太と私、正式に付き合うことになっちゃうわよ?」
「焦らせないでよぅ!」
「あははは。 ほら、せっかくなんだから楽しみましょう」
「うんっ」
宏ちゃんの事、考えてみよう。
夕也ちゃんへの「愛してる」と違ってまだ「好き」な段階ではあるけど……。
◆◇◆◇◆◇
ビーチに着いて、更衣室で水着に着替える。
GWに奈央ちゃんから貰ったやつだ。
紗希ちゃん、遥ちゃん、奈央ちゃんも同じみたい。
新しい水着なのは、希望ちゃんと奈々ちゃんだけだ。
「嘘っ!? 希望、それは攻めたわね?!」
「はぅあ!?」
「うわぁ、肌色率高いわね」
希望ちゃんの勝負水着を見て奈々ちゃんと奈央ちゃんがマジマジと見つめる。
「胸なんか半分ぐらい見えてないそれ?」
「亜美ちゃんがOKって」
「夕ちゃんに喜んで欲しいって言ってたからだよ」
「あー、それなら喜ぶわ」
水色を基調としたマイクロビキニ。
無駄な装飾無く、体で勝負する水着だ。
紗希ちゃんが言うように、胸は大事な部分とその周りを三角形の布で覆っているに過ぎない。
下も似たような物で、前と後ろを三角形の面積の小さい布で隠しており、それを細い紐で留めているだけだ。
今思えば、あの日はイライラしていて、八つ当たり的にこの水着にOKを出してしまったような気がする。
私は心の中で希望ちゃんに謝罪した。
ビーチに出ると、夕ちゃんと宏ちゃんが場所取りをしてくれていた。
「おー来た来た」
「お待たせー」
美女軍団でゾロゾロと歩いていると、周りの男の人達が揃いも揃って振り向いてくる。
うんうん、皆美女だもんね。
「皆、春に着てたのと同じ?」
「新しく買おうか迷ったけど、これ気に入ってるし」
と、紗希ちゃん。
可愛いワンピース型の水着だ。
「まあ、皆の水着姿が見れれば俺は……」
「あんたは欲望に忠実よね」
宏ちゃんの変態発言に奈々ちゃんが呆れている。
「ね、夕ちゃん、宏ちゃん。 どうかな? って、春にも見たよね」
クルッと回って2人に水着を見せてあげる。
「可愛い」
夕ちゃんの語彙力にはがっかりだよ!
宏ちゃんを見習って欲しいよ!
「おぉ……女神だ! 白いフリフリビキニを着た女神がおられる! 太ももにスリスリしたい」
うん、これは行き過ぎ。
太ももスリスリはもうただの変態だよ。
「亜美、太ももスリスリさせてあげたら?」
意地悪な笑みを浮かべる奈々ちゃん。
早速イジリ出してきた。
私はまだ、宏ちゃんを奪い合うとは言ってないのに。
「させてあげないよ!」
「ガーン!」
うわわわ、何かショック受けてる!
本気でスリスリしたかったのかな?
んー、まあ放っておこう。
「ほら、希望ちゃん。 夕ちゃんに見てもらわなきゃ」
私の後ろでタオルに身を包んで小さくなっている希望ちゃんを、無理矢理前に来させる。
「ま、待って! 心の準備が!」
「はい、せーの!」
私と奈々ちゃんは構わず希望ちゃんが巻いていたタオルを剥ぎ取った。
「はぅぅ!」
「ぶっ!!」
希望ちゃんの水着を見た瞬間、夕ちゃんが噴きだした。
そうだよね。
夕ちゃんは大慌てでタオルを拾い、希望ちゃんに渡している。
そのまま、希望ちゃんの前で壁になり、他の男の人の目に触れない様にしている。
「こんなもん、他の男に見せられるか!」
「今井、独占欲強いねぇ君」
「ほっとけ! この子は俺の彼女だ! 俺だけが見て良いんだ!」
遥ちゃんにイジられてマジレスしちゃってる。
「夕ちゃん、それはちょっと行き過ぎだよ」
「そ、そうか……?」
「うんうん。 それね、希望ちゃんが30分以上悩んで選んだ水着なんだよ? 頑張ったよね」
「亜美ちゃんに騙されたんだもん!」
「騙してないもん! 夕ちゃん喜んでるじゃない」
夕ちゃん、凄くいやらしい顔してるし。
「はぅぅ…」
「あはは、可愛いなぁもう」
私は希望ちゃんい後ろから抱きついてスリスリする。
うーん、スベスベだぁ。
「ひゃうん、あ、亜美ちゃん?!」
「私、もう大丈夫だからね」
「え……?」
「希望ちゃん、夕ちゃん、この間はごめんね」
「亜美?」
私はここ数日の態度を含めてすべて謝罪した。
心配をかけたことも、ひどいことを言ったことも。
これからは、また夕ちゃんの家に行くってことも伝えた。
それと……。
「夕ちゃんの事、まだ、ちゃんと好きだよ」
今の私の気持ちも……。
夕ちゃんは少し困惑したような表情をしたけど、すぐに優しく微笑んで「そうか」と返してくれた。
夕ちゃんへの想いはいつかは断ち切らなければいけない。
でも、慌てなくてもいいよね。
宏ちゃんの事を考えてからでも遅くは無い──。
周りの皆もやっぱり気付いてたみたいで、その光景を見て一様に微笑んでいた。
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