第8話 旅行1
☆亜美視点☆
「亜美ちゃん!」
奈央ちゃんがボールを高くトスする。
レフトに走った遥ちゃんに釣られて、相手チームのブロッカーが2枚剥がれているおかげで、ライトのこっちにはブロックが1枚になっている。
さすが奈央ちゃん、よく見てる。
セッターは、相手のブロックを困らせるのが楽しいって前言ってたっけ。
私は高くジャンプしてブロックの上からスパイクを叩きこんだ。
◆◇◆◇◆◇
「お疲れ様でしたー!」
4月末の土日である昨日今日は、女子バレーインターハイ地区予選だ。
一日目の昨日は、3校1グループに分かれてのリーグ戦。
昨日は先輩たちが頑張ったおかげで2連勝で、今日の決勝トーナメントまで上がってこれた。
今日も、初戦は先輩達が勝ってくれたけど準決勝、決勝は地区の強豪相手ということもあって、私達1年メンバーがスタメンで出ることになった。
それで、今、決勝をストレート勝ちしたところです。
「やっぱり貴女達に頼んでよかったわ! 先輩としては情けないけど……これで6月頭の県大に駒が進められるのね!」
キャプテン歓喜。
「しかし、貴女達、本当に1年生なの……?」
うう、1年生です先輩。
◆◇◆◇◆◇
一旦学校に戻ってミーティングを終えてから解散となった。
あと2日で5月連休、ゴールデンウィークに入る。
この連休では、前から奈央ちゃんに誘われてた2箔3日の旅行へ行くことになっている。
夕ちゃんと宏ちゃんも入れて8人の大人数ではあるけど、奈央ちゃんの家の別荘(の1つらしいけど)
は、相当広いらしいのでノープロブレムらしい。
帰り道を希望ちゃん、奈々ちゃんの3人で歩いていると急にスマホが鳴り出した。
「んー? 誰?」
「弥生ちゃん」
「弥生? 地区大会ぐらいでわざわざ連絡してくるのあの子?」
「この間、地区大会なんだよって教えたからかなぁ。 もしもし、弥生ちゃん久しぶり~。 うん、大丈夫、地区大会ぐらいで躓かないよ~。 次は6月に県大会だよ。 うんうん、インターハイで会おうね。 ばいばいー」
結果だけ気になったらしい。 相変わらずバレー一筋というかなんというか。
「あんた達、ちょっとタイプ違うのに仲良いわよね? 見た目は良く似てるけど」
「それ言ったら、私と奈々ちゃんもだよ?」
「うちらは産まれた時から一緒だからわかるけどさぁ」
まあ、それもそうだ。
「向こうは友達ってより、ライバルの動向が気になるって感じなのかも?」
電話でも、バレーボール以外の話ってあんまりしないしなぁ。
大会中は一緒に出掛けたりもしたけど、もうちょっと仲良くなりたいかも。
「まあ、そんなことより、もうちょっとで旅行よ旅行」
「近くに温泉湧いてたり、地熱を利用した温水プールがあるんだっけ? 凄いよねぇ」
と、希望ちゃん。
奈央ちゃんの家ってどれくらいお金持ちなんだろう?
普段から普通に接してるけどあんまり気にしたことなかったなぁ。
「水着とか去年のしかないんだけど……」
「学校指定の水着でいいんじゃない?」
「色気がないじゃない!」
どうせ、夕ちゃんと宏ちゃんしか男の子はいないのに……と言いかけたがやっぱりやめた。
去年のかぁ。 入るかなぁ?
◆◇◆◇◆◇
──清水家──
私は家に帰ってきて旅行の準備を始めた。
「あったあった、去年の夏に買った水着~」
一人で何やってるんだろう私……。
早速試着してみた。
「うわ、胸きっつい。 ぱつんぱつんだよぉ」
胸大きくなったからなぁ
これはさすがに着られないなぁ。
諦めて学校指定の水着を鞄に入れるのだった。
希望ちゃんは準備してるのかな?
気になったので、希望ちゃんの部屋へ様子を見に行くことに。
ノックをして声を掛ける。
「どうぞー」と言われたので部屋に入ると、そこには半分水着を着ていた希望ちゃんがいた。
「あはは、入るか気になっちゃって」
「だよねぇ。 私も着てみたけど胸がぱつんぱつんで苦しかったよ」
「むぅ、そんなに成長したの亜美ちゃん?」
私の胸を凝視して言う希望ちゃん。
「そうみたい」
希望ちゃんも着終えた。
「やっぱりちょっと苦しいかも。 諦めよっかなぁ」
「私は諦めたよ」
「だよねぇ」
ちょっと残念そうな希望ちゃんだった。
「どうせなら可愛い水着見てもらいたいよねぇ、夕ちゃんには」
希望ちゃんは顔を赤くして小さく頷く。
やっぱり可愛いなー。
「あ、そろそろ夕也くんの家に行ったほうがいいね」
時計を見ると17時過ぎ。
たしかに、そろそろ夕ちゃんの夕飯を作りに行ってあげないとダメだ。
「じゃ、準備の続きは帰ってきてからにしよっか?」
「そうしよ」
旅行の準備もそこそこにして、私達は夕ちゃんの家に向かうのだった。
◆◇◆◇◆◇
旅行出発当日。
私は、誕生日に貰ったワンピースとネックレスを身に付けて、夕ちゃんを待っている。
隣では、希望ちゃんが手櫛で髪を整えている。
しばらくすると、夕ちゃんが家から出てきた。
「悪い悪い、遅くなった」
「3分遅刻だよ、夕ちゃん」
「行こ。 奈々美ちゃん達は先に駅行ったって」
「んじゃ急ぐか」
駅から電車に乗って、途中で乗り換えを挟むらしい。
目的地に着いたら、向こうに前乗りしているらしい、奈央ちゃんの家の運転手さんが、お迎えに来ているらしい。
リムジンかな?
急ぎ足で歩いて駅に到着した。
「来た来た」
「3人の切符買っておいたわよ」
「ごめーん、ありがとう」
奈々ちゃんから切符を受け取る。
揃ったのを確認して、奈央ちゃん先導で、構内へ移動した。
電車内では奈央ちゃんから、現地について説明を受けている。
「まず、別荘地だけど、他の人達も居るかも知れないから騒がないように」
なるほど、奈央ちゃんとこの別荘だけでは無いのね。
「次に、お風呂だけど、少し歩いたところに温泉があるわ。 私の家が経営してるから、私の名前を出せばいつでも自由に入れるわよ」
「それはいいわね。 でも、他の客いるでしょ?」
奈々ちゃんが質問する。
経営してるってことは商売してるってことだもんね。
「ふっふっふ」
何か不敵な笑いを浮かべる奈央ちゃん。
「プライベート露天があるんだなぁこれが」
「おおー……なんかかっこいい」
「さすが奈央!」
皆から感嘆の声が上がる。
素直にすごいと思う。
「家族で行く時に使うのよ。 今回は、私の友人達を連れてくって言ってあるから、準備してくれてるはずよ」
「神様〜! 奈央様〜!」
紗希ちゃんと遥ちゃんが、手を合わせて拝んでいる。
奈央ちゃんも、踏ん反り返って小さな胸を目一杯張りながら「崇めるが良いわ」とか言ってる。
あれ? 他の乗客に迷惑かけてないかなこれ?
「奈央せんせー、プールもプライベートですか?!」
「むぉーちろん! 朝も昼も夜も使い放題よ」
うわー、至れり尽くせりだなぁ。
いやはや、凄い人と友達になってしまったものだ。
「ところで、女子の皆さん水着に困っているのではありませんかー?」
「うんうん、そうなんだよねー」
希望ちゃんが頷きながら言う。
「ふふふのふふーん」
「変な笑い方すな」
遥ちゃんにツッコまれている。
「で、水着がどうしたのよ?」
「なんとですね、当家のグループが今年出す予定の新作水着を、皆に一足先に試してもらおうと思い、用意してあるのよ!」
「マジ!? ラッキー!」
「奈央ちゃん、ありがとう!」
「へぇー、どんなのか楽しみだね」
奈央ちゃんに称賛の嵐だ。
奈央ちゃんの家、手広くなんでもやってるんだなぁ。
水着まで作ってるんだ。
「しかもっ! 紗希の神の手による測定結果を元に、皆のサイズに合わせて、それぞれに似合うデザインに仕上げてありますわよ! おーほほほ!」
褒めちぎられて気分が良いからなのか、奈央ちゃんのテンションがなんか振り切って変なことになっているようだった。
ていうか、紗希ちゃんの神の手って何? なんかの必殺技なのかな?
「なるほど、私に皆のスリーサイズ聞いてきたのはそういうわけかぁ」
と、紗希ちゃんが何か納得してる。
んん? 紗希ちゃんが皆のスリーサイズ?
「どういうことよ?」
と、私の疑問を投げかけてくれる奈々ちゃん。
「私ね、触ればその人のスリーサイズが大体わかるのよねー。 奈々美は上から88・61・89ね」
奈々ちゃんは顔を青くして「え、嘘でしょ? こいつ怖い……」と震えている。
前、一緒に測り合いっこした時の数値覚えてるけど、確かに合ってる。
こ、怖すぎるよ紗希ちゃん。
「あ、亜美ちゃんのスリーサイズは?!」
と、宏ちゃんが、目を輝かせて聞いている。
「あー! 何でそんなこと聞くのよ宏ちゃん!? 最低ー!」
私は宏ちゃんを罵倒した。
何としても阻止しなければならない!
私は紗希ちゃんに鋭い視線を向ける
「ひぃっ?!」
「さ、紗希ちゃん、ダメだからね? 教えたらそれはもう恐ろしい目に合わせるからね?」
「ガクガクブルブル」
「神崎、1万円でどうだ!」
「だめだからねっ!!」
「よし、俺も1万円出そう」
「え? ゆ、夕ちゃんまで?!」
ここで、夕ちゃんが援護射撃に回るとは、予想していなかった。
夕ちゃんは味方だと思ってたのにぃ。
「87・58・87ってとこね」
紗希ちゃんは2万円で買収されてしまった。
「うおー!! 87!?」
「うぅっ……」
全部合ってるし!?
どんな感覚してるの紗希ちゃんの神の手。
恐るべしだよ!
あー、夕ちゃんがスマホに何かメモしてるし!
何の役に立つのよ、私のスリーサイズが!
「87もあったのか、ふむふむ あれが87cmの感触……」
私の誕生日会で触った時のことを思い出してるんだぁ!?
ひどいひどいよ。
「夕ちゃん、宏ちゃん、お願いだから忘れて? ね?」
「いやー、聞いてしまったものはなぁ」
宏ちゃんは忘れるつもりはないようだ。 口笛なんか吹いて素知らぬ顔をしている。
「うー……」
「良いじゃん別に。 減るもんじゃないし」
と、紗希ちゃんは言うけど、これは減る減らないの問題じゃないよ。
「ううう……ぐずっ ふえぇ……」
「それぐらいで泣くなってー」
遥ちゃんに肩をポンポンと叩かれる。
「うぅ……」
「あー、分かったから! 忘れるから、な? 泣かないでくれ亜美」
夕ちゃんが、優しく頭を撫でてくれる。
さっきスマホにメモした物も目の前で消してくれた。
「夕ちゃん……ありがと」
「お前が泣くとこは、見たくないだけだから。その悪ノリして悪かったな、ごめん」
やっぱり意地悪しても、最後にはちゃんと優しくしてくれるなぁ夕ちゃん。
だから好き。
「宏ちゃんは?」
キッと宏ちゃんの方を睨む。
「あ、あれ?」
「あー、大丈夫よ。 もう忘れさせたから」
何だか知らない間に頭を押さえている宏ちゃん。
多分だけど、奈々ちゃんのチョップが入ったんだろうなぁ、ていうのはすぐに分かった。
大事な記憶まで消えてなきゃいいけど、自業自得だよね。
奈々ちゃんに感謝。
電車を乗り継いで10時過ぎには目的の駅に到着した。
電車を降りて駅を出ると、やたらと長い、不釣り合いな車が1台止まっている。
わかりやすいなぁ。
「奈央お嬢様、お待ちしておりました」
深々と頭を下げる運転手さん。
髭を綺麗に整えたナイスミドルなおじさんだ。
「ご苦労様です。 わざわざ前乗りさせてごめんなさいね」
「いえ、とんでもございません」
おお、凄い。
奈央ちゃん、本当にお嬢様なんだ。
皆も同じことを思ったらしく、奈央ちゃんを見て目をパチパチさせている。
「こちら、私の学友の方々です、粗相の無いようにお願いね」
「かしこまりました、お嬢様。 さぁ皆様、お車の方へ」
私達は促されるまま、乗車した。
リムジンだ。 初めて乗るよ! 当たり前だけど!
「奈央、あんた本物のお嬢様だったのね」
と、車の中で奈々ちゃんが言う。
普段、学校で見せるお嬢モードよりお嬢様してたし、皆も驚いていた。
「当然です。 これでもこの国でも有数の名家、西條家の長女ですから」
「初めて奈央の家に呼ばれた時はビビったもんよ」
紗希ちゃんは、奈央ちゃんの家にも行った事あるんだ。
きっと凄い家なんだろうなぁ。
門から玄関まで5分ぐらい掛かったりして。
◆◇◆◇◆◇
そうこう話しながら車に揺られること15分程で、目的地の奈央ちゃんの別荘に到着した。
「うわぁ、お、大きい……」
何これ? お城か何かかな?
多分、私の家の10倍くらいあるのでは?
「さ、皆入って」
奈央ちゃんが扉を開けて入っていくので、私達もそれに続いた。
初めに通されたのは、だだっ広い部屋……リビングかな?
「一応、1人1部屋あるから好きな部屋の鍵持って行っていいよん。 間取りはどこも一緒だけど、窓から見える景色が微妙に違うぐらいね」
「え? 1人1部屋ってマジ?」
宏ちゃんが唖然とした顔で呟いた。
わかるよ、私も同じ事思ったし。
おトイレやシャワールームの場所など一通り説明を受けてから一旦自由行動となった。
私は適当なカギを掴んで部屋番号を確認。
3って書いてある。
階段を上がり2階へ行くと左側の2番目の部屋が3だった。
私は部屋に入って部屋を見渡す。
大きなテレビに、高そうな絨毯。
高級そうなベッドに、綺麗な装飾が施されたシャンデリア。
窓からは新緑の映える小高い山が見えている、秋に来たら綺麗な紅葉が見られそうだ。
私の家とは、まるで別世界だった。
「凄い、ベッドふかふか……」
ベッドに寝転がってみる、凄く柔らかかった。
どれくらい跳ねるか試してみたら、思いのほか跳ねた。
あー、人間をダメにするベッドだこれ。
少し横になりながらこの後何しようか考えを巡らせる。
時間はまだ11時前。 お昼まではまだ時間がありそうだ。
「自由行動かぁ。 んー、ちょっと散歩でもしようかな 散歩コースみたいなのあったし」
見知らぬ土地を散歩するのはワクワクする。
私はベッドから起き上がり部屋を出た。
すると、隣の部屋から夕ちゃんが出てきた。
あ、隣の部屋なんだ。
あとでお邪魔しよ。
「ねね、夕ちゃん、一緒に散歩行かない?」
せっかくだし散歩に誘ってみる。
断られたら1人で行こ。
「あぁ、俺もそのつもりだったし、一緒に歩くか」
「うんっ」
外に出る前に、リビングで談笑していた奈々ちゃんと奈央ちゃんに、夕ちゃんと散歩に行く旨を伝えてから外へ出た。
「しかし、はたから見たら付き合ってるようにしか見えないんだけどね、あの2人。 なんで付き合わないのあれ?」
「色々と複雑なのよ、特に亜美の方がね」
「ふぅん……」
◆◇◆◇◆◇
外を出て、ちょっと歩いたところに小さな川が流れていた。
近くの山から流れているのだろう。
「夕ちゃん、川があるよ」
「そうだな、川だな」
流れも穏やかだし、綺麗な水だし。
靴を脱いで、ちょっと足でも浸けようかな?
思い立ったがなんとやら、私は裸足になってワンピースの裾を持ち上げて川に片足を浸けてみる。
「冷たっ!」
「あーん? 大袈裟なやつだな」
「むぅ」
私は素早く夕ちゃんの手を引いて、川に無理矢理引きずり込んだ。
「うおっ、冷たっ!」
「でしょ?」
「てか、靴が!?」
「あ、ごめん! ぷっ……あははは」
「笑い事じゃないぞ。 うわ、気持ち悪……」
夕ちゃんと、こうやってジャレ合うのは楽しい。
別に恋人じゃなくたって、こういう何気なく楽しい時間が過ごせるんなら、恋人に拘らなくてもいいじゃないかと思える。
夕ちゃんは、どう思ってるんだろう? 楽しいと思ってくれてるだろうか?
靴がびしょ濡れになってしまった夕ちゃんは怒るでもなく川から足を上げた。
私も夕ちゃんに連れて川から出る。
「そういや、そのワンピース似合ってるな。 プレゼントされてから、着るの初めてじゃないか?」
「そうだよ。 この旅行が前々から決まってたから、その時に初めて着ようって決めてたの。 ほら、ネックレスもしてるよ!」
夕ちゃんに貰ったネックレスを見せる。
私のお気に入りだ。
学校には着けて行けないけど、普段のお出かけとかでは必ず着けていくようにしている。
夕ちゃんは優しい笑顔で「ワンピースと合ってて可愛いよ」って言ってくれた。
「そういや、希望ちゃんが、そのワンピースに白い麦わら帽子被せたらもっと良くなるって言ってたな」
「あー、良くいるね。 白ワンピと麦わら帽子のセット」
「どっかで売ってたら買ってやろうか?」
「え、いいよそんなの。 欲しかったら自分で買うよ」
さすがにそこまで色んなものを買わせるのは忍びない。
このネックレスだって高かっただろうし、割り勘とはいえこのワンピースだって高かった。
その上に帽子もなんて、それは甘え過ぎだ。
「そっか。 了解」
「気持ちだけ受け取っておくよ」
私達は、散歩コースとして整備された道を並んで歩く。
途中、すれ違った老夫婦と軽く挨拶をしたりもした。
「さっきのおじいさんとおばあさん、仲良さそうだったね?」
「まぁ、長年連れ添ってる仲だろうしな」
「ねぇ、私達はいつまでこうやって仲良しでいられるかな?」
「どうだろうなぁ」
と、顔を上げて少し考えるような表情をした夕ちゃん。
時折見せる、真剣な表情がかっこよくてドキっとする。
少しすると、私の方に視線を向けて。
「案外、死ぬまで仲良しでやってたりしするかもな」
「それって、もしかしたら結婚とかするかもしれないって事?」
もしそうなったら、どれだけ幸せだろうか?
そしてそれは、私がその気になれば、きっと実現するであろう未来。
「さあな。 そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。 先の事は何もわからないな」
「あはは、そうだよね」
それはそうだけど、今のまま、私が希望ちゃんの幸せを願っている限りは、絶対に有り得ない未来だということはわかる。
実のところ、誕生日のあのキスからずっと悩んでいる……私は一体、どうしたいんだろう?
「そろそろ戻るか? もう昼飯だ」
「あ、うん。 そうだね」
私は、夕ちゃんと、どうなりたいんだろう……?
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