第24話 新しい仲間

「頼もーーーーーーーーーーなのです!」


俺達は三人揃って、宿屋一階の食堂に下りてきて朝食を食べてる時に、そう声を掛けられた。

なんで俺達に声を掛けたのが分かったっかって?、そりゃうちらのテーブルの横まで来て、こんな大きな声だされりゃ嫌でも分かるわけで・・・


「あ、あの・・・どちら様でしょう?」


そこには、なかなか珍しいストレートの黒髪を肩まで垂らし、ブラウンのローブを羽織った丸眼鏡の女の子が立っていた。

俺はキョドりながらも、ごく一般的な質問をしてみた。


「あ、私は魔術師のエリスと言いますの!。今はソロの冒険者ですが、やる気だけは誰にも負けないのです!。よろしくお願いしたいのです!」


「へ?、いきなり何なの、あなたは!?」


「も、もしかして、ジョゼフ様が言ってた魔術師のソロ冒険者って・・・君の事?」


「そ、そうだな、多分それで間違いないだろう・・・な」


エメルダは素っ頓狂な声を出したが、俺とリオノーラは直ぐに分かった。が、思ってもみないキャラだったので、あっけに取られしまったのだ。


「はい!!、ジョゼフ様とはとある事でお知り合いになったんですの!。それから、私によくしてくれるのです!」


「なるほど、それでね~」


「貴方がアルさんでしょうか?。是非、私をパーティに入れて頂きたいのです!。お願いしますの!!」


そういって、エリスはペコリと頭を下げる。


「あ、ああ、俺も魔術師が入ってくれると嬉しいんだが、その前に一度エリスさんの実力を見せてもらいたいんだけど・・・いいかな?。それと、リーダーは俺なんだけど、大丈夫かい?」


「はい!、望むところですの!!。いつでもドンと来いなのです!」


「わ、分かった。じゃ、俺達はこれから街の外にスタンピードの再調査に行くんだけど、付いてくるかい?。でも、危険だよ?」


「行きます!行きます!、私に任せてなのです!!」


そういうエリスは、妙に自信たっぷりに言ってきたので、これはもしかしたら本当に強いのかも・・と思わせた。もしそうだとしたら、これは当たりだな。

すると、エメルダが口を挟んできた。


「それよりも、ちょっと貴女・・・、その『なのです』口調止めてもらえない?。すごく耳に着くんだけど・・・」


いや、俺も確かにちょっと気になったけどさ・・・ちょっと、意地悪い女みたいだぞ、エメルダ。

そう言われたエリスはすまなそうな顔をするも、とんでもないカウンターパンチをぶっこんできたのだ。


「ええ~~~?、そんなに気になりますの?それは、すいませんなのです・・・。ということは、貴女も『にゃん』を付けるの止めたのですの?」


「はぁ!?。あ、あたしゃ元々『にゃん』なんて、付けとらんわーーーーー!。猫人族がみんな『にゃん』を付けると思ったら、大間違いだからねーーーーー!!」


「そ、そうなんですか?。私はてっきり、アルさんに鬱陶しがられて止めたの思ったのです・・・」


「あ、あんた、あたしに喧嘩売ってんのかしら!?」


「ちょ、ちょっと落ち着けって!。場所を考えろって!」


俺はそういうと、二人に周りを見るように促した。

いくら朝とはいえ食堂にはそれなりの人がいるが、みんなこっちを生温い目で見ている。


『なんであんな奴が・・・』、『チッ、朝からこんなとこで見せつけやがって!』、『ハーレムかよ、爆発しろ!』、『ケモミミ、ハァハァ・・・』、『俺はあのエルフっ娘に踏まれたい!』・・・


なんか最後の方は別の意味で怖いが、一様に男性冒険者達からの視線が痛い。

俺はその視線から逃れるように、朝食もそこそこに他の三人を連れて宿屋を後にし、ギルドに向かった。



              ◇



そして俺達は今、街を出て街道を歩いている。

その道中で、俺はエリスに色々聞いてみた。勿論、エリスの魔法の事も聞いた。


この世界では、大まかに魔法使いも魔術師も同じ括りで論ぜられる。

ただ、正確には魔術師はこの世界のことわりに基づいて使う者を言い、魔法使いは理の外の現象を起こす者を言う・・・らしいのだが、俺には良く分からない。


そして、エリスは魔術師と自己紹介したように前者なのだが、俺にとっては自分が使えない魔法や魔術を使える人はみな同じだ・・・。そして彼女の得意な魔術は、水と土属性の2種類らしい。


そして、驚いたのが歳は俺より一つ下ということだ。エメルダもリオノーラも俺より年上なので、ちょっと嬉しい。

そんな話をしていた俺達はようやく、先日襲われた場所近くまで来たが、この前の様なモンスターの気配等は殆ど感じない。


それでも、俺達は警戒を緩めない。エメルダは気配察知を最大限に、リオノーラはいつでも精霊魔法を使える準備をしており、俺も新しい刀を左腰に装備しており、いつでも鯉口を切れる準備をしておく。

唯一、エリスだけはのほほ~んと周りを見物?していたが・・・


「いない・・・・・・ですね」


「うむ、いないな」


「前は、少し手前から気配があったんだけどな・・・。撤退したのか、もしくは駆逐されたのか」


「確かにあたし達よりも強い冒険者達がたくさん討伐に出てますしね~。彼らがスタンピードを阻止したって可能性もありますね」


「そうだな、可能性はある・・・が、それなら何故ギルドはそれを報告してこない?。さっきも一応、ギルドに顔を出して調査に行く旨を話してあるぞ?」


「そ、そうですね。確かに何も言われなかったですよね・・・」


「では、他の原因があるということか?アル」


「多分ね・・・、原因は俺にも良く分からないけどさ」


「どうする?、ここまで来たらダンジョン入り口辺りまで行ってみるのか?」


「そうだな、ちょっと危険な気がするが・・・、取り敢えずもう少し先まで行ってみるか。そこまで行って、もう一度考えよう」


俺達が今後の行動を話していると、エリスが遠慮気味に話しかけてきた。


「あ、あの~~・・・、ちょっと良いです?・・・か?」


「ん?、どうしたの?。トイレ行きたくなったか?。じゃあ、そこら辺の草むらか木の陰でしてきていいから・・・」


「な!!、なんて事言うんですの!?。違います!!。お、女の子にそんなこと言うって、セクハラですの!。変態ですの!!」


と、エリスは顔を赤くして抗議してきた。

だって、ソワソワしてたし・・・てっきりそうかと。


「そ、そうではなくてですね!、だいぶ先の方になりますが魔力の高まりを感じるのです」


と、最後の方は少し真剣な顔をして伝えてきたのが、彼女の話に信憑性を持たせた。

しかし、エメルダにもリオノーラにも感知できないのに、エリスには分かるもんだろうか?。それを二人に聞いてみたら、


「あたしは生物の気配を察知することは出来ますけど、範囲はそれ程広くは無いんです・・・」


「私も精霊の力なら少し遠くでも分かるが、魔術や魔法の魔力というのはどうも・・・な」


そういう事らしい。

と言う事は、エリスには魔力感知能力あるのだろう。確かに彼女は魔力を使って魔術を行うのだから、他の者が使う魔力を感じる事もできるのだろう・・・多分。


「どうする?。俺には良く分からないが、ここまで感じる魔力となると相当大きいんだろう。つまり、それだけの魔力を使う魔術だか魔法を使わないといけない相手が、そこにいるってことじゃないか?。それでも行くか?」


俺は三人を見て、何か言うのを待っていた。

彼女達は考えているようだ。そりゃそうだ、俺が少し脅すような事を言ってしまったからね。


「あたしは・・・・自分では何とも言えないので、リーダーのアルさんにお任せします!」


「私もそれでいい。アルがしたい様にすればいい。私はそれに付き従うだけだ」


二人は俺任せでいいという。まあ多分、そう言うだろうとは思ってたけどね。

さて、エリスはなんて言うか・・・


「あの、私は~見に行ってみたいなぁ~・・・と思うんですが、ダメなのです?」


そう上目遣いで、モジモジしながら言ってくる。

へ~、彼女も俺任せにすると思ったら、ちゃんと自分の意見を言うんだと少し感心してしまった。


「いや・・・、ダメじゃない。というか、俺も行ってみたいと思ってたよ。ここまで来て、危なそうだから引き返すなんて、冒険者じゃないよな」


「良いんじゃないですか?。アルさんがそう思うなら、あたしも付いて行きますよ!」


「勿論、私も行くぞ。よもや、置いていくなんて言うまいな」


「ありがとう、みんな。そして、俺の我儘みたいなもんに付き合わせてしまってスマン・・・。危険を伴うはずだから、ヤバくなったら撤退する。しかし、多分先には上級者の冒険者達が居るはずだ。俺は、彼らの戦いぶりを見てみたいんだ」


「そうですね~~、あたしも勉強になると思いますしね!」


他の二人もほぼ同じ意見だったので、俺は彼女達に感謝してこのまま進むことにした。

もしかしたら、初めての戦闘というものを目にすることが出来るかもしれない。


そんな畏怖にも似た興奮を抑える事が出来ずに、体が震える。

これが武者震いってやつなのか・・・と考えながら、俺達は目的の場所に向かうのだった。

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