第9話 希望

俺達は、依頼であるキノコ採取を再開した。

驚いたのは、リオノーラまで覚束ない手つきでだが、手伝いをしてくれた。


「リオノーラまで・・・すまんな」


「あたりまえだろう、私達はパーティなんだ。手伝うのは当然だろ?」


「そ、そうなんだが・・・」


リオノーラは、薄手のプレートメールを付けているが、動きやすいように必要最低限の部分をプレートで覆い、他は厚手の布の様だ。剣は両手剣だが細身の剣、細剣レイピアというやつだ。盾は持っていない。


その姿は凛々しくとても似合っている。

だが決して、ビキニアーマーでなくて残念・・・とは思っていない。

・・・・・・思ってないってば!。



さすがに三人だと、採取も早くて助かる。

俺達は必要量を採取し、俺達はさっさと依頼達成の報告に戻ることにした。


「リオノーラってさ、見た目俺と変わらないぐらいだけど・・・・・」


「アルさん?、女性に歳を聞くのはどうかと・・・」


「あ、そうか。ごめ 「私は25歳だな。アル達とそう変わらないぞ?」、言っちゃうんだ・・・」


「え~~~?、私達とそんなに変わらないんですね~」


「そういや、エルフって長命種だよね。ビックリするほど見た目は変わらないのな」


「まあ、私はダークエルフだが・・・それもハーフの。私達は大体20歳ぐらいまでは普通の人間と同じぐらいに歳をとるぞ。ただ、それを過ぎると緩やかになっていくな」


「リオノーラはハーフダークエルフなのか~。しかし、俺はてっきり100歳とか200歳とか思ったよ」


「おいおい!、いくら何でもそれは失礼じゃないか!?。それと私達は普通のエルフと違って、ハーフであっても”ダークエルフ”と呼ばれてる」


少し怒った感じでこっちを睨んでくるが、本気で怒ってはいないのは分かった。

口元が笑っているのだ。


俺達は和やかに街に戻る街道を歩いていた。

だが、街が見えてくるとリオノーラは、締まっていた黒いローブを出して被りだした。


「なぁ、なんでそれ被るんだ?」


「そ、それは・・・、お前達に不快な思いをさせるから・・・な」


「俺達はパーティなんだ、そんなの気にするなよ。もしみんなに危害が加えられたら、俺は絶対に許さない!。だから、そんなローブは被らなくていいよ」


「そうよ、気にしないで!。私なんか、耳も尻尾も隠さないわよ?」


「いいのか・・・?。私のせいで白い目で見られるかもしれないんだぞ?」


「「だいじょーーーV!」」


「そ、そうか・・・。では、このまま向かうか」


「それがいい。ただでさえ、リオノーラは綺麗なんだからな」


「バ、バカ!、そんな世辞で喜ぶほど、わ、私は初心ではないぞ!」


「お世辞じゃないさ。ホントに綺麗だよ。な?、エメルダ!」


「くっ・・・、た、確かに綺麗ですが・・・胸はあたしが勝ってます!」


「さっきから何を張り合ってるんだよ・・・まったく」


三人は笑いながら、街に戻ってきた。

早速、冒険者ギルドに行き、先に依頼達成を報告した。そして、既定の報酬を貰った後に、リオノーラのパーティ参加を追加申請した。


その際、シーナさんからハイライトが消えた瞳で見つめられながら、

「アル様・・・二日続けて、”女性”!のメンバーが見つかって、ヨカッタデスネ・・・チャクチャクトハーレムぱーてぃガ・・・」

と、言われたのには参ったが・・・シーナさん、怖い・・・


しかし、ギルド内にはさまざまな冒険者たちがいるが、多くはリオノーラを見ても差別的な目や態度は出していない。むしろ、彼女の美貌に羨望の眼差しを向けている。


俺は、さっきはああ言ったが内心は少し心配していた。勿論、何か言われたり絡まれたら、俺が盾になるつもりではいた。逆に拍子抜けしたぐらいだ。


遠くから、「なんでアイツが、あんな綺麗なエルフといるんだ?」とか「ハーレムかよ」とか、しまいには「爆発しろ!」なんて危険発言も耳に入ってくる。おいおい・・・


でも、中にはリオノーラを不快そうな目で見る者もいたが、さすがに表立って何かしてくることはなかった。

ま、取り敢えず用も済んだしさっさと出るか・・・と二人を連れてギルドを出た。


「エオノーラは、宿はどうしてるの?。ってか、年上だし敬語の方がいいかな」


「気にしないでいい。呼び捨ての方が仲間って感じで、私は好きだ。私もアルって呼んでるしな」


「あの~~~~~アルさんや?。あたしも年上なはずなんですが、敬語使われてない気が・・・」


「あ、そうだった・・・。でも、エメルダは見た目がなぁ~~どうしても年下に見えちゃってさ~」


「え~~?・・・まぁいいですけど~~」


「あ、そんな事よりリオノーラの宿の事だよ。どうしてんの?」


「私は少し離れたとこに取っているが、一日ごとに借りてる」


「それだと宿代高くならない?。複数日契約の方が安く済むぞ」


「それは分かっているが、私の場合は・・・いつ追い出されるか分からないしな」


そういう事か・・・、なるほど。種族の差別意識がネックになっているのか。

それなら、


「俺が借りてる宿に来ないか?。勿論、別部屋にするけど、そこは安いし飯は美味いし人も優しい。どうだろう?」


「良いのか? 私が行っても・・・」


「エメルダも一緒の宿だぞ。部屋は・・・ちょっと訳ありで今は同じ部屋だが・・・」


「なっ!、お前達はそ、そういう関係なのか?」


「いや、違うぞ。要は、金がないから部屋を二つ借りれないだけだ。あんたが考えてる事はしてないからな」


「そうなんです・・・。私的にはされても構わないんですが・・・むしろして欲しいというか・・・」


エメルダは何かブツブツ言っているが(ちゃんと聞こえてる)、敢えて無視してリオノーラに改めて聞き直す。


「まだ早い時間だし、部屋も空いてるだろうから移ってきなよ。近くにいた方が、何かあってもすぐ対応できるし打合せするにしても楽だしな」


俺達は、既に自分達の宿の前についている。


「じゃあ、そうするか・・・。では、私は宿を払ってくる。先に入っててくれ」


「じゃ、あたし達は一階の酒場にいるから、戻ってきたら声掛けてね」


リオノーラは、小走りで去って行った。

俺達は酒場のテーブルに座り、時間も少し早いので軽いつまみと飲み物だけ頼んだ。

エメルダには酒ではなく、ジュースにしてある。また酔って、あんな事されたら・・・。



三十分程して、リオノーラが戻ってきた。意外と荷物は少なめだ。

先に彼女の部屋を取るため、宿屋の受付に行き一部屋あるか確認後、部屋の鍵を貰い彼女に渡した。

荷物を置いて普段着に着替えてきたリオノーラは、テーブルに付き果実酒を頼んだ。


「リオノーラは酒は飲めるの?」


「そうだな、多くは飲めないが好きだぞ。それにそんなに酔わないしな」


「強いんだな。俺もそんなに飲めないし、強い酒は苦手だ」


「いいじゃないか、酒に飲まれる酒乱よりは全然マシさ」


「・・・・・そうだな」


俺はエメルダを見た。

彼女は、私?何のこと?と思ったのか、コテンと首を横に曲げた。

リオノーラの飲み物が届いたので、俺達は新しい仲間を迎えた事を感謝して乾杯をした。


「さて、俺達も三人になって依頼の幅も広がったと思うんだ。明日からは、討伐も含めた依頼をやっていこうと思う。リオノーラ、どうかな?」


「そうだな、良いんじゃないか?。ただ、その前に二人の実力を見てみたいんだが」


「じゃあ、明日はまず俺達の実力をリオノーラに見てもらい、その上でどこまでの依頼がこなせるか考えよう」


「さんせ――――い!」


俺達は、飲みながらも夕食を楽しんだ。

いつもは毎日を生き抜くだけで精いっぱいだったが、今は金銭面では変わらないが気持ちの面では全く変わった自分に驚いた。明日への希望が今の俺にはある!。


これもみんなのお陰だな・・・、エメルダとリオノーラが楽しそうに話をしてるのを見て、しみじみと思ったりしたのだった。

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