第16-2話『ラズベリーケーキ』

 まぁ……赤黒いのがなんともグロテスクなイメージを彷彿とさせるが味は本当にしつこくない美味しさだったし、ラズベリーの果肉が入っている事で食感が楽しめた。女王ともなれば派手なのが好きそうだしな。


「ラズベリーケーキが良かったと思います」

「おお! そうなのか! じゃあこっちを女王様の為に作るとしようか! 気に入るといいなぁ」


 料理人は嬉しそうに鼻歌を歌いながらケーキをしまっていった。


「というか……僕なんでここまできてケーキの試食しなきゃなんないんだ……もう行っていいですか?」

「あぁ! 待ちたまえ! さっきの鏡の話だが……ちょっと思い出した事があってね。 試食してくれたお礼に教えてあげよう」

「ほんとですか?」


 手がかり無しでこの馬鹿でかい城の中を探し回るのはかなり時間が掛かるだろうと思っていたので少しの情報でも欲しかった。


「そういえば女王様の部屋の奥には扉があってねぇ……その部屋が鏡だらけだって噂があるよ」

「女王の部屋の奥か……」

「女王様の部屋に行くにはどちらにせよ謁見室を通らなきゃいけないよ。 ロビーの階段を上がってすぐの大きな扉に入れば女王様がいるはずだよ」

「やっぱり会わなきゃいけないのか……」

「でも挨拶しておかないと首を撥ねられちゃうよ~?」

「そ、それは……じゃあ会っておこうかな」

「うんうん、まぁ頑張りなよ! じゃあね!」


 料理人はまた再び忙しなく動き始めた。有力な情報も手に入ったしもうここには用はないだろう。僕は料理人の邪魔をしないようにそっと部屋を出た。

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