第14-1話『自らの血を使う』

 僕は赤薔薇達を無視し、白薔薇の所へ戻る事にした。


「あら……戻ってきたのね。 私を赤くしてくれる準備は出来たの?」

「ああ」


 僕はナイフを取り出し、自らの指にナイフで切り込みを入れる。僕の指からじわりと紅い血が滲み出しぽたぽたと流れ落ちる。


「血……血だわ……ああ、早くそれを私に……!」

「え……あ、う、うん……」


 僕は白薔薇の根元に血を落としてやろうとした。すると突然僕の身体は動かなくなり身体中に鋭い痛みが走った。


「痛ッ……?! な、なんだ……?!」


 僕の身体には棘のある太い薔薇のつるに囚われていた。つるはぎりぎりと僕の身体を締め付け棘は深く刺さっていく。


「アリス……ありがとう……貴方は私に自身を捧げてくれるのね! 嬉しい!」

「ち、ちが……ッ!」


 突如さっきとは別の痛みが指先に走る。根のようなものが僕の傷口を割り入って侵入していく。こいつ……僕の身体に根を張るつもりか?!


「や……めろ!! やめろよ!! あ゛あ゛あ゛あ゛!! 離せ!!」


 藻掻けば藻掻くほど棘は食い込み痛みは増すばかりだった。それどころか新たに出来た傷口へ薔薇の根を張り、僕の体内を徐々に犯して行く。


「ふふふ……貴方の血、とても美味しい……見て! 私の身体、綺麗な赤に染まっていくわ!」


 白薔薇は僕の血を吸い上げ紅く染まっていく。


「うぅ……」


 思考が定まらない。目の前がぼんやりとしてきた。力が入らない。ああ……僕の身体はきっとさっきの白薔薇のように白いのだろう、と馬鹿らしい事を思った時を境に僕の思考は停止したのだった。


End.3『白に染まる』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る