第10-1話『公爵夫人のお願いをきく』
「もう少しだけなら……いいですよ」
思わずそう答えてしまった。僕は一体何を考えているんだろう。公爵夫人に同情しているのか?それとも……
「本当に?! 嬉しい……! こっちに来て」
公爵夫人に連れられてとある部屋にきた。子供部屋のようだった。
「ここで少しの間待っていてくれるかしら……」
公爵夫人は僕を大きなベッドの上に腰掛けさせると上機嫌で部屋を出ていった。僕は何となく気になって暇潰しに、と部屋を見ることにした。たくさんのおもちゃに本、ありとあらゆる子供の為のものがあった。
「公爵夫人は死んだ子どもの事が忘れられないんだな……ん?」
1冊の本を徐ろに開いてみると本の隙間から何かが落ちた。拾ってみるとそれは金色の小さな鍵だった。
「鍵……? 大きさ的に扉の鍵では無さそうだし……この部屋のどこかに鍵がついたものでもあるのか?」
単純な興味が僕を突き動かした。鍵が使えるところはないかと部屋を片っ端から漁っていく。すると鍵穴のついた引き出しを見つけた。
「ここか……」
試しに鍵穴に鍵を差し込み、回してみるとカチャリと音が鳴った。ここの鍵で合っていたようだ。引き出しをゆっくりと開けていくと中には白い表紙の綺麗なアルバムらしきものがあった。
「アルバム……?」
そっとアルバムを開いて中を見る。
「……嘘……だろッ……?!」
迫り上がる吐き気を必死に抑えながらアルバムのページを捲っていく。手足を切断された人達。中には無残にも人の形を成していないものまであった。隣にはその場にそぐわない公爵夫人が優しく微笑んでいる。
「これって……まさか全部公爵夫人が……?!」
まずい、あの人は狂っている……このままいればいずれ僕も……
部屋の外からコツコツと公爵夫人が戻ってくる音が聞こえてくる。
「やば……?!」
アルバムを引き出しにしまい込み、僕は咄嗟にベッドの下へ潜り込んだ。
「お待たせ……あら? カタル君がいないわ……どこへ行ったのかしら……」
公爵夫人は僕を探して部屋の中をうろうろとしている。頼む……見つからないでくれ……
「……こんなにも愛しているのに……貴方も私から離れるの? 駄目よ……駄目よ……」
公爵夫人はふらふらとおぼつかない足取りで部屋を出ていった。僕はベッドから這い出ると音を出来るだけ立てないように部屋から逃げ出した。
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